第36話 立ち上がれ
「お、重い……」
目が覚めた時、周りは真っ暗だった。
オレは、落ちて来た塔の天井の下敷きになっていた。瓦礫を退けて、起き上がれるだろうか?
ガラガラガラ……
あ、背中の瓦礫が動いた。これは、どうにかなりそうだ。
オレは少しずつ背中を持ち上げて、背中に乗っている巨大な瓦礫を動かしていった。ある程度動かしたところで、今度は両腕を使ってゆっくりと持ち上げていく。異世界でオレにとっては低重力になっている状況だけど、結構重たい。
ドゴン!
大きな音を立てて、瓦礫を脇へずらした。
「ふーっ」
オレは思わず、深いため息を吐いた。
オレの足元では、ユリカがうつ伏せになっていた。大丈夫だろうか?
「ユリカ、しっかりしろ! 目を覚ませ!」
ユリカをあお向けにして、彼女の両肩を揺さぶった。
「ふにゅにゅ? おはよーナリユキ君……」
ユリカはすぐに反応した。あまりにもマヌケな反応なので、ズッコケてしまった。どうやら全くの無傷らしい。ホッとしたけど、何だか少しイラッとした。ユリカは起き上がってオレに尋ねる。
「わ、私はナリユキ君のおかげで無事だったけど、ナリユキ君は大丈夫なの?」
前言撤回。プリーストという職業だからかも知れないけど、こうしてオレの体の心配をしてくれるあたり、少しは良いとこあるじゃん。
「まあ、無事ってワケでもないけどな。体のあちこちが痛いけど、骨が折れたり、激しい出血は無いから何とかなるだろ」
オレは立ち上がって、周りを見渡す。ゼグロン、グリフォン、石像の姿は既に無い。エアリスとベルファは無事だろうか?
爆発の影響で、塔の天井はほとんど消し飛び、中央の柱と壁の一部だけが残されていた。あの魔法を直接食らっていたら、オレ自身も同じように消し飛んでいただろう……その破壊力に、背筋が凍る思いがした。