102,ミラー・シャーロット(3)
息子を呼び出したミラーは自分が見た”予知”の内容を話し始めた。その内容とは、将来アルタミラが大陸を支配し、とても醜い政策をすること、そして、それに対抗するための戦力として、”サイコキネシス”の超越者が必要であることだ。
50歳を迎えたミラーには、その”サイコキネシス”の超越者がどんな者であるということまでは分からず、しかしかろうじて何となくの場所だけは分かっていた。
そして最後にミラーは、こう息子に伝えた。
「このことを後世に伝えていってください。
私が見た”予知”は全てこの予言書に残しました。」
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「そしてその予言書がこれです。」
キラーはどこからか本を取り出し、それをグラムの前に置く。
「これは当時のミラー本人が書いたそのものです。
今私が話した内容などより詳しいことが書かれています。
と言っても、約150年前の予言なんで分かることは微細ですが…」
グラムは机の上に置かれた本を手にとり、ペラペラと読み出した。
「それで、この”サイコキネシス”の超越者というのがリエルであると言うのですか?
それであなた達はリエルの味方をしたと…?」
「はい、その通りです。
あの時の力は超越者と比較しても何ら遜色ない、もしくは凌駕するかもしれないほどの力を遠くから見ていただけで感じました。
原因は私には分かりませんが、突然の覚醒。
これは予言の人物であると確信しました。」
「まあ…そう考えるのが妥当でしょうな…」
グラムが考える仕草をする。
「我々を疑わないのですか?ただあの子らにとりいっただけのアルタミラのスパイかもしれない。」
グラムはキラーの目を見て答える。
「嘘なら流石にそちら側のリスクが高すぎると思っただけですよ。多くの戦力を失った上に、ただ敵国の戦力を増やしただけ。それにアンの話を聞くと、リエルの暴走からの対応が早すぎる。それと私にはもう一つ確かな根拠があります。」
「それは?」
するとグラムはニヤリと笑って答える。
「私はこう見えて80近く生きていましてね、その経験から相手の目を見れば、相手が嘘をついているかが大体分かるんですよ。まあ私の”スキル”の派生かもしれませんが、」
その瞬間、キラーはグラムに何もかも見透かされているような、そんな感じがした。
「それと、分かる範囲でいいんですが、一つ質問させてください。我々はどのように負けるのでしょうか。」
グラムの質問には、長年無敗を貫いてきた自分自身がどのように負けるのか、という興味も含まれていそうだ。
「これは”予知”とは関係ないのですが、我々が軍を独自に調べ上げました。我々も祖先のおかげでだいぶ軍上層部に顔がききましてね。
そしてその質問の答えの一つは内通者です。」
グラムの眉がピクリと動く。
「私が内通者を見逃したと言うのですか、」
「はい、まあそう言うことになりますが、クラントにはグラム大将がいるので軍の上層部にはスパイは居なかったはずです。おそらく普段からグラム大将と合わないような者ばかりでしょう。
だからヴァルランダが先に潰されたのです。」
「…!! ヴァルランダにも内通者を送り込んでいたんですか?」
「はい、それと後から裏切った者もいました。
アルタミラの王や参謀は先程話した”予知”のせいで聡明すぎて、行動履歴などからどのような心情でいるかなどを見抜いてしまうのです。”電気”の超越者カミナがその最たる例です。」
「それは……”スキル”も関係してそうですね。”IQ”とか,」
「流石の私もそこまでは分かりかねます。」
そしてキラーは少し間をおいてから話の続きをする。
「それとアルタミラがあなたを倒す方法ですが、最近アルタミラで行われている”スキル”の実験が関係しています…」




