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Case.07『オフの日』

「――と、言うわけで遊びに来た訳だけど」

「この二人で、何すれば良いんでしょうかねぇ……」


 署から追い出されるように早期で切り上げられ『余った時間は二人で遊べば良いさ』と遠谷。確かにまだ昼もちょっと過ぎたぐらいで、遊ぶには良い時間。でも……好みも分からない人といきなり遊べと言われ、何をすれば良いのか……。


「と、とりあえず……適当に歩こうか」


 日尾野の先導で歩き始める。だが――


「やだ……あの人イケメンじゃない?」

「身長高い……」

「モデルさんかな」


 周りから聞こえる声、それは全て日尾野へ向けられた物だ。それもそのはず、署内でイケメンランキングなんて作ったら真っ先に一位として上げられるぐらいに、日尾野の顔は整っている。おまけに性格は誰にでも手を貸すタイプで、それを悪意や下心無しで犯罪者にもやりだす様はまさしく『仏の日尾野』だ。そして何よりも――


「……何食ったら、こんな身長高くなるんだよ……」

「長通君? 何か言いました?」

「いえ、何にも」


 高身長……僕が一番欲しかった物を持っている。ドラマや特撮の性質上、主人公は必ず美男美女を取り揃えて……その大体が高身長。必然的に、その役の影武者として行うスタントマンやスーツアクターも同身長で行かなければならない。そうなれば、低身長の僕が行きつく先は悪役……。


「……はぁ」


 そして、スーツアクターの主人公側はスマートに人型なので身長を誤魔化せないのに対して、逆に怪人側は装飾等の都合上きぐるみのような物になりやすい。その結果、例外はあるものの大体は身長によって悪役と主人公に別れてしまう。


「身体上の都合だから、どうしようもない……」

「急に暗い顔して、本当に大丈夫かい?」


 変えられない物を見て落ち込む僕に、相変わらず手を差し伸べようとする日尾野。そこに――突然の爆発音が轟いた。


「――!?」

「何事だ!」


 爆風が髪を揺らし、爆心地から逃げるように人が流れていく。


「長通――キング! 行くよ!」


 胸元の手帳が光り、それが緊急の合図だと告げる。日尾野は躊躇無く爆心地へ人を掻き分けて走り出し、僕は――


「せ、せめて顔を隠させて――」


 己を隠す為に、手頃な仮面を探していた。



「遅かったじゃないか、キン……何だいそれ?」


 少し遅れて爆心地へ到着すると、そこには既に捜査を開始していた日尾野――ブレイブの姿があった。


「――顔がバレたら、色々面倒だろ?」


 ヘルメットが無い代わりに、紙袋に穴を開けて臨時の仮面。それでも仕方が無い……。


「それで、何があったブレイブ?」

「……見ての通りだよ。車が爆発した」


 爆発地点は車。その車は跡形も無い程粉々に砕け散り、焼け焦げた黒い鉄の残骸だけが残っている。


「一体何があったのか……」


 考え付く限りの予測を立てるも、あまりに情報が少なくて頓挫。車が爆発した割には、()()()()()()()()()()()()()()()。ただ、無人の車が破裂しただけ……。


「キング、これ――」


 車の残骸を漁っていたブレイブが見つける、車とは違う物。それは――弾のような鉄の欠片。


「それ、見せて!」


 銃の専門は半分俺、だから――俺の知識を総動員して、この弾を判別する。


「……これは」


 弾丸の口径は、弾そのものが欠けている為に不明。まぁあの爆発で原型を留めている弾は、それは弾じゃなくて核シェルターの欠片を撃ってるような物、ここの情報は重要視していない。

 弾の形は先端が丸みを帯びておらず、尖っているのでアサルトかスナイパー。

 発砲音は無し、と言ってもサイレンサーとある程度の距離なら消音可能。……だが、最大の疑問点として……弾の影は一瞬も無かった。周囲の監視カメラにアクセスしても、弾の影は少しも写されておらず――目撃者もいない。サイレンサーはその消音の為に火薬量を調節して、亜音速をキープする事で空気の破裂を無くす物……なら、見えるはずなのに。


 そうなるとアサルトライフルの線が強くなるが、そんな物を持ち運ぶなら偽装が必要。ギターケースなり段ボールなりで隠すが、それはそれで目撃者が現れるはず。でも、それは同じく監視カメラに写されていない。だからおかしい……この弾丸は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「どうだい、キング?」

「……野次馬が多い」


 映像も目的も、野次馬というノイズが遮ってくる。網膜にある『コンダクター』へ警察権限でハッキング出来たとしても、今回りにいる人間が目撃者かどうかを判断する手段は無い。一度アクセスするにも、もはやこの量……正直言って無理だ。


「――ん?」


 アクセスする人間の中に、偶然なのか――()()()()()()()()()()()()()()()()()。監視カメラにも写っているので、ここの目撃者なのは確定。ただ……どこか引っかかる。


「……っ」


 俺の目線に気付いたのか、謎の人物は現場から離れていく。アクセス出来ない事は多くは無いが存在しうるし……その時は大体不具合で、後に見直せばアッサリと権限を使えてしまう。だから怪しむレベルでは無いんだけど……あの人を逃して良いのか……? まだ勘の領域を出ない状態で、逃げ行くあの人を追っかけて、本当に良いのか……?。


「――ブレイブ、この現場頼まれて良い?」

「どうしたんだい?」

「勘の域を出ないけど、犯人を見つけたかもしれない」


 素直に今持ちうる情報をブレイブへ伝える。この時間も正直惜しい気がするが、人手が増えるのなら好都合だ。


「……自信は?」

「無い。だけど、ここを逃せば不味いような――嫌な予感がする」

「じゃあ――行ってこい。責任は俺が持つ」


 警部補の許可を取り、手近にある建物へ走り出し壁を登る。フードの奥に見えた、特徴的な赤の髪を――絶対に逃しはしない。

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