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5 これは大変な事になってまいりました!

妻木「何も知らない赤部選手が戻って来たようです!

この後どんな展開になってしまうのか⁉

レポーターの高田さん、これから赤部選手と彼女のやりとりを、逐一(ちくいち)お伝え願えますか?」

高田「わかりました。できるだけ正確にお伝えします」

妻木「さあ試合会場では彼女が玄関の方に向かって仁王立(におうだ)ちです。

左手を腰にあて、右手に浮気相手の物であろう髪の毛をつまんでいます。

今からそれを赤部選手に突きつけ、浮気を追及(ついきゅう)しようというのでしょう!

その姿はきらびやかな巣を張り(めぐ)らせて獲物(えもの)を待ち構える蜘蛛(アラクネ)のごとし!

赤部選手はその巣に絡め取られてしまうのかぁっ⁉」

高田「赤部選手が部屋に入ります!」

妻木「さあ玄関の扉が開けられました!

待ち構えていた彼女が間髪入れずに右手につまんでいる髪の毛を赤部選手に突きつけ、何か言った模様です!

高田さん、彼女は赤部選手に開口一番何と言ったのでしょう?」

高田「はい、とても冷たい口調で、

『この髪の毛、私のじゃないよね。誰の?』と言いました」

妻木「さあまずは彼女が強烈(きょうれつ)な先制パンチをお見舞いしました!

これに赤部選手はどう対応するのか⁉」

茲ノ井「取り乱してはいけませんよ。あくまで冷静に対応する事が大事です」

妻木「さあ、ここで赤部選手は何か声を上げたようですが、高田さん、赤部選手は何と言ったのでしょう?」

高田「はい、『ほげぇっ⁉』と言いました」

妻木「『ほげぇっ⁉』と言っちゃいましたか!

あぁっと、ここから見ても明らかに赤部選手は動揺(どうよう)している様子です!

茲ノ井さん、これは赤部選手が彼女の先制パンチをもろに喰らってしまったと見ていいんでしょうか?」

茲ノ井「喰らっちまいましたね。

最初の対応が最も大事だったのですが、意表を突かれたので仕方ないと言えば仕方ないです。

ですがこの次が大事ですよ?ここからすぐに立て直さないといけません」

妻木「赤部選手はここからうまく立て直す事が出来るのでしょうか?

茲ノ井さん、次に赤部選手はどう対応すればいいでしょう?」

茲ノ井「先ほども言いましたが、とにかく一旦(いったん)冷静になって、(たく)みな(うそ)で乗り切る事が大事です。

その髪の毛は母親か妹ものだと、シレッと言えるかどうかがポイントになります」

妻木「さあ赤部選手の次の言葉に注目しましょう。

ここで赤部選手は一旦深呼吸をし、冷静さを取り戻したようです。

そしていかにもシレッとした様子で何か言いました。

高田さん、赤部選手は何と言ったのでしょう?」

高田「はい、赤部選手はシレッとした口調でこう言いました。

『ああ、その髪の毛、俺の浮気相手の母親の髪の毛だよ』と」

妻木「浮気相手の母親って言っちゃった!

茲ノ井さん、ここでまた赤部選手にミスが出ましたね!」

茲ノ井「そうですねぇ。見た目ほど赤部選手は冷静になれていなかったのかもしれません。

浮気相手は要らなかったですね。母親だけでよかったですね」

妻木「ああっと、自分の失言に気付いた赤部選手が両手で頭を抱えています!

そしてそんな赤部選手に彼女が何か言ったようです。

高田さん、彼女は何と言ったのでしょう?」

高田「はい、『は?浮気相手の母親?それってどういう事?』

と、かなりイラついた口調で赤部選手に言いました」

妻木「さあこれはますます大変な事になってしまいました。

彼女は赤部選手の浮気相手の存在をほぼ確信したようです。

茲ノ井さん、これはもう赤部選手は万事休(ばんじきゅう)すという事でしょうか?」

茲ノ井「いえ!そんな事はありません!

ここは開き直って、『その髪の毛は妹のものだ!』と、勢いで押し通すのです!

そうすればまだ逆転する望みはあります!」

妻木「おおっと、そんな茲ノ井さんのアドバイスが届いたのか、赤部選手は開き直った様子で何か叫んだようです!

高田さん、赤部選手は何と叫びましたか?」

高田「はい、赤部選手は『違った!その髪の毛は、俺の浮気相手の妹の髪の毛だった!』と叫びました」

妻木「また浮気相手って言っちゃった!」

茲ノ井「浮気相手と言ってはいけないという意識が頭の中で一杯になって、

かえって口から出てしまっていますね。これはいけませんよ?」

妻木「さあ赤部選手はもはやその場に(くず)れ落ちそうな勢いで両手で頭を抱えています。

そんな赤部選手に彼女がまた何か言ったようです。高田さん、彼女は何と言いましたか?」

高田「はい、『やっぱり敏郎には浮気相手が居たのね!前から怪しいと思ってたのよ!』と言ったようです」

妻木「どうやら赤部選手の浮気が完全に彼女にバレてしまったようです!

茲ノ井さん、こうなってしまった場合はどうすればいいのでしょう?」

茲ノ井「はい、これはもうひたすら(あやま)るしかないでしょう。

これ以上何を言っても火に油を(そそ)ぐだけです。

下手な言い訳はしない方が賢明(けんめい)ですよ」

妻木「おおっとぉっ、そんな中赤部選手が彼女に頭を下げて何か言っています!

いさぎよく(あやま)っているのでしょうか⁉高田さん、赤部選手は何と言っているのでしょう⁉」

高田「はい、赤部選手は

『ち、違うんだよ!浮気相手っていうのは、俺の妹の浮気相手の事で、

その髪の毛は、俺の妹の浮気相手の妹の髪の毛だって言いたかったんだよ!』と言っています」

妻木「下手な言い訳をしているぅーっ!

この世の言い訳とは思えないくらい下手な言い訳です!

茲ノ井さん、この言い訳に点数をつけるとすれば何点でしょう?」

茲ノ井「マイナス二百億五点です」

妻木「天文学的数字が飛びだしましたぁっ!

二百億の後の五点のさじ加減がよく分かりませんが、とにかくそれくらい赤部選手の言い訳が下手だという事なのでしょう!

これは完全に赤部選手のTKO負けであります!」

茲ノ井「『タ(T)コつぼにつまずいて転(K)んで、お(O)尻に有刺鉄線が突き刺さった』負けですね」

妻木「全然違いますがこの(さい)何でもいいです。

とにかくこれで試合続行は不可能となってしまいました。

茲ノ井さん、この状況をどうご覧になりますか?」

茲ノ井「ただただ残念の一言に尽きますね。

残念で残念で、何かもう本当に残念です」

妻木「残念という気持ちを一言では言い尽くせない様子の茲ノ井さんであります。

さあ、これで彼女は試合会場がら退場するのでしょうか?

赤部選手を残して部屋から去っていくのでしょうかと思いきやおぉっとぉっ⁉

彼女の右のラリアットが赤部選手ののど仏に炸裂したぁっ!


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