第25話 デビルカタツムリ討伐
翌日の早朝、オレとユリカは冒険者ギルドで朝食を済ませると、北の森へ向けて出発した。持ち物は、リュックの中にロープと昼食用のサンドイッチだけ入っている。戦うために、荷物は最小限にした。
天気は晴れていたが、森へ入った途端に一気に暗くなった。幸いな事に道だけはしっかりあった。この道から外れさえしなければ、迷うことはない。
どのくらい歩いただろうか。
前方からドドドッという地鳴りが響いてきた。目を凝らすと、真っ黒い巨大な殻を背負った化け物が突進してくるのがわかった。これはデカい!
まるで巨像並みの大きさだ。周りの小さな木の枝をバキバキと吹っ飛ばしながら近づいて来る。
しかも速い! 正直、カタツムリだから動きはノロいだろうと甘く見ていた。
しかし、この猛獣は飼い慣らされた犬が全力で走る以上のスピードだった。
「隠れろユリカ!」
オレは叫んでその場に身構える。デビルカタツムリは巨大な口を開けて襲いかかって来た。
「キシャアアアアッ!」
吠える! 鋭い牙が光る!
しかし、オレは食われるギリギリの瞬間で横に飛び退いた。相手はオレを見失い、その場でザザザッと急停止した。
「今だ!」
デビルカタツムリの真横へ回り込んだオレは、相手の巨大な殻を目がけて全体重をかけてドロップキックを食らわせた!
びたーん!
横転するカタツムリ。倒してしまえば、こっちのもんだ!
オレはカタツムリ本体の上に乗り、上からげしげしと踏みつける。
ストンピング! ストンピング! ストンピング!
相手の体液がオレの体に飛び散り、全身ネバネバになるが、そんな事に構ってはいられない。オレは連打を繰り返した。
「ピキャ~!」
悲鳴を上げたカタツムリが、殻の中へ閉じこもるかと思ったら。
なんとカタツムリは殻から離脱してナメクジのような姿で逃げ出したのだった。
「えええええっ!?」
相手はオレの一瞬のスキをついて、森の繁みの中へ勢いよく飛び込み、あっという間に見えなくなってしまった。
残ったのは、巨大な殻のみ。
「良かったのか、これで……?」
ボー然とするオレに、ユリカが飛び跳ねながら祝福する。
「やったねナリユキ君! これで1匹倒したよ~。殻を持って帰ろう♪」
こうして、オレは持ってきたロープで巨大な殻を縛ってズルズルと地面を引きずりながら、街へと帰って行った。
すっごく重いよ、コレ……しんどい…………。
正直、戦うよりも殻を運ぶ方が大変だった。
しかもユリカは運ぶのを全く手伝わなかった。これはさすがに腹が立った。
「すっごいネバネバで触りたくな~い! ニオイもクサイし~。ナリユキ君、お風呂に入るまで私に近寄らないで!」
まるで、バイ菌扱いだった。お前は何もしてないのに……そりゃねーよ。
結局、1日で1匹倒すのがやっとだった。次の日以降も出撃を繰り返したが、空振りの日もあったりして、目標の5匹を倒すのに10日もかかってしまった。