第37話 重傷のエアリス
「あっ、あそこにエアリスの足が見えるよ! わかる? ナリユキ君!?」
ユリカが指差す方向を見ると、瓦礫の下からエアリスの右足がはみ出ているのに気がついた。オレは瓦礫を避けながら、エアリスの元まで歩いた。
「よいしょっ……」
エアリスの上に乗っている瓦礫をどける。
ズズーン!
大きな重低音を立てて、瓦礫はエアリスから離れた。
しかし、エアリスは酷い傷を負っていた。体のあちこちから流血している。オレは、ゆっくりとエアリスの体を持ち上げて反転させ、あお向けにさせた。エアリスの体の下に、ベルファの体があった。
「う……ぐ……あぁ…………」
エアリスは、苦しそうに呻いた。良かった、まだ息がある。
そこへ、追って来たユリカが声をかける。
「エアリス。今、回復魔法をかけてあげるのね!」
エアリスのそばに寄り、右手をかざすユリカ。しかし。
「ま、待ちなさいよ……!」
ベルファが目を覚まし、その場で杖を立ててしがみつきながら立ち上がろうとしていた。
「ベルファ! あなたも足をケガしてるじゃない! ちょっと待ってて。エアリスを直したら、あなたも手当てしてあげるから!」
ユリカの言う通りだった。ベルファの左足から、血がポタポタとしたたり落ちている。相当痛そうに見えたが、それでもベルファは立ち上がった。
「冗談じゃないわ! ヤツらが消えたのなら、あたしはナリユキを殺す!」
「何を言ってるんだ! オレよりお前の方が酷いケガをしているじゃないか。そんな体で戦うつもりなのか?」
オレはベルファを止めようとした。これ以上の争いは無意味だ。
「う、うるさい……あたしは誰の助けもいらないわ……エアリス、あんたもバカよね! 大バカだわ! あたしに構わず、一人でさっさと下の階へ逃げれば良かったものを…………!」
吐き捨てるように叫ぶベルファ。
パアンッ!
その時、乾いた音が響き渡った。