16,入学試験(7)
「じゃ、また後で。」
そう言って、オレ達は別々に分かれた。
アンとウェアは地上、オレは空中へ。
アンは足に怪我を負っている。
「まったく、なんで私がこんな危険な役を…まあ”再生”出来るからか…」
アンが1人で愚痴って1人で納得している。
この状態のまま25分が過ぎた。
すると、アンの背後からフォート先生が現れて、アンに攻撃を仕掛ける。それをアンは食らってしまうが、フォート先生の片腕を掴むことに成功。フォート先生の動きを少し鈍らせる。
「っん!!」フォート先生が少し驚いている。
次に、フォート先生の背後にウェアが”瞬間移動”をする。フォート先生のもう片方の腕、つまり腕輪をしている腕を掴もうとするが、それをフォート先生に阻止される。
だが、フォート先生の注意を2人に向けさせることには成功した。
そしてオレが腕輪目掛けて急降下。
フォート先生の腕輪を壊すことに成功した!!
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〜25分前〜
「あ、じゃあこうしよう!
オレ達は別々に行動するのは変わらないけど、それは逃げる意味じゃない。反撃するんだ。」
「どういうこと?」
「まず、アンには悪いが足に怪我を負ってもらう。そして、ウェアとオレは出来るだけ遠くからそのアンを見ていて、フォート先生が来たら全員でフォート先生の腕輪を狙うっていう作戦。」
「それ,フォート先生がオレかお前を狙ったらどうするんだ?」
「その場合は失敗だけど、おそらくそれはないと思うよ。まずオレは空中に避難しているから狙われにくい。そして狙いは地上に残ってるアンかウェア。だがそのどっちを狙うかって言われたらアンだろ?最初にアンに足を怪我してもらうって言ったのはそのためだよ。途中で足を怪我してしまって見捨てられた、と考えることが出来るからね。」
「それはフォート先生の”探知”はおそらく極められていて、相手がどういう状態かが分かるって予想か?」
「予想って言うかほぼ確信。初めにオレ達が襲われた時のことを偶然だと思えないと言うか、狙ってオレ達のところに来たなって思ったからね。オレ達が最初の試験で特に優秀だったから”探知”でオレ達を見つけて,上空へ行って奇襲を仕掛けたんだろう。」
「でもフォート先生がオレ達の”スキル”を知ってたら、アンの”再生”を警戒して、先にオレを狙いにくる場合もあるだろ。」
「これは確信ではないけど、おそらくフォート先生はオレ達の”スキル”を知らない。なぜなら、もしフォート先生がオレ達の”スキル”を知っていたら、真っ先にウェアがやられてると思うんだよね。」
「オレ?」
「だって、ウェアの”瞬間移動”ってかなりこの試験において厄介だろ?そのウェアを真っ先に追わないのは、オレ達の誰が”瞬間移動”持ちか分からないから。」
「…なるほど。オレは納得した。それで良いよ。」
「私もそれで良い。あんたって勉強出来ないくせにこういう時だけ賢いのね。」
「一言余計だ。」
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フォート先生が笑っている。
「はっはっはっは、まさかオレの方が腕輪を壊されるとはな。完敗だ。これにて試験終了だ。」
フォート先生は嬉しそうにそう言った。
オレ達はグロス山の外に出ると、みんなから視線を感じる。それも、受験生だけでなく、教師からもだ。
よく見ると、腕輪が残っているのはオレ達を含めて100人ぐらいだ。
まさかこの人、最初にオレ達を襲うまでの15分、次にオレ達を襲うまでの25分、合計約40分の間に約400人の腕輪を壊していたなんて…しかもよくよく考えると、オレ達の前にこの試験を受けた人もおそらくこの人が相手だよな。ってことはこの人、ずっと動きっぱなしなのか!?
そんな人の腕輪を壊したんだから、そりゃ注目されるのは当然か。ということは「目立って合格大作戦」は大成功という訳だ。
オレ達はまた広場で集まるように言われた。
なので、オレ達は戻ろうとすると、フォート先生に声をかけられた。
「おい、君達。さっきのは素晴らしい連携だったな。まるで君達の父親達のようだった。」
「先生!、父を知ってるのですか?」
オレは、父の軍人時代に興味があった。
「ああ、良く知ってるとも。リガルはかつてのオレの同僚でライバルだった。オレは戦うことが好きなんだが、あいつとの戦い以上に好きなものはないよ。今回の試験は、それを思い出させてくれるようなものだった。ありがとう。」
「はい、こちらこそ試験ありがとうございました。」
「ああ、またゆっくり話そうか。今はオレ忙しいしな。」
「はい。」
という会話を交わしてから、オレ達は広場へ向かった。
「ちょっと、何あんた1人でやりました感出してるのよ。」
「は?別に出してねーだろ。」
「いや、出してたぞ。」
アンとウェアにこんな文句を言われた。
オレは別に出してなかったと思うのだが…
とりあえずは、2次試験もクリアだ。
それにあんなにフォート先生に褒められた。
これならペーパーテストで落ちることも(多分)ないだろう。
次の試験は、おそらく”スキル”のテストだ。
はたしてどんなものなのだろうか。




