防衛省はいそがしい
西暦2036年1月18日 日本連邦共和国 首都東京 防衛省
国家の安全保障を担当する防衛省はトリエステ帝国との戦争が終わりいまだ仕事は多かったが、やっと落ちつくことができると、先日まで省内は穏やかな空気に包まれていた。
とある事情により再び防衛省職員らはの基準労働時間など無視されるほどには忙しくなっていた。
アメリカ合衆国からの対ヴマガード魔法帝国への自衛隊派遣の要請である。しかも1週間以内に具体的な派遣戦力内容の決定及び発表の要請である。
日本連邦共和国は同盟国であるアメリカや魔法帝国の侵略により多くの被害を受けてるフランス,スペイン,ポルトガルなどに対し、約1000億円の資金援助、不足しがちな医療品,食品,通信機材などの数千トン単位での無償提供を行っていた。
ただアメリカは直接的な援助が求めていた。日本連邦も戦争中であるため遠慮していたのだが、戦争が終わり勝利で終わったのだから同盟国を援助しろと強気の要請が行われたのだ。
やっと完成が見えてきた今後の自衛隊の各部隊,艦隊の運用計画が滅茶苦茶になり、またやり直さなければならないという事態に陥ったことに対し、市ヶ谷の職員ら頭を痛め、何とかして1週間で欧州派遣部隊決めなければと焦るのであった。
「natoが交戦してるウマガード魔法帝国の戦力及び戦況について報告を行います」
「ウマガード魔法帝国とnato軍はフランス,イベリアの2つの戦線にて対峙しており、敵の大攻勢によりnato軍は劣勢状態です。すでにマドリード,リスボンは陥落しておりイベリア戦線は崩壊したようです。フランスは西部の都市、ブルターニュ,カーン,ボルドーを失陥しており劣勢とみて問題ないでしょう」
「そこまで劣勢なのか。我々のほう技術は進んでるように見えるが、nato軍は魔法帝国軍の何に苦しんであるんだ」
他の職員はアメリカ軍が技術の遅れた軍に劣勢なのが信じられないようで質問をする。
「まずアメリカ軍が質で魔法帝国に優越しているとしても数が違います。現在対魔法帝国戦に従事してるアメリカ陸軍は約12万人、他nato加盟国が従事してる兵を合わせると約30万人。対する魔法帝国軍の兵数は少なくとも100万人はいるという状態です。また坑道を使った戦術や、結界と呼ばれるダメージを受け流す機構を持った兵器群に苦戦しているようです」
「報告感謝する。では早速どの程度自衛隊を派遣するか決めていきましょう。提案のあるものはいますか」
司会進行を任された職員が言う。
「魔法帝国軍の通商破壊は行わているものもアメリカ海軍と比べると海上戦力は乏しく、nato軍は制海権は安定して取れてるようです。海上戦力の派遣は輸送船を護衛できる分だけでいいと思います」
魔法帝国軍の生物兵器や艦艇による通商破壊は数か月前までは激しく、100隻近くの民間船が撃沈されたものも、米国艦隊による大規模な敵水上艦隊狩り及び護送船団方式への切り替えによって民間船の被害はほぼなくなっていた。
「やはり海軍戦力よりは、陸,空戦力を派遣したほう米国からの印象がいいでしょう。ただその部隊の派遣方法ですが、魔法帝国軍大攻勢に呼応しての自衛隊派遣要請であるため、輸送船で1年近くかけ、大規模な部隊を派遣するというよりは、輸送機で素早く行うほうがいいのでは」
「輸送機で部隊を迅速に展開するというのは効果的ではありますが、やはり規模的には小さいものになってしまうと思います。欧州は軍需品不足と聞きますし、遅いとはいえ輸送船団を使った軍需品の支援は必要かと」
「他に意見のあるものはいませんか。では我が国は陸,空戦力を輸送機を使い迅速に派遣し、それとは別で輸送船団による大規模な軍需品の提供を行うと」
司会の職員が言う。
「では3日後派遣する部隊の選定を行います。各職員を準備を進めておいてください」
そういって司会は立ち上がり会議室を後にした。
同年1月24日 防衛大臣執務室
防衛大臣執務室では防衛大臣と職員が話し合っていた。
「何とか派遣戦力が決まってよかった。陸自からは第12連隊と第106連隊を派遣するのか。かなり人数が多そうだが、飛行機は足りてるのか」
「問題ありません。すでに航空会社から合計7機の旅客機をチャーターいたしました。向こうも転移事変による観光業全体の不況により旅客機が余ってるようで、意外にも積極的でした。この旅客機5機を使って兵員を運ぶ予定です。また補給はC-2輸送機23機を使って行う予定ですが、軍需品が不足した場合nato軍から提供を受ける予定です」
「それはよかった。質問だが第96連隊の編成完成式に一昨年出たような気がするのだが、練度的に大丈夫なのか」
「確かに第96連隊はもっとも新しい連隊でありますが、ここ2年間の訓練により実戦でも充分戦えると教導隊の隊長も言っておりました。ただ経験不足は否めません。そのため第96連隊は実戦でより部隊として成長することを期待して派遣が決定されました。初の実戦が未知の敵なのは危険すぎるとの意見もありましたので、去年まで中東で治安維持任務に務めていた、実践慣れしてる第12連隊にサポートしてもらいます」
「隊員の命を大事するように頼む」
「もちろんです。各連隊には十分の数の医師をつけ隊員の身体,精神の手厚いサポートを行います」
「うむ。次に欧州に派遣する航空戦力だが、F-3,F-35A,F-2,F-15Jそれぞれ12機ずつか。ただ今後展開数を増やす可能性もあると。ふむ、旧式機を展開するのは実証実験でもするつもりなのか」
「はい。ステルス性の低い旧式機と高い新型機を同じ相手にぶつけたときどれくらい損害に差が出るかなどいろいろと試してもらう予定です」
「そうか。未知の技術を持った敵だからステルス機だろうとたやすく発見されてしまうかもしれないのか」
「では最後に軍事支援だが約1200億円相当の小銃,携帯式対戦車弾などの軍需品をおおすみ型輸送船1隻と海運会社からチャーターした2隻の貨物船で運ぶのか。軍需品を提供しても自衛隊としては大丈夫なのか」
「転移事変により軍需品の増産が進んでいますし、実際に提供するのは主に古くなった装備か実戦でのデータが欲しい一部の新兵器であるためそこまで問題ないでしょう。欧州では装備の消耗がひどく軍需品不足がひどいと聞きます、旧型で文句を言われることはないかと」
「そうか。自衛隊への影響が大きくないなら軍事支援をしても特に問題ないな。護衛はあさひ型3隻とつくば型2隻で、ロッテルダムにつくまでのかかる時間は約4か月弱か。やはり船だと時間がかかるな」
「はい。もとから欧州は遠いですし新たに出現した国家からできる限り離れた海域を通るようにしてるため、より時間がかかることになってしまいました」
「まあしょうがないな。未知の国家と突然戦闘が起きればたまったものじゃないからな。ロシア領通過できれば安全だし楽なのだが、さすがに無理があるか」
「そうですね民間品はともかく軍需品ですから」
同年1月25日
日本連邦共和国はウマガード魔法帝国に対する宣戦布告を行った。今までは魔法帝国と戦争を宣言してる国家はnato加盟国のみであったが、欧州から遠く離れた大国日本連邦が参戦したことによって、ヨーロッパ以外の多くの米国との友好国が参戦するようになる。
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