121,満足
アルタミラが降伏したことで、戦争は終わった。
戦争が終わると、アルタミラはクラントに併合され、クラントが大陸を統一することとなった。
だが、併合というのはそんな簡単なことではなくグラムはもちろん、ガイアや新たに超越者になったリエルも大忙しだった。
特にリエルはまだ子供ということもあってかなり大変そうだった。
それから10年の月日が経つと、おめでたいことにアンとリエルが結婚した。
さらに3年後、2人の間に子供が生まれた。
名前は、アンとリエルの名前から1文字ずつとってリンという名前の女の子だ。
2人はとても幸せな生活を送っていた。
だが、そんなにいいことばかりは続かなかった。
その5年後、リエルが急に病気で倒れた。
周りにいた人が急いで手当をしたが、その努力虚しくリエルは助からなかった。
リエルが目覚めると、どこかで見覚えのある景色が広がっていた。何もない空間。暗いような明るいようなそんな感じがする空間。
すると、どこかから天使のような見た目をした少女が歩いてきた。ショートとロングの間ぐらいの真っ白な髪をしている。
その瞬間全てを思い出した。
あの少女はラファエルという名前の天使だ。
オレは前に彼女と会ったことがある。
そう、前世でオレが死んだ時…
なるほど、あの記憶はそういうことだったのか。
今全てが繋がった。
「また…散々な人生だったね…
友達や先生は死んじゃうし、君自身はこれから幸せだって時に死んじゃうし…ごめんなさい…」
ラファエルは申し訳そうにそう言う。
たしかラファエルは下界に対して何もすることが出来ないと言っていた。つまり全くもってラファエルのせいではないのだが、ラファエルは本当に申し訳なさそうにしている。ラファエルの優しい性格が出ている。
だが、そんなに謝る必要はないのだ。
「大丈夫ですよ。オレは十分に満足出来ました。」
ラファエルは驚いた顔を見せる。
たしか心が読めるみたいなことを前に言っていたので、その能力でオレが本心から言っていることが分かったのだろう。
「本当ですよ。確かにあともうちょっと生きたかったのは生きたかったです。ですがそれだけです。
毎日忙しい日々でしたが、素敵な妻がいて、かわいい子供にも恵まれて、オレは十分過ぎるほど幸せでした。
唯一悔いが残るのは、2人を残して逝ってしまったことだけです。」
ラファエルは優しい笑みで、「そう、それはよかった。」と言った。本当に本心から言ってくれていることが伝わってくる。
すると、オレは指先から徐々に消え始めた。
「ああそうか、成仏するんでしたっけ?」
成仏、それはこの世に満足したという証拠。
「ええそうよ、あなたの魂は分解して、他の分解した魂と融合され、新しい魂が作られるの。
それがあなたの生まれ変わりよ。」
「じゃあ、出来るならでいいんですけど、その生まれ変わりの魂に伝言をお願いしてもいいですか?
辛くても辛くても、進み続ければ必ず幸せが訪れる。
今度は自殺みたいなつまらない真似はするなよ、って。」
「ええ、必ず。」
ラファエルはまた優しく微笑んで答えた。
その時、石田隆也、リエル・アイルディアの存在は完全に消えた。そしてまた新しい存在へと変わっていく。
リエルは最後にこう願った。
「来世もまた、良い人生でありますように。」
(完)
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
少しでもおもしろいと思っていただけたなら幸いです。
もしよろしければ、評価とブックマークをお願いします。




