第27話 ライバルを潰せ!
「あと一つ、ナリユキさんに話しておかなければならない事があります。このクエストは、緊急クエストであると同時に『共同クエスト』でもあるのです」
ライムがコホンと咳払いをしながら言った。何だ? また新しい言葉が出てきたぞ?
「共同クエストとは、複数のパーティーが同時に1つのクエストに参画できる特殊クエストです。既にこのクエストには、3つのパーティーが名乗りを上げています」
「えっ? でも秘密兵器って、たぶん1つしか無いだろ? ……って事は、早い者勝ちって事になるのか!?」
「その通りです。もしパーティー同士が手を組んでクリアした場合には、報酬もパーティーの数に応じて分割されます」
「それはマズいな。急いで出発しなければ、完全に無駄骨になる!」
問題は、既にチャレンジしている3つのパーティーだな……。
「すまないライム。その3つのパーティーについて、教えてくれ」
「参加順に説明すると……まず、ウィザードのベルファさん。ただ、たった1人で乗り込むつもりなので、無謀と言わざるを得ませんね。たぶん無理でしょう」
あの女……下手したら、魔物よりもずっと強いかも知れない。ヤツは、塔の中でオレを見つけたら、間違いなく殺しにくるだろう。できれば、出会いたくない相手だ。
「2つ目のパーティーは、戦士ゴーディスさん。3人編成で盗賊とプリーストを連れています。ナリユキさんたちを除けば、彼らが最有力ですね」
そりゃそうだ。たった1人で迷宮に入るなんて、無謀すぎる。
「3つ目は、女騎士のエアリスさん。彼女もたった1人で塔へ向かいました。無事に帰って来れれば良いのですが」
これは好都合だ……一度だけだが共闘した事があるエアリスを上手く味方に引き込んで、2人がかりでベルファを倒してしまえば、競争相手はゴーディスだけになる。オレとしては、今回の報酬など全てエアリスにくれてやってもいい。姫様とデートさえできれば、御の字だ。うへへへ……。
「な~にイヤらしい顔をしてるのナリユキ君? 何か良くない事を考えているでしょ?」
ドキッ! ユリカに突っ込まれた! 妙なところで鋭いな、この女は……!
「な、何も考えてねーよ……ありがとうライム。オレたちも出発するよ。急がないとな」
「はい! がんばってくださいね!」
オレはいつものように、ロープと食糧だけを持ってユリカと一緒に出発した。
魔物の棲む西の塔に向かって。