117,発見
“操り人形”の超越者リオン・テラゴールはクラントの各地を転々としていた。
まずは首都ツァンバル、そして近くのシーテン、そして今はそのシーテンから少し離れたカトロンという都市だ。
市民を操り、暴動を起こさせ、クラントを混乱させるのがリオンの役目。
この都市ももう大体の市民を支配化に置いたため、もうすぐ離れる予定だ。
そう思い都市から離れようとした瞬間、後ろからカツンという音が聞こえた。
後ろを振り返ると、そこには3人の人間が立っていた。
リエルとアンとクラントの兵士の1人だ。
「お前が犯人だな?」
クラントの兵士がそう言う。
「…なんのことですか?」
そう言いながらリオンは3人に少し近づく。
「動くな! あと1歩でも動けば、反逆とみなし殺す。」
リオンは少し怖気づきながら話を続ける。
「どうしてそちらの2人は話されないのですか?」
「お前なら気づいているはずだ。」
「すいませんが、なんのことやら。」
「お前の”スキル”を警戒している。
人を操る”スキル”を持っているようだな?
それがどんな方法で操るのか分からない以上、会話さえ警戒するのが普通だ。
ちなみにお前が私を少しでも操る、操ろうとすれば、すぐにお前は死ぬことになる。」
兵士は伝え無かったが、実は遠くからスナイパーもすぐにリオンを殺せるように準備している。
ちなみに兵士は密かにリエルの服を引っ張り続けている。
これは、兵士が操られたのをすぐにリエルが知るためだ。
「…どういうことですか? 私が”スキル”で操る?
もしかして誰かと勘違いしていませんか?」
「いいや、お前で間違いない。
そんなに言うなら無実だと証明してくれ。」
「…具体的には何をすれば?」
「この国の人間だとここで証明してくれ。」
「今はちょっと…」
「なら聞くぞ、出身は?」
「…ツァンバルです。」
「そうか、ではツァンバルのどのへんだ?」
「………北の辺りです。」
「出身校は?」
「………」
「答えられないか?」
「………」
「あと3秒待つ。
3、2———」
「…なんで分かったの?」
リオンは聞こえるか聞こえないかぐらいの声で下を向きながら小さくそう呟いた。
「それは認めるということでいいのか?」
「ああそうだよ! なんで分かったんだよ!?」
リオンは自分の未来を悟ったのか、涙を少し浮かべながら開き直ったように大声でそう問う。
「教える義理はないが、冥土の土産に教えてやろう。
お前に操られた人を正気に戻してから、どんなやつに操られたのか聞いてみたんだ。だが、記憶が飛んでいた。
どうやらお前は操った人の記憶を、操る前から少しの間消せるらしいな。
それにより我々の捜査は困難を極めたが、2人お前のことを覚えている人がいた。誰だか分かるか?」
「……知らない。」
「お前をナンパした2人の男だ。」
リオンは「は?」という顔をする。
なぜなら本当に記憶になかったからだ。
「その男達が言うには、ある女に話しかけていたのを最後に記憶が飛んでいるらしい。
どうやら記憶が消える時間より多く話していたようだな。」
そこでなんとなく思い出してきた。
「その男達が覚えていたお前の特徴から探ってみると、ここカトロンでお前を発見したというわけだ。
ちなみにお前の犯行の瞬間も見ていたぞ。」
リオンは自分の未来を悟り恐怖で震えて、若干過呼吸になっている。
「ち、違うの! 私は本当はこんなことしたくなかったんだけど…仕方なく———」
「悪いがそんなことは関係ない。
お前がしたかしてないか、重要なのはそれだけだ。」
リオンの過呼吸はさらに悪化し、目からは大粒の涙が溢れてきた。
すると次の瞬間、兵士が凶変してリエルの首を掴む、それと同時にリオンが後ろを向いて走り出した。
そしてその直後、リオンは息絶えた。




