14,入学試験(5)
オレ達はグロス山に入った。
オレとアンとウェアは固まって移動することにし、もしやばくなったら、ウェアの”瞬間移動”で逃げる作戦だ。他にも、オレの”サイコキネシス”で空に逃げるとか、作戦は色々と考えたが、とりあえずは様子見ということでこうなった。
「それにしても、”探知”の”スキル”って確かに見つけるのには良い”スキル”だけど、戦闘向きの”スキル”じゃないよな。案外余裕かもよ?」
っと周りにいた受験生が話している。
もちろん、そんなことはないだろう。そもそも、あのフォート先生は”スキル”抜きにしても、オレ達3人よりは強いだろうし、”スキル”というのは極めることによって新たな能力を得るものもある。
例えば、剣を作り出す”スキル”なら、初めの方は極めるほど良く切れる剣になるだけだが、突然、剣に炎や電気を纏えたりする。
つまり、”スキル”は極めることで、本来ある”スキル”の能力から派生する”スキル”もあるということだ。
もちろん、そうじゃないやつもある。
例えば、オレの”サイコキネシス”なんかがそうだ。ただ”サイコキネシス”の威力が強くなるだけで、派生は望めない。
まあ、オレが言いたいことはこうだ。
フォート先生の”スキル”は”探知”という決して戦闘向きではない能力だが、戦闘向きに派生している可能性もある。例えば「相手の弱点を探知出来る」みたいな感じに。
いよいよオレ達がグロス山に入ってから10分の鐘が鳴る。スタート地点からは出来るだけ離れたが、1次試験の成績優秀者を早めに狙う、というのは容易に想像出来る。いつ背後に現れてもおかしくない。
「おい、ウェア。異変を感じたらすぐに離れた場所に”瞬間移動”だぞ。」
「分かってるよ。」
オレ達の周りには、何組かいる。
その何組かをくぐり抜けて、真っ先にオレ達を狙うことは不可能だと思うが、万が一もあり得る。想定はしておいた方が良い。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フォート先生がスタートしてから15分は経っただろうか、周りに変わった様子はない。
すると、オレは上空に何か異変を感じる。どうやらアンとウェアも感じたようだ。ウェアが”瞬間移動”の準備をする。オレとアンは上空を見上げた。
すると、フォート先生がオレ達に向かって上空から急降下していた。
「っっっ!! ウェア!!!」
「分かってる!!!」
オレ達はギリギリで瞬間移動した。ウェアは120m先まで”瞬間移動”出来るようになっている。まあ,視線が通ればだが。
「もっと遠くへ飛べないの?」
フォート先生から逃げながら、アンがウェアに文句を言う。
「悪かったな。葉が邪魔になって遠くまで飛べない。もともと緊急回避のつもりだったろ。」
っと言っているが、フォート先生からは大分離れただろう。オレ達の周りにいた生徒が囮になって、大分時間を稼げた筈だ。そう思って後ろを振り返ると、フォート先生が追いかけてきてた。ある種、恐怖にも近い感情がオレ達を襲った。
「!!。オレが”サイコキネシス”で上空へ回避する。そこからなら視線が通るだろう。」
そう言ってオレ達は、上空へ回避した。そして、すぐさまウェアの”瞬間移動”が発動。120m先へ。
オレ達は何とか、フォート先生から逃げ切った。




