とある魔法帝国兵士のお話 後編
バルツハルム要塞は魔法帝国がフランス本土にいくつも建設した地下要塞の要塞の内の1つである。西ヨーロッパに建設された数十ある地下要塞の中でも比較的新しいものである。バルツハルム要塞は兵士3万以上を収容できるように大きさはあるが、即席の前線基地であるため結界は張られているはものも、支柱がむき出しであり、雑な作りであることは否めなかった。
敵基地から強奪した物資を司令部警備兵に預けた後、疲れた体を休めるため自部屋に戻ることにした。
要塞中央にある軍倉庫から自部屋のある6番棟までは2kmほど離れている。大した距離ではないから歩いてもよかったが、ちょうど今日から要塞内のバスの運行が始まったと聞いたし、折角だしバスで帰るとするか。
司令部から2分ほど歩いた距離に新設されたバスターミナルへと向かう。
15分後に出発した北部団地行きのバスは運行初日とだけあってほぼ満員であった。深夜関係なく要塞内は明るいのだが、すでに夜22時である。作戦が終わり疲れ切った兵士が多く乗っていた。
軍用のバスであるため決して乗り心地のいいものではないのだが、半分近い兵士が少しでも体の疲れを取ろうと目をつぶり体を休めさせていた。
そんな車内で自分はぼーっと窓から外を眺めていた。
ほどなくして目的地の北部団地4番停留場についたのでバスから降り6番棟に向かった。周りには6番棟と同じ5階建ての無骨な灰色の共同住宅が広がっていた。
「お疲れ様です大尉」
6番棟に入ると門番が自分に挨拶してきた。
「お疲れ」
と軽く返す。
第106中隊所属の兵士は皆6番棟を使用している。先ほどの私に挨拶を返した兵士もこの中隊のものだ。ちょうど今日門番担当だったのだろう。作戦後疲れ切ってるだろうよく頑張っている。
6棟に限らず侵攻先に作れた共同住宅では基本的に1分隊につき部屋1つである。また部屋も決して広いものではなく料理や洗濯などはできんし。棟共有のものを使うようになっている。
まあ私はこの中隊のトップであるため、一般兵用の部屋とは別の中隊長室が割り振られている。
中隊長室は一般兵の部屋の3倍近い大きさであり、かなり大きい。いくつもの部屋に分かれており、浴場や調理場など一通りのものがそろっている。共同住宅の中にまた一つ家があるようなものだ。
一人で住むには広すぎるが、副官や司令部から派遣された兵と一緒に住むことが多いためちょうどいい大きさだろう。
実際私もタランテス少尉という優秀な副官と一緒に住んでいる。
中隊室に入り少尉に今も戻ったと言い、そのまま寝室に直行したいとこだった土で服と体は汚れており、さすがに浴場で体を洗ってから眠ることにした。
「疲れた」
ベットに体に落とす。中隊長室のベットは一般兵のものと違って柔らかい。疲れ切った体を休めるには最適だ。
本日の作戦の報告書を書かなければいけないところだが、もう眠いし明日やっても問題ないだろう。今日は休もう。
早朝3時に少尉にたたき起こされた。今すぐ司令部に向かうようにだと。まだ5時間しか眠れていない。かなり眠いがそれほどの大事であるのだろう。急いで服を着替えて向かうことにした。
バスに乗っていきたかったが、この時間は通ってないようで歩くしかなかった。突然の招集なんだから大尉である自分に車を出してくれてもいいのではと思うが、最前線でそんなことは言えないか。
しょうがなく歩いて司令部に向かうことになったが、こんな時間に呼びつけるなんて何か重大な事件が初声したのではないかと不安になり自然と早歩きになった。
受付でどこに司令部のどこへ向かえばいいのか聞くと、最上階のアンドレアス少将の執務室へ迎えだと。少将閣下はこのバルツハルム要塞の最高責任者である。何を私に言うつもりだろうか、いいことだといいのだが。
執務室前の扉に立ち2度ノックして名乗る。
「第106中隊隊長のアルフレート大尉です。入ります」
「よし、入れ」
部屋の中にいる閣下の許可の声が聞こえたので扉を開き中に入る。
「失礼します」
「大尉、早朝突然呼び出して済まない。早速ここに呼んだ理由なんだが、この本についてだ」
私と少将の間に挟んだ机に灰色の本を置く。
「これは私が先日敵基地から回収した異国の地図帳ですかね」
「そうだ。回収した君なら気づいてると思うがこの地図は極めて精巧だ。この地図を解読することができれば多くの情報を得られるだろうかと思って、すぐに翻訳班に回したのだ。まだ大した時間は立ってないがそれでも様々な情報を得ることができた。その成果はこれを取ってきた君にも伝えるべきだと思ってな」
よかった私が何かやらかしたわけじゃないようだ。
「このわざわざ私に光栄でございます」
うむとうなずき、話を続ける。
「私が注目したの1枚目のこの地図だ。青色の下地を多彩な色で分けられている。おそらく青の部分が海、それ以外は陸地だということであろう。でこの地図とわが軍が作成した地図を見比べてみるとちょうど海岸線の形状が一致している」
確かに海岸線の形状が一致している。この地図が敵の大陸だとするとわが軍はどこまで進攻できてるのだろうか。
「大尉も気になっていただろう、わが軍の進軍状況だが、まず我々のいるバルツハルム要塞はここだ」
少将は地図の一点を指さす。海岸線から僅か10cmほどのところであった。
「失礼ですが少将バルツハルム要塞は現在最前線の基地だと聞きます。わが軍はたったこれだけしか進攻できてないということですか」
地図は正しいものであろう。少将閣下の言ってることも間違ってないであろう。たったこれだけしか領土を広げられていない。なんとも言えないもどかしさがあった。
「そうだ。この地図の国全てが敵だとすれば確かに我が軍はたったこれだけしか進軍できていない。この大陸すべての国が敵というわけではなかろう。我々が今のところ上陸してる国はこの3国だな。それ以外の国全てが敵ってことはなかろう」
確かにそうだろう。敵国がどれほどいるのか気になるが、まあそういうことを考察するのは軍のもっとえらい人たちの仕事だろう。アンドレアス少将は少しの沈黙の後、再び話し出した。
「まあそれはいいとしてある意味こちらが本題なのだが、この地図帳はここの翻訳班には荷が重くな。少尉にこの地図帳を本国の陸軍省に届けてほしいのだ。これを回収してきてくれた君へのお礼も兼ねている。もちろん旅費は我々が負担するし、陸軍省に届けた後少しぐらい自由に過ごしても構わない」
事実上の休暇を認めてくださるということか。この戦争が始まってからまだ一度も家族に会えてない。故郷に帰れるなら願ったりかなったりである。
「私、アルフレート少尉。閣下の願いを承りました。責任もってこの地図帳を陸軍省まで送り届けます」
「よろしく頼んだたのんだ大尉。では早速陸軍省に向かってもらうか。ここに侵攻軍総司令部行き列車のチケットと、本国行きの大陸横断海底鉄道のチケットがあるこれを使ってくれ。これが一番早く陸軍省まで着く」
「閣下のご親切に感謝します。それでは失礼します」
私は執務室を後にした。
なんとなく魔法帝国についてイメージがついたでしょうか。後編はちょっと書くのがつらかったです。
後編とはなってますが話的にはまだ続きそうな感じ終わってしまいました。このまま魔砲帝国の本土まで行ってしまうと終わらないのでここで止めました。
内容も敵国の話で外伝的な感じだったので、閑話にしてもよかったかもです。
予定では話の後半に日本連邦共和国の話を書こうと思ったのですが5000文字まで余裕で行きそうだったので止めました。話を書く速さが上がったらもう少し一話当たりの文字数を増やそうかな。
あとがきが長くなっちゃいました。なんとかほぼ1週間で投稿することができましたよかったです。