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Case.08『最悪の再会』

 ビルの上、最上階から見下ろす視線。許可は降りたけど、流石にここから銃撃して捕らえる――なんて事はしない。


「……何処へ行く気なんだろう」


 フードの人物は私の視線に気付いて逃げた後、巻いただろうと勘違いしているのか、歩く速度は通常まで戻っている。


「とりあえず、あの人の特徴は調べるか」


 周囲の監視カメラを使い、警察権限でアクセスしていく。これは、俺の()の副次効果。手袋のような違法パーツだけは……俺が作っていない物。まぁ、あまり見せたい物でも無いが。


「……女性、か」


 カメラに映る複数の姿を重ね合わせ、身長を特定。ぱっと見男のような背丈だが、その内状靴を上げて盛っている。骨格も、男のような詰め物で騙しているが、所々の筋肉のつき方や歩き方等は女性。


「……心が女性なら、丁寧に扱え――」


 昔、()()に教わった事を思い出す。あの人はたまにしか来ないけど、物事をしっかり捉えられてるあの人は、今ではこの班のカウンセラー。


「――あれ、こっちを見た……?」


 所々、視線がカメラと合う。そこまで見られる事を意識して動く……?。それは、より一層疑いが深まる行為なのに。

 それにアクセス出来なかった件も、違法パーツの一種ではあるが、ハッキングされる事を考えて装備を使っているのなら、監視カメラをわざわざ見て――私がここにいるような行為を示すか……?。

 ハッキングという物を意識できているなら、カメラで目立つのはご法度と言っても良いはずなのに。


「……やっぱり、監視カメラをあえて見てる」


 隠れていくはずなのに、カメラを確認している仕草。それはカメラの視界ギリギリとかでは無く、中央を捉えた後に目を合わせている。これは……誘われてるか。


「誘ってるなら、警戒しながら――」


 罠使いだったからこそ、罠の危険性は分かっている。相手の思考を読むか読まれるか、これが罠使い同士なら――頭脳戦だ。



 辿り着いたのは薄汚れた廃墟ビル。窓ガラスがあった壁は全て割れ、地面には粉々のガラス片が突き刺さり天然のマキビシ状態。


「こんな所、あったのか」


 本来なら取り壊されているはずの建物。既にコンクリートの基礎しか残っていない、ボロボロで鉄筋がうっすら見えている場所だ。


「……まぁ、近々取り壊されそうだけど」


 良く見ると解体用の重機が控えており、看板も『取り壊し注意!』との事。まぁ、関係無さそうだけど――


「よく来たね。お前を待っていたよ、京……いや、キングって呼ぶべきかな?」


 廃墟から見下ろすように現れたのは、それとなく女で遊んでいそうな外見を持った男。目は茶色で、髪は黒。でも……あの目は人を人として見ていない物。


「……何で俺の名前を知っている?」

「さぁ? 考えなよ、それくらい」


 考えるって事は、知っている人間。誰だ……こんな事をする奴は一体……。


「まだ分からないのかい?」

「だったら何だ。俺を呼んで何が――」


 俺の言葉を無視して、手を伸ばす男。そこから――()()()()()()()()()()()()()()()()()


「お前――何で!?」

「……当時、クランのメンバーだったお前が使っていた、罠を作る為の手袋を応用してこれを設計した。便利な物だな、()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()

「……フォッグ」


 VRMMO『エルドラド・クロニクル』。再度言うが、このゲームはオリジナルの武器を作り上げる物。そして、このゲームは()()()()から終了した。


「聞きたい事が沢山ある! お前はどうしてこんな事を起こした! 答えろ!」

「答える義理はないだろ? あの時と同じさ。俺がお前の気持ちが分からないように、お前に、俺の、何を知っているんだ? 教えろよ」


 ……俺が――僕が、この警察に入った訳。そして……僕が絶対許さない相手で、かつてのゲームで親友だった存在。


「何で、何でだよ(たすく)! お前は何がしたいんだ、答えてくれよ――」

「答える答えないの話なのは、もうとっくに過ぎてるんだ。そして今回は顔を見せに来ただけ。宣戦布告だ、京」


 精製したナイフを僕の足元へ投げつけ、男はその場を去っていく。


「おい、待て――」


 追いかけようと一歩進めば、左右から飛び出す火薬と鉄の玉。破裂音と共に襲いかかる弾丸は――ブレイブによって首元を引っ張られ、ギリギリの所で当たらずに済んだ。


「丞! 答えろ、丞!」


 僕の呼び声も、何も届かない。僕はただ、知りたかっただけなのに……。自分が作った物で殺人を行うかつての親友の真意を、あの爆破の側で微笑んでいたお前の心を――相談さえして貰えなかった、僕の弱さを……ただ、知りたかった。


「答えて、くれよ――」

「落ち着け、キン――長通君!」


 突然トラウマを抉られ、どうしようも無く喚く僕と、何が起こっていたのか分かっていない日尾野。そんな僕らを、真っ青の空に登る太陽と――予報外れの天気雨だけが見ていた。

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