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Case.35『脱兎』

 入ってくる映像の奔流。逆再生される人影を追い、見つけた――大剣を持つ男の姿。


「ラビットは……ここで刀の男と戦闘を起こした」


 良く見れば周囲に小さな傷跡。どちらかの切っ先が壁や地面を切り裂いた証明となる、刀傷。


「……向こうへ飛んだ!」


 映像のマーキングは済んだ。後は、これを解析しつつラビットの行方を追う。刀の男が厄介なら、その事前情報はあるだけかき集めないと。


「……ここでもやり合いながら移動している」


 映像は監視カメラを3Dにした物。高速で飛び回るラビットに合わせた物では無いので、ある程度飛び飛びになっている。一応刀傷も相まって、映像の無い部分の予測は出来るが……ここからちょっとでも脇道へ逸れると――


「……見失った」


 当然、映像が無くなる。


「屋根上で戦うんじゃねぇよ、全く」


 戦闘地点に文句を言いながら、痕跡を追っていく。屋根上にわざわざカメラ付ける一般宅は無い。……そんな場所で戦われると、こちらが困るんだが。


「……ん?」


 そして監視カメラの映像が無くなり、切り傷のみを頼りに動くと――突然傷の種類が変わる。


「……一人増えた?」


 それは剣で付けられた類では無い鈍器によるへこみ。それと床には赤い物が滴り落ちた跡……。


「不意打ちなのは確定……だけど、誘導した……?」


 クソッ、映像が有ればどっちが切った切り傷なのかが分かるのに……。傷が判明すればどっちの血なのかが分かり、ここまでの映像が残されていたのなら、誘導されたか否かも分かる。


「誘導されて不意打ちなら、ラビットを捌ける腕かつ計画的犯行。動機……あの刀野郎が煽っていた所を見るに、あり得る」


 あの事件が前振りで、全部ラビットに殺意が向いているのなら……可能性はある。

 わざわざ装甲車という違法パーツを使っているのなら、何で逃げ回っていたのかが不明だった。あの火力があるなら、恨みのある場所へ突っ込むなりの選択肢はあったはずだ。


「……この事件そのものがブラフだとすれば……()()()()()()()()かな」


 装甲車で走り回るテロ行為。愉快犯だと思ったが、何故か乗り手全員は俺達へ歯向かい……素直に捕まった。

 ……最後だけがおかし過ぎる。愉快犯との犯罪思考とまるで違う。愉快犯は、その行動による迷惑を考えずに行う人間。他人の反応を見て楽しむ、寂しがりの極点のような存在だ。


「……愉快犯に見せかけた、知能犯」


 殺人等の大きな踏み外し後に元に戻る愉快犯とは違い、知能犯は初めから犯罪意識が存在している。

 愉快犯は求めた結果犯罪に手を染め、知能犯は犯罪に手を染めた結果を求める。

 俺が戦った爆弾魔は典型例な愉快犯。


『雑魚が粋がるな!』


 子供かつ、相手を見下す思考から……大人より僕の方が優秀と考えかな。

 流体操作の違法パーツが先なのか、爆弾製作が先なのかは知らないが……それが出来たからこそ、自身が特別と感じたんだろう。

 そして、誰かに吹き込まれたのか装甲車に乗り込み……ああなった。

 俺を吹き飛ばした時に少しばかり焦りも見えていたのは……実際に人を殺した事が無かったから。あの時は煽りに対する怒りの方が高そうだったけど、大体愉快犯はやり過ぎを経験して正気に戻る。今頃、やっていた事の大きさに気付いてそうだ。


「……傷が消えた?」


 突如として痕跡すら失う。ここから、機動力を無くしたのか……?。更には、消えた刀傷の代わりに現れた血痕。不意打ちと考えた傷とは違う、擦り傷とは思えない出血量の物だ。


「血痕は残ってるから追えるけど……」


 血の跡は地面に一本線を作っているが、これもまた違和感。

 それは、一直線が過ぎる。当然ブレてはいるし、血が一定という訳でも無い。だけど……戦闘中のはずなのに、()()()()()()()()()()()()……?。


「少なくとも壁や切り傷近くには、形を作った血痕があるはずだよな……」


 例えば腕を怪我したとして、その状態で腕を振るえば散ったような血痕が現れる。

 例えば足を怪我したとして、その状態で歩けば足跡のような血痕が残される。

 だけど、この血にそのような特徴は無い。手足は除外されたとして、残されたのは胴体と頭……と言いたいが、結局足へ流れるので足の怪我と同義になる。


「ラビットの性格上、一撃貰って降参はしなさそうだし」


 負けず嫌いかつ、諦めの悪いあの男が降参……。


「択は二つだけど……両方に予防線を貼っておこう。この血の付け方は罠だろうし」


 一つ目の可能性は、人質。その場にいた人物なのか、血縁関係か、知り合いか……誰が人質かは分からないし、ラビットとは公務以外で会った事が無い。だから考えるだけ無駄だとして……そうなった際のラビットの行動を考えるべきだ。


「……敵対する未来しか見えない……」


 ただ、無抵抗で連れ去られる事に同意した存在。刃を立てられたのなら、俺に剣を向けるだろう。


「ラビットと戦う可能性も考えつつ――」


 二つ目の可能性、一撃で気絶まで持っていかれた。

 俺やゼロの弾丸やブレイブの警棒。気絶させる手段は多いし、それを犯人も使っていたのなら違和感は無い。


「でも、そうなると血痕は何故だ……?」


 ラビットに対して気絶させるのなら……不意打ちの一撃を成功させるか、動きを鈍くさせる為に身体を傷つけて気絶させるかの二択。

 身体を痛めつけたのならもっと血痕は広がっているはずだし、不意打ちなら血痕そのものが無い。……と言っても、気絶させる道中で傷ついた可能性もあるので、全部を捨て切れる訳でも無い。


「そうなると、ラビットは……倒れているはずだ。気絶を回復させる手段も無いし……運ぶ手段が必要」


 気絶or敵対……どっちにしても面倒臭いなぁ。


「まぁ、あえて相手の罠を踏まなければ始まらないし、行くか……」


 多少面倒な事になったが、知能犯という確証は取れた……。後は、詰めていくだけだ。

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