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──《第壱章》第一話『輪廻転生』──

タケルの意識は闇の中にある間、その身体はとある魔族へと変質し、とある城の中の、ピンク色に淡く輝く魔法陣の中心にいた。

その周りには数人の魔法使い(ウィザード)がいた。

そして彼らの筆頭と思わる男がこの大広間に響き渡る大声で言う。

「……フハハ、これぞ、永年の死者達の願いが籠もる術!さあ、今目覚めし閻魔大王様の次代の御方よ!我らの忠誠を受け取っ……?しっ!?死者ではない!?………コイツは、器ではない!」

その言葉が木霊した後にタケルの身体は魔法によって遠い遠い次元の彼方の外界へと捨てられた。


そこは寒い寒い極寒の世界だった。タケルの身体はそこにあり、まだ前の世界で死んでから、一度も目を覚ましていない。

だが逆にそれが良かったと言えよう。

無駄なエネルギーを消費することなくいられたのだから。

知性持った生き物の、合理性を優先し何から何まで消すことを躊躇わない目つきや姿勢は見るものを恐怖へ誘う。

それを見ずに済んだ事も僥倖であった。

もし、見ていたのなら今頃恐怖と寒さで絶命していただろうから。

そして無意識に這うこと数分、タケルはまだ生きていた。

人間の身体だったならばここまで保たなかっただろうが、一度死んで世界を渡ったとき、身体はとある魔族に変質している。それがタケルの命をつなぎとめたのだった。

そしてタケルの曖昧な視野になにものかが入ってきた。

どんどん近づいてくる。

(ヤダ!来ないで!)

意識は無いが身体が、思う。

そしてとうとう極寒の中に倒れ伏すタケルの目の前に立った。

近づいてきた男はタケルへと手を伸ばす。

そして触れた。

触れられた手はとても暖かく、女の子になりたいという煩悩にしか注目が向いていなかった前世では感じられなかった温もりがあった。

その手はうずくまっているタケルの小さな背中に添えられていた。

それは未知に戸惑う恐怖感を和らげることに成功した。

だか、反動でそれを上回る不信感が本能を刺激した。

その感情(エネルギー)はタケルを飽和して、自らの能力(スキル)

を発動させてしまった。

闊暴(ダスト)ッ!」

それは身体が行った自衛本能であった。

タケルの半径十五メートルの半球形状(ドーム)に風の刃が踊る。

きっとこの人は死ぬ。そのはずだった。

だが、手はまだタケルの背中に添えられている。

もしかして、添えている手がだけが残ってあとは吹き飛んでいるとか……想像するだけで胃酸が逆流しそうである。

だが、そんな杞憂を取っ払うように、凛々しい声が響く。

消滅(フェイヅ)

その一言でタケルの力の暴走は止んだ。

「…良かっ…た。しんで…な……──」

それはタケルを助けてくれた男への言葉だった。

だが、疲れきった身体は本能とともに意識を手放したのだった。

「ほう。やるじゃねーの。やっぱ閻魔族(エンマ)の端くれの末裔とは言え、侮れねーな」

楽しそうに、それでいて何かを危惧するように嗤う男の声を残し、タケルは男に抱き抱えられて吹雪の中を進むのだった。




──某界隈にて

「何故逃した?」

ある玉座が置かれた大部屋に威厳のある声が発される。

その声はどうやら玉座の方からするようだ。

「そっ、それは、……あの者は死んでおらず、貴方様のように閻魔族の力を完璧に制御できないと判断いたしまして……」

その声の主はやけに怯えていた。

彼は閻魔大王軍の中でもかなり腕の立つものだったが、その者の前では足元にも及ばぬようだった。

「チッ……すぐにヤツを連れ戻せ。無理なようなら殺しても構わぬ。今後の不安の種を芽吹く前から駆逐せよ」

「ハッ!」

威勢よく返事する男。

そんなことをよそに、玉座に座すその者は他に聞こえないように呟く。

「ついでに()()も動くようだしな。実に面白い」

その者は部下の無能さに苛ついたが()()が動き、これから面白くなりそうなことに免じて溜飲を下げる。

「フッ、フハハハハ」

楽しみすぎて、笑いまで込み上げてしまったようだ。

そしてその部屋にはその者の静かな嗤い声が、少しの間反響し続けた。

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