第82話 同盟の締結へ
オレたち4人は、街に入るとそのまま王城へ向かった。まずは、エルディア姫に親書を渡さなければならない。最優先事項だ。
そして、その姫様は今日も仕事部屋にこもって仕事をこなしていた。本当にマジメな人だ。
しかし、オレたちがその仕事部屋に入ると、姫様はぱあっと顔を輝かせてオレたちの目の前まで歩いて来た。
「みなさん、よくご無事で! 話は聞いていますよ」
姫様はそう言って、ユリカ、エアリス、ベルファの体を一人ずつ抱きしめていった。この世界にもハグがあるのか……。
オレも姫様とハグしたい……ダメだよね、やっぱり。
「姫様。こちらがウェルゼナ国王の親書です」
オレは懐から親書を取り出して、姫様に渡した。
姫様は、「ありがとうございます」と言って頭を下げてくれた。オレたちは下々の者なのに……優しいなあ。
そして、姫様は親書の封を切って、内容を確認した。オレたち4人は、黙ってその様子を見つめていた。
「これで無事に同盟が締結できますね。魔王軍に少しでも対抗しやすくなります。みなさん、本当にお疲れ様でした」
親書を読み終えた姫様は、笑顔でオレたちをねぎらってくれた。
「だけど、一つ気になることがあるのね」
ここでユリカがポツリと言った。そうだ、オレたちの活躍ぶりを黙秘する件だ。
しかし、このタイミングで。
コンコンコン
ドアがノックされ、宰相のレゼルブが室内へ入って来た。
実質的に政権を握っているエルディア姫の片腕とも言うべき存在だ。イケメンなのが気に入らないんだけど……。
「姫。お話し中のところ、申し訳ありません。陛下がナリユキ氏とお会いしたいと仰っていまして、彼をお連れしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ええっ!? 陛下が!?」
オレは、思わず問い返した。オレが入城したとたんに、速攻で呼び出してくるとは……まあいい。
「姫様、よろしいでしょうか? 1時間ほどで済ませてきますので」
オレは、念のために姫様へ尋ねる。
「仕方ありませんね。ナリユキさん、本当にすみません」
姫様はそう言って、再び頭を下げた。
「ナリユキ君、いいの? 国王陛下に会うのは、騎士団長に止められていたのに」
ユリカが心配そうに話しかけてくる。
「大丈夫。あの人の考えていることは、だいだいわかるようになったから」
オレは、そのままレゼルブにつき従って廊下へ出た。
その時、一つだけ気になることがあった。
普段から疲れ気味のレゼルブの顔が、ひどくやつれていたのだ。仕事がキツいのだろうか?
その理由を、オレは後で知ることになる。