11,入学試験(2)
試験を終えると、オレはアンとウェアの元に戻った。
ただ、今はウェアが試験中らしくアンしかいない。
「おつかれ。会場がちょっとザワついてたよ。」
なるほど、だからさっきから視線を感じるわけか。
作戦通りだ!
「オレも目立ちたくはないけど、合格のためには仕方ないからな…そう言えばウェアは?」
オレとウェアは試験の説明を聞いた時に、出来るだけ目立つようにして、教師達の印象に良い意味で残ることが出来れば、ペーパーテストの点数が低くても大丈夫、という結論に達し、「目立って合格大作戦」を決行した。
「ウェアの方はもうすぐ試験開始。ほら見てあそこ。」
そう言われた先を見てみると、ウェアと対戦相手の子がリングの上にいた。今は審判の人から説明を聞いているっぽい。ウェアはどういう風に目立つのだろうか。
いよいよ審判の人が開始の合図を出した。
すると、ウェアが対戦相手の子のすぐ前に瞬間移動してパンチを繰り出した。対戦相手の子は一瞬で場外へ。その間、1秒にも満たない。それを見ていた人は皆驚いてザワついている。
「なるほど、単純だけど確かに目立つな。」
「リエルの時も思ってたけど、相手の子がかわいそうだね。実力のほとんどを見せれずに終わるなんてね、どんな”スキル”かさえ分かんないんだもん。」
「それは大丈夫だと思うぞ。こんなことがあるぐらい学校側は予想してるだろうからな。学校側だって受験者の実力を見たいんだから、他の試験でケアされるだろ。」
その時、アンが呼ばれた。
「あ、私呼ばれた。じゃあ行ってくるね。」
「アンはどんな風に目立つの?」
「私はあんた達と違って勉強出来るからね。その必要はないの!」
「…」
アンはそう言って中央の広場に向かった。
アンの対戦相手は大柄の男の子だ。背が高くパワーがありそうで、とても同年代とは思えない。周りの人は、アンが大怪我しないか心配そうだ。まあそれでもアンが勝つだろうけど。
その時、ウェアが戻ってきた。
「よっ。最初の試験はとりあえずクリアだな。」
ウェアも試験で目立ったので、視線がさっきより多くなった。
「そう言えばアンは?」
「今は試験中。もうすぐ始まるぞ。」
「おっ本当だ。」
審判の人が開始の合図をした。
すると、対戦相手の子がいきなり熊に変化した。”スキル”,”熊”っと言ったところだろうか。
その熊の子がアンに向かって攻撃する。それをアンは軽く避け、腹にパンチを繰り出した。
その熊の子は場外ギリギリで踏ん張り、なんとか体制を整えて反撃開始というところで、アンの蹴りをくらいそのまま場外へ。
会場はまたザワついている。
「あいつ…目立つつもりはないとか言ってたけど、十分目立ってるな。」
「あの熊の奴が目立ったからな、それを難なく倒したあいつはもっと目立ったってわけだ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アンが戻ってきた。なにやら不満な顔をしている。
「どうした?」
「いや…”スキル”を使いたかったなぁと思って。」
そう言えば、アンは”スキル”を使っていなかった。
「しょうがないよそれは。オレ達以外、あんまり大したことないし…」
っとウェアが周りの目を全く気にせずに言う。まあオレも同意見だが。
-----------------------
「最初の試験はこれにて終わりにしたいと思います。次の試験まで暫しの間休憩とさせてもらいます。次の試験が始まる時はまたお知らせしますので、初めにお集まりいただいた広場で再度お集まり下さい。」
っと教師が説明した。どうやら次は受験番号4001〜4500の人がこの訓練所を使うようだ。
(しかし、人数が多いのは分かるが、それなら日を分けるとかしろよ)
っと心の中で愚痴を言っていた。
まあいいか、とりあえずは最初の試験が終わったんだし、次の試験に向けてゆっくりと休んでおこう。
オレ達は最初の広場へ向かった。




