第1話 女神の神殿(1)
気がつくと、オレは全裸だった。
何だ、この状況は?
どうして、こうなった?
……思い出せない。記憶をたぐり寄せる。ええと……。
「大丈夫ですか?」
前から声が聞こえる。透き通るように澄んだ女性の声。
そこには、美しい女性がいた。
紫色の長い髪に、青い瞳。着物に似た白い服をまとっている。木製のテーブルの後ろで高級そうな椅子に座っている。
一体、これはどういう状況なんだ……? ダメだ、混乱してしまう。
だが、一つだけ気付いた事がある。
前を隠さないと!
オレは慌ててその場にしゃがみ込んで、それを隠した。
「どうやら、今の状況がまだ理解できていないようね。」
女性が、ため息をつきながら言った。
オレは、この女性を知らない。初めて見る顔だ。
「あ、あなたは、誰……?」
少し震える声で尋ねる。髪の色からして、とても日本人とは思えない。
「私の名はフェリオ。女神です。」
「…………は?」
思わず、間の抜けた返事をしてしまう。
「女神!? 人間じゃないの?」
「そう! 私は女神! とっても偉いんだから!」
女性はそう言って胸を張る。……えええ? 自分で偉いって言っちゃうの!? なんか女神にしては性格が軽いな……。
「今から私が状況を説明するわ。よお~く聞いててね?」
女神が人差し指を立ててウインクしてみせる。ノリが軽いのが気になるが、今は話をちゃんと聞いておかないといけない。
「あなた……ナリユキ君はね、高校のキャンプ活動中、つり橋を渡ろうとしたんだけど、橋の木の一部が腐っていて、真っ逆さまに湖へ転落しちゃったの。そのまま湖の底に沈んでいったら当然死んじゃうんだけど、女神である私が君をこの神殿に転移して、命を救ってあげたわけ! 感謝してよね!」
えええ……何それ……。
「ちょっと待ってよ! じゃあ、この後オレはどうなっちゃうの!?」
さすがに焦る。確かにオレはあのまま湖に沈んで気を失ってしまったが、いきなりこんなワケのわからない場所に連れて来られて、一体どうしろと言うのか?