出会い
大好きな人がいた。
大好きでこの人とずっと一緒にいたいと思っていた人。
中村竜馬。
その人の名前。
竜馬は小さな頃からの幼馴染。
ずっと大好きで高校生になってやっと付き合う事ができた。
仲良くしてたと思ってたのは私だけだったのかもしれない。
友達と話してるのを聞いてしまった。
「莉麻ちゃん可愛いよね。俺も付き合いたい。」
竜馬の友達の椎名翔くんがそう言っていた。
莉麻とは長谷部莉麻、私の名前です。
「じゃ、任せるわ。俺、かんなと付き合いたいし。」
え…?
かんなって…。
「は!?お前何言ってんの?莉麻ちゃんとやっと付き合ったと思ったら。」
怒りを含んだ声でそう言う翔くん。
「あいつ俺のことずっと好きだから一回付き合っとけばいいかと思ったけど、この間かんなに告白されてさ。俺が莉麻と付き合い始めたって聞いて慌てたみたい。俺が口説いてた時は全く興味なさげにしてたのにな。」
悪びれもなくそう言う竜馬。
「おまえ…」
そういうと翔くんが今にも竜馬を殴りそうになっていた。
「竜馬なんていらない!お情けで付き合ったとか本当サイテー!今まででだってずっと保留にしてたのは竜馬なくせに。あんたなんて顔もみたくない!」
そう言ってその場を駆け出した。
涙があとからあとから溢れてきて前が見えない。
そんな状態で走ってれば誰かにぶつかって転んでしまった。
「おい。走るなよ。危ねーな。」
「ご…ごめんなさ…」
「お前泣いてるのか?」
私は首を振る。
バレバレなのに泣いてるなんて思われなくないと思ってしまった。
「仕方ねぇな。」
そういうとその人は何を思ったか私を抱きしめた。
ふわりと良い香りがした。
泣いてる私の背中を優しくさすってくれる。
優しい声で
「大丈夫。大丈夫だから落ち着けよ。」
そう何度も私に優しく声をかけてくれる。
その声が優しくて余計に泣けてきた。
小さな頃からずっと一緒だったから、竜馬との思い出がたくさん浮かんできて、止まらなくなってきた。
「彩人どこいったかな〜もぅいつも逃げるし。」
なんて声が聞こえると
「やべ。こっち。」
そう言ってまだ泣き続けてる私の手を引いてどこかへ連れて行ってくれた。
涙で視界もぼやけてるし、人に顔を見せたくなくてうつむいてたからどこかもわからなかった。
「ここなら誰も来ない。」
そうぶっきらぼうにいうとまた私をふわっと包み込んでくれる。
涙が止らない私の頬に流れる涙を拭ってくれる。
暫くそうしてくれてるうちにだんだん落ち着いてきた。
「あの…落ち着きました。すみません。ありがとうございました。」
ペコリと頭を下げて、顔を上げるとびっくりした。
「え…」
私はこともあろに人気アイドルグループ「AJ.BOYs」の対馬彩人さんの胸をかりていたのだ。