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来世は良い人生でありますように  作者: 三ki
世界統一編
119/121

119,時間稼ぎ

謎の男が城内に侵入したという知らせが、ロイとクリスの元に届いた。

その男がグラムだとはまだ知らないが、城周りの防衛をかなり厚くしたのにも関わらず、それを誰にも見つかることなくすり抜けたという事実だけで、一気に最警戒対象だ。


今は正門を通って、もうすぐ建物の中に入るそうだ。

ひとまずは王を避難させ、城内の兵士を入り口付近に集中させる。それ以外はほとんど王の護衛だ。

ロイは入り口に、クリスは王の護衛についている。


「今このタイミングで刺客か…

まさかクラントの…しかしどうやって、」


入り口付近に到着したロイは1人でそうボヤつく。

もうすぐその男が扉を開けるようだ。

扉の向こうで、こじ開けようとする音が聞こえる。

ちなみに、扉には開いた瞬間爆発するように罠を張っており、さらに爆発した後には銃火器で一斉射撃だ。

これで死なないようなら今度はロイが出る。


ついに扉がこじ開けられた。

予定通り爆弾が爆発する。

そして銃火器で一斉に射撃する。

今のところ男が悲鳴をあげたり、倒れた気配がするようなことはない。ロイは嫌な予感がした。


爆弾や銃火器による煙から人影が現れる。

そしてその人影はゆっくりとこちらに歩いて来ているようだ。兵士が驚きと恐怖の声を上げる。

その中でロイはじっとその人影を見つめていた。


「!! グラム…!?」


爆弾や銃火器によって、フードが焼かれ、その男の顔が現れる。


「おい、今すぐ王の元に伝えに行ってくれ。

敵はグラム。今すぐ逃げてくれと。」


ロイは横にいる兵士にだけ聞こえるようにそう呟く。


「お前はグラムだな?

どうやってここまで来た?」


王が逃げる時間を稼ぐため、まずは会話から入ろうとする。


「王はどこにいる?」


それに対して、こちらのことを完全に無視して話しているグラム。


「何故王の居場所を知りたがる?」


「理由が必要か?」


確かに、今は戦争中なので理由など決まりきっているようなものだが、ロイはそれでも時間を稼ごうとする。


「すまないが話してくれ。」


それに対して、グラムはロイから視線を近くの兵士に移す。

そしてその兵士の頭を掴み、壁に押し付ける。


「おい、王はどこにいる?」


「し、知らない! 俺は知らない!!」


兵士は恐怖のあまり、正直に答えてしまう。

グラムもそれを真実だと確信したようだ。


「お前は知ってるのか?」


グラムの視線が再びロイに移る。


「ああ、知っている。」


さっき兵士に避難させるように伝令を命令したので、正確には今は知らないが、時間を稼ぐためそう答える。

しかしその時、とてつもない殺気がロイを襲った。


「命は助けてやるから王の場所を教えろ。」


思わず逃げてしまいそうな恐怖をロイは感じたが、なんとか堪える。


「それは断る。

だが、条件次第なら教えてやってもいい。」


「なんだ?」


「どうやってここまで来た?

それを教えるのなら教えてやってもいい。」


かなり迷ったが、1番時間を稼げるのはこれだとロイは判断した。


「ガイアに穴を掘らせた。以上だ。

さあ、教えてもらおうか。」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。

それはどういう意味だ?」


「そのままの意味だ。

クラントからこの城までの穴を掘らせ、それを通ってここまで来た。」


ちなみにこのことはクラントでもかなり上層部にしか伝えられていない。ガイアがカミナとの戦いで時間を稼いでいたのもこれを知っていたからだ。


「そうか、そこまでして何故ここに来たんだ?」


ロイは無理矢理にでも時間を稼ごうとする。


「後5秒以内に王の居場所を言わなかったら、殺すぞ。」


ロイは諦めたような表情をして、戦闘の構えをする。

それにグラムも応えたようだ。すぐにロイへ跳躍する。

そして両者が激突した。

わずか数秒の攻防だったが、ロイは何発か致命傷を与えられた。


「今の動き…やはり初めからお前の狙いは時間稼ぎだったか、」


一瞬の攻防でグラムはロイの目的を正確に読み取ったようだ。


「ならばお前が本当に王の居場所を知っているかどうかも怪しいな。

だが残念だったな。王がここから逃げることは出来ない。」


「…何故だ?」


「結界を張っているからだ。この城の周りに。

それは移動系”スキル”をも拒む。

俺が”聖剣”を使っていないことから分からなかったか?」


ロイの目に絶望が浮かぶ。


「それじゃあさよならだ。

最後に言い残すことはあるか?」


その時、ロイには走馬灯のようなものが見えた。

故郷での家族との記憶が今、鮮明に浮かんでいる。


「この国での殺しはこの城内だけにしてくれよ、」


それがロイの最後の言葉だった。


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