世界会議3
2月8日アルハイン市世界会議市本部第一会議室
一週間ぶりにそれぞれの列強国の大使らが一週間かけて集めた情報を持って第一会議室に集まるのであった。
「ネルマニア帝国大使のアーデルベルトです。みなさん集まったようですし会議を始めたいと思います。本日の議題は日本連邦への対応策です」アーデルベルトが話し始める。
「ではまず私から」エイベル(ヴェルバドル連合大使)が名乗り上げ1つの物を机の下から取り出す。
「これらの品は日本連邦が納品していた物です。世界会議様からいくつか拝借してきました」
「世界会議に納品した物を私用で使うのは御法度のはずなんだけどな」コッツェフ(オーラント連邦)がつぶやく。
「まあまあ実際世界会議議長から許可をもらったのは事実ですし。あなた方だってやろうと思えばできるでしょう」
世界会議の予算の7割が列強国によって賄われており、加盟国最多のヴェルバドル連合は2割も占めていた。加盟国は皆平等と言われているが実際のところ金を多く出す国ほど発言力が高く、世界会議内でいろいろと顔が効くのはあたりまえであった。
「まあその話は置いといてこれらの品を見てください」エイベルは一番右のを手に持つ。
「これは日本連邦のカメラらしいです。我が国のものとはまったく違います。カメラの内側にあるガラス板のような物を見ながらピントを合わせ、このボタンを押すと写真を取れるというものらしいです。日本連邦のカメラはありのままの色をうつすことができるというもの。また見ればわかる通りこのカメラは軽く、手軽に持ち運びできます。こんな高性能なカメラを日本連邦では多くの国民がこのようなカメラをを持っているらしいです」いくつかの撮った写真を見せる。
「これはマカロイ山の画像なのか綺麗なものだな。ちなみにこの画像を紙に現像することはできるのか」
コッツェフが訊ねる。
「このカメラではできないですけど日本連邦の印刷機と繋げるとできるらしいです。印刷機も借りることはできないかと交渉しましたが、結構の大きさで値段も張る印刷機を貸すことはできないと言われてしまいました」エイベルが手に持っていたカメラを置いて言う。
それぞれこれまで集めた情報を報告しあい、日本連邦への対応策をまとめていく。
数時間後。
「日本連邦への対応策は列強国全体の意見としては様子見ということで。もちろん各列強国が自由に行動してもらってかまいません」アーデルベルトがまとめる。
「では次の議題ですが・・・」
列強国全体としては少なくとも情報が十分集まるまでは日本連邦への高圧的な態度を行わないことが決定した。
会議中それぞれの列強国が出せる情報を出し合った結果全体としては決定した内容は薄かったものも、それぞれの大使は多くの情報を持って帰ることになる。そしてその情報をもとに列強国は動き出すのであった。
1か月の間行わられたアルハイン市開かれた世界会議は終わった。日本連邦の知らないところで多くの戦争の講話交渉が行われ、様々な秘密協定が交わされた。日本連邦も多くの国と国交開設しパーク大陸の全貌をつかみかえるのであった。
日本連邦のパーク大陸国家に対し圧倒的な技術力によってつくられた高性能な製品は各国の関係者を驚愕させた。今まで中小国にとって列強国が技術的目標としており、列強国と中小国の差は産業革命してるかどうかによる場合が多かった。その差は小さいものではなかったが多くの資金が必要な点以外中小国でも可能なものであり、勢力圏争いを繰り広げる列強国のどれかの勢力圏に与し支援を受けれれば充分可能追いつき可能な差であった。
そんななか日本連邦の登場である。日本連邦の製品はどうやって作れるのか全く見当もつかないような代物であった。中小国にとって登るべき山が血反吐を吐くような苦労をして登れる山から、そもそも山頂すら見えない高さの山へと変わったのである。
日本連邦には自重が求められた。ある程度進歩した製品を売るくらいならその国の産業は逆に追いつこうと努力することもあろう。ただ圧倒的な性能差のある製品を廉価で売り続けたらどうなるだろうか、その国の産業は壊滅するのは必至であった。
幸いにも日本連邦政府はそこらへん理解していた。その国の産業をダメにするようなことは慎み変わりにインフラ開発支援などを行うことに注力するようになる。
ヴェルバドル連合アールシー港
「これより第一陣西方探索艦隊は出港する。あらたな大地,国家を求め我々は進むのだ」
6隻の探索船と2隻の補給船それの護衛の3隻のフリゲート合わせて19隻の艦隊はヴェルバドル連合の主要港アールシー港から出港する。どの船も最新の蒸気機関を搭載していた。自国が日本連邦の世界に突然転移したという話自体連合政府はあまり信じていなかったがエイベルによる強い要望により探索艦隊が編成されることになった。
「日本連邦の外交官は母国語とは別にいくつもの言語を扱っていたのだから、日本連邦以外にも国はあるはずだ」
西方探索艦隊旗艦ルナトーク号にエイベルは座乗している。新しいもの好きで冒険好きだったエイベルは危険ではあるが未知の世界への探索へ期待を膨らませていた。
世界会議にて連合代表大使を務めるようなものが危険な探索任務につけたのに疑問を持つ者もいるだろう。実際彼ほどの外交能力を持つものが連合にはほかに存在しなかった。連合のためにも言うが連合は外交が苦手というわけではない。いくつもの諸島国家の連合であるヴェルバドル連合はその成立経緯からも外交上手な部類である。ただただエイベルという人間が外交の天才であったのである。
彼は40年以上も連合大使として世界中を飛び回っており、青年時代は船乗りとして世界中で活動していたエイベルは数十の言語を巧みに操り、そして現地の様々な文化に精通していた。大使と外交交渉を行うだけではなく、エイベルは本国での後進の育成にも精力的にかかわっており、統一して百年もたっていないヴェルバドル連合が列強国にまで上り詰めたのにエイベルの活躍があったのは連合政府関係者誰もが認めていた。
数十年間連合のためにひたすら尽くしていたエイベルが珍しく強く願い出たものだからすこしばかり危険なことだろうと連合政府が許可を出すのは必然であった。
ヴェルバドル連合の西方探査艦隊は多くの島を発見することとなる。その中には鉄や石炭など重要な資源が産出する島もあった。ただ初めの2回の探査では有人島を見つけることをできなかったのだが5回目の探査である多くの人類が住んでいる大陸を見つけることになる。その大陸には連合と同レベルの国家がいくつも存在しておりある地球国家がその大陸内で影響力拡大に邁進していたのだが、まあそれは別の話なので今回は置いておく。
いまだ情報不足で動きだしていなかったパーク大陸国家であったが嫌でも地球国家に巻き込まれるのであった。そしてそれは列強国であろうと関係なく。
予定ではもう少し早く投稿できるはずだった。とはいえ1週間以内に投稿できてよかったです。これからも「日本連邦共和国」をよろしくお願いします。