──《序章》『死んで………転生!?』──
神楽尊は考える。
何故自分は、男なのかを。
だがいくら探そうと見つかるはずはない。
そうとわかっているのに。
何故かそう、思ってしまう。
そしてぼーっとして……
「おい神楽。おい、聞いているのか、おい!」
「はっ!はい、すみません…」
タケルは授業中にぼーっとしていたため、怒られた。
「また、ぼーっとしてたのか。お前の悪い癖だぞ」
「はい…」
『だって仕方ないじゃ無いか』
タケルは心の中で言う。
『だって、……』
だって?
『だって…だって………』
ん?
『だって、だってだってだって!
女の子になりたいんだもん仕方ないじゃん!』
それは正に衝撃の告白だった。
まぁ、心の中ではあったが。
そんなの口にしてしまえばこの学生人生のあだ名が
オカマになってしまう。
当人が本気でも、周りはそんなこと露知らず茶化したがるものなのである。
はぁ、僕は駄目だ、そう尊はつぶやく。
そして授業に集中しなきゃ、と思うがその願望にやはり耐えられず
また、女の子になりたいという煩悩に浸るのだった。
───放課後
ボケっと歩くタケル。
家はかなり遠い。
だがそれはタケルにとって煩悩に浸れる時間でもあるので、別に家に帰るのに時間がかかることなど気にしていないのだった。
歩くこと十分。
今日は久しぶりに理想の自分姿が思い浮かんだ気がした。
(きっとこうなれたら可愛いな)
それは些細な事だった。だがタケルにとっては大きな自信となった。
未来が持てたと。
それは突然に起こった。
それは唐突すぎて、理解すらできなかった。
理解するまもなく、タケルは死んだのだった。
「たっ、たた、タケル!」
タケルの母親は今、後悔の色に染まっていた。
テレビの中で我が子が鉄筋の下敷きなった報道を見てしまったからだった。
(何故、教えていなかったの?
あの子が生まれたとき、担当の助産師さんが教えてくれたのに…。
何故、彼に、教えられなかったの?
もしも、きちんと話せていたなら、ちゃんと受け止めていられたかもしれないじゃない!
それなのに、どうして?
まだ話せていなかったのに…。
彼が性同一性障害である事を……。)
タケルは性同一性障害だった。だが彼はその事を知らずいた。
だから、これは煩悩だ、ダメダメな僕のせいなんだ、そう、思い込んでしまっていた。
でも彼はそれに思いをふけさせざるを得なかった。
(ちがうの、それは煩悩なんかじゃない!
タケルが、その事で悩んでるのを知っていたのに!
あれだけ女の子になりたいと、ノートに書き殴っていたり、
美容、容貌、体型に関する検索履歴があんなにあったりしてたのに…。
何故、教えてあげられなかったのかしら…。
もしも、きちんと話せていたなら、ちゃんと受け止めて、
考え事なんかせず、ちゃんと、この家に、そして、ここにいるはずだったのに……………。)
そう言った感情が、彼女の中で奔走する。
だか、それを伝えられる日はもう、きっと、こない。
───「んむぅ………。……どこ?………ここ…」
そしてタケルは見知らぬベットの上にいた。