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Case.41『クソ野郎』

「――どけぇ!」


 続々と集う人の波を掻き分けながら上へ走り出していく。ゴールだけを見据えて、ただひたすらに……駆け上がる。


「アイツを止めろ!」

「――ハッキングの応用、電気ショック!」

「ガ――」


 電力を大量に供給できる装備だからこそ出来る、ハッキングした『スーツ』へ流す――()()()()()。出力は調整し、なるべく直流にはしないように、気絶程度で留めて――


「いっ!?」


 それでも、腕は焼ける。少し焦げた皮膚の匂いで、自身の腕の状態は見なくても察せた。

 当然と言えば当然だ。このハッキング機能は、本来攻撃に扱う物じゃない。そこへ無理やり電気を過剰に流し、相手を気絶させる程度の電力を供給しつつ調整して排出。……でも、


「……とりあえず、()()()()()()()()()()()()()()()


 やるだけの価値はあった……と、思いたい。少なくとも、時間稼ぎにはなったはずだ。


「急ごう」


 でも、今は確認する術が何も無い。だから、今は走る……地下の奴らが倒れるよりも先に――




「止めろ! 止めろ!」

「マジか……」


 階段も中頃。駆け上がる階段の踊り場から少し見える窓には、既に空が見えている。そして、上に行けば再度現れる人の群れ。……どれだけこのビルに人がいるんだ。


「電気――」

「遅い!」


 加えて……階層を上がれば上がる程、技のキレと速度が全体的に上がっている。側近に強い人間を置きたいんだろうが、頂上まで上り詰めた時の護衛は……あまり想像したくはないな。


「当たらな――」

「置き土産だ!」


 だが、今の所は鉄パイプ程の人間はいない。交差するように烏兎流の技を一つ躱し、置き土産であるスタングレネードで周辺ごと巻き込んで突破出来る。更には、


「眩――」


 僕の後ろで破裂するそれは、前方から向かって来る敵に対して最も効果的だ。僕は光の影響をあまり受けないので、耳栓だけで充分。後は、


「壁を走る!」


 階段横にある壁を走り、段差で怯んで動けない人壁を越える。本当は確実に気絶させる電気ショックで周囲を止めたいが、ハッキング作業と電力貯めの隙がもう無い。

 裏で貯めようにも、それをしている間に走り抜けた方が早い。更にはハッキングしようにも、上から現れる人の情報更新に追われ、対象指定が間に合わないのが拍車をかけている。


「……しんどい」


 一体どれだけ潰したのか分からないが、少し目線を上に向ければ……人の群れ。


「――あれは」


 そんな中、周囲とはまるで違う装備をつけた数名の人物。武器は無く丸腰で――表情は嫌がっている。更に、あの装備を付けた周囲に寄る人がおらず、不自然な空間が作り上げられていた。


「まさか」


 胴体に備わったチョッキのような物には、よく見ると――発火用の導火線。


「ああああああああああ!」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい――」

「嫌だあああああ! 助けてくれええええ!」


 考える間もなく僕へ飛び込んでくるチョッキの人達。……本当に黒幕は、僕の神経を逆撫でしてくる。


「瞬間的、()()()()


 一瞬で爆弾を解除出来るほどハッキングは万能じゃない。だから――次の手段。


「身体補助・()――」


 一瞬で解除出来ないなら、身体を一瞬に近づければ良い。元々、蹴りや拳の威力を一瞬だけ向上させて殴る物だけど……僕の眼込みなら――


「凝視しろ、全部を!」


 ぶっつけ本番。凝視し全てを遅く見えるようにする瞳と、一瞬だけ身体補助を究極まで引き上げる機能を掛け合わせた……擬似的な時止め。

 本来なら自身の身体も遅くなる物を、強制的に加速させて――動く。




「――ああああああ……あれ?」


 飛びつこうとしてきた人達は、そのまま踊り場まて倒れ、


「爆破出来ないだと!?」


 起爆装置を持った男は、何度もボタンを押しても――脱がされ階段へ落下していくチョッキは爆破しない。そして、


「――電気ショック!」


 加速的な空間で計算とハッキング処理を終えた僕は、着地と同時に電気を流していた。


「――っ!?」


 全てを終えた後に走る激痛。凝視しすぎた目の奥から、雑巾のように絞られる痛みが全身を巡る。


「眼が……痛え……!」


 ドロっとした涙が噴き出し、拭う色は赤。足も着地時に軋み、チクチクした鈍痛が身体を突き刺してくる。

 ……やり過ぎの代償。僕にとってはスローモーションでも、現実の時間では瞬間で移動している。その間目を開き続ければ、眼球は大分痛むだろう。

 それに、ゾーンのような現象でも……限界は存在する。どちらかと言えば『タキサイキア現象』の方が近しいか。見る以外を全て意図的に消し、脳みそと瞳だけを動かす事で――世界が止まったと錯覚する。あっちは脳の誤作動だけど。

 後は『コンダクター』で自身の身体をハッキングし、身体補助だけで身体を動かすだけ。


「……やり過ぎ注意だな、これ」


 瞳から流れる血も落ち着き、再度立ち上がる。……完全に痛みが無くなっている訳じゃないけど、あの状態で動かなければまだ大丈夫そうだ。


「……進もう」


 少し震える足を叩きながら、上へ歩く。天井が見えて来たし、電気ショックの範囲的には……もう敵はいないだろう。


「……ここか」


 最上階に上り詰めると、目の前に豪勢な扉。いかにも、金持ちが考えていそうな……ド派手で悪趣味な、クソ扉。その扉を開くと――


「……ようこそ、最上階へ」

「よう。クソ野郎の顔、拝みに来たぜ?」


 そこには白い髭を生やし、どす黒い眼をした細身の男が待ち受けるように座っていた。

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