第70話 二人のイケメン
オレ、ユリカ、ベルファの3人は、白の内部に入り込んで絶句した。
国王のウェルガ8世と、魔王軍の四天王ゼグロンの2人が睨みあっていたのだ。ゼグロンの隣には、グリフォンが控えている。
「国王、ご無事ですか!」
オレは、国王に向かって叫んだ。彼は、王冠もマントも外して軽装になっまており、腰に携えた剣に手をかけていた。戦う意志満々のようだ。まさに、一触即発の状況だった。
「そんな! 王の間には魔法で結界が張ってあったはずよ! こんなに簡単に魔族が侵入するなんて、ありえない!」
今度はベルファが絶叫した。そんな仕掛けがあったとは……。
「ふふふ、ご冗談を。魔法のエキスパートである私にとっては、この程度の結界を破るなど、造作も無い事です。それにしても、まさかこんな場所であなたたちと再会するとは思いませんでしたよ。しかし、何度も邪魔されるのは目障りです。ここで消えてもらいますよ」
ゼグロンは、国王に背を向けてオレたちを睨みつけた。同時に、人差し指で眼鏡のフレームを軽くクイッと上にずらす。この隙を突いて国王がゼグロンへ仕掛けるかと予想したが、グリフォンの鋭い眼光が彼を威圧していた。さすがに抜け目が無いな……と思っていたら。
「グレーヌ。お前に傷ついてもらっては、私が困ります。お前は、上空で私が戻るのを待っていなさい」
ゼグロンがグリフォンに優しく語りかけると、大人しく穴から出て飛び去って行ってしまった。魔獣でも、言葉が理解できるらしい。
しかし、たった一人でオレたち全員を相手にするとは、とんでもない余裕ぶりだ。
「お前たちは、手を出すな! この男は、余が倒す!」
その様子を見て怒り心頭となった国王が、腰の剣を引き抜いて、ゼグロンへ襲いかかった。長い金髪をなびかせながら、ゼグロン目がけて剣を縦へ横へと振り回す。
しかし、ゼグロンは国王の攻撃を一つ一つ、優雅な動きでかわしていく。まるで、踊りを楽しむかのような身のこなしだ。
その動きに合わせるように、ゼグロンの青い髪の毛も上下左右に流れるように動いていく。
「す、すごいい……イケメンとイケメンが戦っているう……。なんてカッコいいの…………」
オレとベルファがその緊迫感に飲まれている隣で、なぜかユリカは顔を赤くして瞳をウルウルさせていた。お前、いくら何でも不謹慎だろ! いい加減にしろ!