107,嵐の予感
あの会議から約1週間後、リエルは軍本部の小部屋で休息をとっていた。そしてそこに級友達が入ってくる。
アン、ルビア、シトラ、イリアだ。かつては9人いたクラスも約半分となってしまった。
「よう!」
ルビアは入ってくると同時にリエルに軽く挨拶をする。
それに対してリエルは軽く手を上げるだけだ。
暴走し、アンに止められたリエルだったが、その代償にリエルの感情は完全に元には戻らなかった。
というのも、リエルの精神年齢が異様に上昇したのだ。
どうやらリエル本人が言うには、「20年くらいプラスで生きた感じがする。」らしく、実際に精神年齢も以前のリエルよりプラス20されていた。
だが、記憶喪失とかそう言ったものなどはないし、日常生活をおくる上では問題はない。
だが、致命的な欠点として、会話が楽しくない。
以前に比べてリエルの感情の揺れ幅が比較的小さくなってしまったためだ。特に笑うことがなくなった。ただ精神年齢がプラスされただけではこうはならない。
医者によるとこれは、過去に暴走の原因となったトラウマ的な何かが原因だと言われている。
しかし、本人含めそれが何か分からない。
「アルタミラ、思ってたより攻めてこないな。
もしかしたらこのままローズン平野での開戦かもな。」
「油断は禁物だよ。
それにオレの予想では、約1週間後、開戦直前に攻めてくる。」
「なんで?」
「開戦直前にもなれば、ローズン平野に兵を集めざるおえない。レイさんの瞬間移動は一方通行らしいから一度通ると戻れない。だから開戦直前が一番手薄になるってこと。」
「なるほど、」
リエルが淡々と説明する。
「それってなんか不利だね。
こっちから攻めちゃダメなの?宣戦布告されたんでしょ?」
「まあ、ルール的にはダメだからな。」
「じゃあなんでアルタミラはしてくる可能性があるの?」
「例えばクラントが奇襲した場合、クラントの国民からすごい批判がくるだろうな。それに奇襲というくらいだからアルタミラの民間人にもかなりの被害が出てしまうだろう。それもマイナスポイントのはずだ。
ただアルタミラの場合は、上層部連中が完全に支配しているから、批判はある程度抑えられるだろうっていうこと。宗教国家なのとかも関係しているかもな。」
「なんか色々ややこしいね、よく分かんないわ。」
「グラム大将も大変そうだなぁ」
こんな感じの会話をしているだけで、特に友達らしい会話をすることはなくなった。開戦が近づいてきて、緊張が高まってきたのもあるだろうが、リエルの件もあるだろう。
そして約6日が経過した時、クラントの首都ツァンバルに1人の青年の女性が鼻歌を歌いながら歩いていた。
女性の名はリオン・テラゴール
アルタミラの“操り人形”の超越者だ。




