チャンス
ザワザワと騒がしくなった。
教室の入り口に人だかり。
昨日、大和お兄ちゃんが急に来て、台本の読み合わせしろ。
と頼まれて?命令されてか…仕方ないので読み合わせに付き合った。
夜遅くまで続いたから眠い…。
なので入り口騒がしいなと思うくらいにしか思ってなかった。
『あなたの居場所はここにはない。しっかりと前を向いて!』
散々昨日聞いたセリフが頭の上から聞こえてきた。
「私は…今まで何に囚われていたんだろう…。これまで私は前だけ向いてきた。振り返ることもせずに。良かれと思ってやってきたけど…。もうここは私の居場所ではないのね。わかったわ。私はもうここには来ません。今までごめんなさい。そしてありがとう。」
「りま。セリフ覚えてるの!?」
ん!?
この声…。
目を見開いて顔を上げると…
「ひかりさん!?」
びっくりして声をあげる。
なぜ普通科に…。
「りまのおかげで今度の舞台出演できることになったのよ!大和さんから連絡あって!嬉しくって。」
いつの間に…
「ひかりさん、おめでとうございます。でも、私大和お兄ちゃんにはひかりさんの事ちゃんと話せてなくて…。だからそれはひかりさんの実力だと思います。」
私はにっこり笑うと
「ヒロインはりまよ。」
にっこり返されてそう言われた。
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「りま、顔怖い!スマイルスマイル!」
いや…
意味分かんない…
スマホを取り出すと廊下に出て一目散へ大和お兄ちゃんに電話する。
でも、出やしない!
昨日のあれは私に台本覚えさせるためだったのか…。
はめられた…。
大和お兄ちゃん、昨日の録音して他の人たち説得してるかも。
はじめ全く感情込めないでやってたら怒るし、細かい指示までだしてくるし、変だなとは思ってたんだよ。
「もー本当最悪!!」
「何が最悪?」
ドキン
目の前に彩人の顔が。
「会えた。りま。」
私の頬に触れる彩人の手。
頬が熱くなる。
りまは私の手を引くとまた屋上の死角になる場所に連れてきた。
ここで私達…。
思い出すだけで顔が熱くなる。
「で。なにがあったの?」
私の顔を覗き込むように綺麗な顔を向けてくる。
かっこよすぎて心臓に悪い。
「頬真っ赤。可愛い。食べちゃいたい。」
そう言いながら頬にキスをする。
「もっと真っ赤になっちゃったね。」
そう言うと軽く唇にもキスをした。
そして私を抱き締める。
「りまに癒やされる。」
そう言いながらぎゅっとする。
「彩人…私…。」
彩人に会えない時間に会ったこと光さんと仁ちゃんに会ったこと。
大和お兄ちゃんの事。
全部話したんだ。
「りまはどうしたい?俺はリマがしたい事を応援するよ。」
「私は今は学校大事にしたい。大和お兄ちゃんの夢も応援したいっていうのもあるけど。」
「そっか。りまは演技とかは好き?」
「嫌いではない。というか好きだと思う。中学校の学祭だけだったけど舞台で演技するっていう感覚は本当にゾクゾクして楽しかった。」
「そう。それをするチャンスは目の前にあるよ。それはこのあとくるかどうかわからないチャンスだよ。もう少し考えな。」
そう言って私の頭をポンポンとする。
「彩人…。ありがとう。」
そう言って私から彩人にキスをした。
頬にだけど。
彩人がびっくりした顔をして頬が赤くなるのがわかった。
彩人でも照れることあるんだ。
わぁ。
そんな彩人を見つめてると唇に深いキスを落とす。
見つめ合って何度も何度も…。
光さんをほっぽりだしてきたのも忘れてただただ彩人のぬくもりを感じていたんだ。