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Case.51『予防策』

「――なるほどねぇ……それで、貴方達がここへ来たのね」


 事情を話すと、納得した様子の家形。そして、


「謝りに来た訳じゃ無かったんだ……」


 ついでと言う真実を知り、少し落ち込む天羽。


「謝りたかったのは事実なので……そう落ち込まれると、僕も困ります……」

「分かってるわよ、そのくらい」


 良いきっかけが見つからず、謝るタイミングを逃した結果が天羽の来なくなった理由。……あの様子を見るに、もう大丈夫そうだが。


「……丁度、両親から刑事へ戻れ! ってうるさいし、協力するわよ」

「アタシも、今回は協力してあげる」


 話を聞き、協力を約束する二人。


「……協力は得ましたが、どう侵入するかは――」

『そこは私に任せな』

「あらぁ……汐華ちゃんもいたの?」

『まぁ、こっちも事情があるから』

「……事情、ねぇ」


 汐華と家形の関係性は分からない。何となく隠し事はある気はするけど、あまりに尻尾が掴めていないのと……一応の同期を疑いたくない目から、二人を意図的に意識から外している。

 まぁ隠し事って言っても、天羽と兎川のような小さな隠し事だろうし……考え過ぎるのも良くないか。


『私の事は置いておくとして、自殺した場所の検証は十分済んだ。その後の特殊清掃員として侵入する。その手筈として、栞のお店へ連絡を付けておいた。そろそろ――』


 丁度話をした段階で鳴り響く、一般の電話。天羽は即座に理解を示し、店の主人として電話に出る。


「……先にこっちでも話を進めておこう。清掃箇所は?」

『落下した地面である私達のいる場所と、屋上の清掃。屋上に遺品が無い事は確認済み。ただ、このビルのオーナーが、少しの跡を残したくないと……アンディの社長の反対を押し切って清掃を約束づけた』

「……断る事の方が妙ですね」

『多分、屋上には何かしらの証拠……もしくは、よからぬ跡が残されているかもしれない。ただ、それを黙って見ている相手なのかは、分からない。屋上に行く人は、十分警戒してくれ』


 屋上をひた隠しにする理由……。怪しいには怪しいが、多分屋上には何もないような気がする。あくまでも勘だが、何というか露骨過ぎて……()()()()()()()()()()()()()()()と言っているように思えてしまう。


「……屋上の他に、清掃箇所はありますか?」

『一応、落下している途中に壁とぶつかった痕がある。大体……30階辺りかな? ()()()()()()()()()()()()()()()()()。後は、分かるよね?』

「……はぁ、無茶に無茶を重ねますね。汐華さん?」

『長通君の性格なら、こんなお膳立てしなくても勝手にやるでしょ?』

「まぁ、そうなんですが……」


 彼女の企み。それは、30階の清掃中に行う潜入作戦。

 地面は建物の中に入れず、屋上もエスカレーターで案内され、きっと監視がついている。当然30階にも監視は付きそうだが、屋上という出入り口が一つだけの場所と違い……複数の侵入路が存在している。

 そして、屋上との最大の違いは――死角の有無。それを利用できたら、裏事情や隠された物が見つけられるかもしれない。……まぁ、難易度は高いが。


「そうなると……色々と必要になるかも――」

「アタシの知らない間に、長通ちゃんが仕切るようになるなんて」

「……前まで仕切っていた汐華さんと家形さんが居なくなって、日尾野警部補も警察の立場上あまり肩入れは出来ない。そして、残ったのが僕ってだけですよ」

「その割に連れのお二人は、長通ちゃんを信用しているわよ?」

「――勘違いはやめてもらって良いです? 何が好きで電脳世界に精神ダイブマンやった奴を信用するんですか」

「勝手に変なあだ名を付けるな兎川」


 そういえば、七人だった頃は……汐華と家形を中心に二班で捜査していた。まぁ、居なくなってバラバラになったんだけど。


「――それよりも、先に準備が必要なんでしょ?」


 少し脱線した話題を戻す神白。


「そうだった。えーっと……掃除用品かつ怪しまれないように――」


 そうして、必要な道具を述べていく。と言っても、大体は……偽装用の清掃用品を作る作業になるが。


「――分かりました。長通先輩の言った物をこちらで用意しておきます」

「ありがとな、天羽」

「これくらいはやらないと、天羽洗店の名が廃ります! 親の物ですけど」

「それで、僕は何をすれば?」

「えーっと――」


 そして、其々の役割を告げていく。流石に清掃というあからさまな物に、証拠は無くとも警戒はするだろう。なら、相手が起こす妨害を予め予測しないといけない。

 後は、こちらも怪しい動きをすれば確実に警戒心を強めるだろう。

 なので、効率化も兼ねて清掃箇所を分ける。


「――って訳だけど、出来るか?」

「……変な事頼みますね。まぁ、可能ですが」

「頼りにしてるぞ、兎川」

「そうなると、私は多分……同行よね?」

「まぁ、そうなる。偽装の鍵は()()だ」


 地上の掃除には、最も人を置かないと怪しまれる為、二名――兎川と、天羽だ。万が一も兼ねて、一番確保しないといけない出入り口に、強力な近接戦闘要員を置く。そうすれば、一番最悪な状況である……身バレからの出入り口封鎖は防げるはずだ。

 屋上には、家形。監視員の性別がどちら側でも、話術という武器と器用さによる下準備――この人以外の適任者がいないぐらいだ。同時に上と下で連携を取り、天羽と兎川のどちらかが中層にいる僕達へ干渉出来るようにする。そうすれば、ボディチェックは意味を成さない。……あるかは不明だけど。


『君達の欲しそうな素材は大急ぎで用意するから、後で合流しようか』

「日尾野警部補……やけに静かだと思ったら……」

『仕方ないだろ! 独り言みたいに街中で喋ったら不審者だ!』


 そして、日尾野警部補は先に車で動き回っている。まぁ通信は繋いでいたし、汐華もいるからだろう。どの道、僕の手で作っても維持が大変で消え去るから、現実の物を用意した方が都合が良い。


「……それじゃ、日尾野警部補が到着次第――」


 警察という枠組みから外れた、悪役らしい仕事の開始だ――。

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