表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界忍者はナリユキまかせ  作者: 宗谷ソヤナー
第3章 平穏な日々
55/105

第55話 ナリユキ、先生になる

 翌日の13時、オレは小さな袋を持って再び王城を訪れた。

 昨日と違って、今回はオレが一人だけで来ている。目的は、国王に会う事だった。


「おお、ナリユキ! 待っておったぞ!」


 国王の部屋に入ると、国王は席から跳び上がってオレに近づいて来た。よっぽど待ちわびていたのだろう。


「じゃあ、説明しますので、テーブルをお借りしますよ。国王は、テーブルのそばにある椅子に座ってください」

「うむ」


 国王が言われた通りに席に座ると、オレは袋の中からある物を取り出した。

 それは……コンビニや駅の売店などでよく売っているポケットサイズの将棋盤だった。もともと高校のキャンプの休憩時間で友達と遊ぶつもりで持ってきたものだ。盤は折り畳み式になっていて、盤を開くと駒が40個入っている。ちなみに、マグネット式なので、駒を無くしてしまう心配もほとんどない。


「こ、これは……いったい何じゃ? 初めて見るが?」


 国王は首を傾げた。よかった……忍者が知られているくらいだから、将棋も知っているかと思ってヒヤヒヤしたぜ……。


「これは、将棋という戦略ゲームです。まずは、駒をゲーム開始の位置に並べましょう」


 オレはそう言いながら、40個の駒を並べていく。オレの側に20個、国王の側に20個…………並べ終えた。そしてオレは、自陣の王将をつまんで見せる。


「この駒が王将……つまり王様です。対戦する2人が1回ずつ交互に駒を動かしていって、先に相手の王様を追い詰めた方の勝ちになります」

「なるほど。これはおもしろそうだな」


 満足そうにうなずく国王。よし、つかみはオーケーだ。

 オレは続いて8種類の駒の動き方、相手の駒を取ると自分の手駒として使える事、反則となる禁じ手などを一つ一つ丁寧に説明していった。

 国王は興味津々で、途中からメモを取り始めた。

 一通りの説明が終わったところで、オレは宣言する。


「では、実際に2人で戦ってみましょう」

「おお、いよいよか!」

 

 待ちに待ったとばかりに、国王は身を乗り出した。しかし、そんな国王の前でオレは自陣から攻め駒の核である飛車と角行を取り除いて脇に置いた。


「な、なんじゃ? 一番たくさん動ける駒を使わんのか!?」

「これはハンデです。国王が上達するまでは、これで指します」

 

 正直、駒の動かし方を覚えたばかりの相手に勝つなど、赤子の手をひねるようなものだ。オレが圧勝するのは目に見えている。だが、手も足も出ずに負ければ、国王は将棋への興味を失ってしまう。それでは困るのだ。


「うぬう。なめおって……!」


 国王は熱くなって、積極的に攻めて来た……うん、それでいい。

 おかげで勝負はかなりの接戦になり、最後はしっかりオレが勝った。


「もう一回じゃ! もう一回!」


 国王は負けても負けても、諦めずに勝負を挑んでくる…………その熱心さを政治に生かせないものかな?

 勝負は何度も繰り返されて日が暮れてしまったが、結果はオレの全勝だった。


「ウェルゼナ王国への出発は明後日じゃろ? 明日も勝負に来い!」


 結局、翌日はまる一日、国王との将棋に付き合わされた。更に、勝負の合間に戦法や王将の囲い方まで説明するハメになった。本当の目的は、勝負を早々に切り上げて、エルディア姫にこっそり会いに行く事だったのに……叶わぬ夢となってしまった。とほほ…………。



 そして、その次の日。オレ、ユリカ、エアリス、ベルファの4名は、ウェルゼナ王国への親書を受け取るべく、エルディア姫を訪れた。

 オレたちの冒険が……今、始まる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ