第14話 イケメンはお疲れ
城内の通路には、真っ赤な絨毯が敷かれていた。オレとユリカは、その上を歩いていく。さすがに一国を治める王の住む場所だけあって、装飾がとても豪華だ。オレは、思わずその威圧感に圧倒されていた。
通路の途中には、ところどころに衛兵やローブをまとった文官がいて、その人たちにユリカが「やっほ~☆」と手を振って挨拶していく。アホっぽいが、城内の人々にまで顔が広いということは……コイツ意外と有能なのかも知れない。
「王様とお姫様の部屋は、3階にあるんだよ~」
言いながら、ユリカは階段を上がっていく。ヤバい、姫様に会う直前で心臓がドキドキしてきた。
3階に上がり、さらに廊下を進んでいくと、反対側から誰かが歩いてきた。だが、着ている服が貴族並みに豪華だ。まさか、この人が国王か……?
「レゼルブ様、こんにちは~。救世主様を連れて来たんだけど、エルディア様はいらっしゃるかな~?」
レゼルブと呼ばれた男は、初対面のオレが見ても疲れ切っているのがわかった。30歳くらいだろうか。優男できらびやかな感じではあったが、ひどくやつれていた。
「エルディア姫は仕事中だ。今すぐお会いになられるかどうか……まあいい、私が姫の都合を確認して来よう。そこで待っていてくれ」
レゼルブはくるりと踵を返し、今来た廊下を歩いて行った。
「ユリカ、今の人は誰だ? 偉い人か?」
「あの方は、レゼルブ様。この国の宰相だよ~。すっごいイケメンでしょ? とってもお金持ちだし、私の憧れの人なんだよ~」
宰相って言うと、大臣みたいなものか……ユリカの憧れってのは、どうでもいい事だが。
「だけど、ずいぶんやつれていたな。やっぱり、仕事が原因で疲れているのか?」
「たぶん、そうだと思うよ~。この国の政治って、ほとんどエルディア姫とレゼルブ様がやってるみたいだし~」
「マジかよ!? 国王が治めているんじゃないのか!?」
「う~ん……王様って、あまり政治に興味ないみたいだからね~」
なんてことだ……衝撃の事実に唖然とした。国が滅びないといいけど……。
しばらくすると、宰相レゼルブが戻って来た。
「姫は、特別に仕事を中断してお会いになられるそうだ。奥の仕事部屋にいらっしゃるので、ノックをして入ってくれ。失礼の無いように」
レゼルブはそう言って、少しフラつきながら別の部屋に入って行った。仕事、大変そうだなあ……。