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Case.16『囮調査』

 カフェテラスの一席、コーヒーを飲みながら角で早めの昼食。理由は簡単――


「申し訳ありません、遅れました!」


 一足先に学校から少し離れた場所であるここで、二人を待っていた。


「そんなに急がなくても……」

「早くしないと学校側に裏工作されるって兎川さんが――」

「そうです。……学校は、保身の為に噓をつくので、アリバイを立てられる前に急がないと!」

「焦るのは良いけど、策無しじゃ噓を付く猶予を作られるぞ兎川」


 少しばかり気が立っているのか、兎川は急いで学校へ向かおうとする。だが、今行っても誤魔化された上で、警察が来たと口封じされてしまう。更に、この事件は既にメディアによって公開され、犯人の名前は公開されている。そんな状態なので、現場を確認出来る時間も回数も限られてしまう。


「だが、急がないと……って何してるんだ長通?」

「僕に作戦がある。それは――」


 作戦、と言っても潜入任務。歳的にあまり学生に見えない僕と日尾野が警察として、そして残り二人は裏側から潜入し、準備。僕達警察の介入は、学校側も予期していない事態だ。なら……真犯人がいるのなら、絶対に動きがあるはず。その為に、


「――という作戦で、今作ってるのは()()かな」


 何重にも張り巡らす準備。使わなければ御の字、もし使う時があればそれはそれで対策が出来る代物……まぁ、罠なんだけど。


「長通、お前それ本当に大丈夫なのか? 違法パーツじゃなくて、現実で罠を作るなんて」

「大丈夫。殺傷能力は全くない、ただの猫だましだから――」

「って言いながら火薬入れ始めてる京君に不安しか覚えないけど」

「爆竹だって火薬入れてるじゃないですか!」


 若干騒がしくしながらも『蒲桜高校(かばざくらこうこう)』へ向かう。……違和感が嫌な予感として的中しなければ良いんだが――



「――貴方達は?」

「警察です。先日の事件についてお話をお伺いに」

「もう犯人は捕まったんでしょう?」

「えぇ。ですが供述だけですので、現在捜査を続行しております。ご協力お願い致します」


 学校という門に一歩踏み入れようとするが警備員に足を止められ、その小さな騒ぎを聞きつけたのか、奥から先生と思わしき人物が姿を出す。


「何事ですか?」

「校長先生、こちら警察の――」

「日尾野です。羽飼祐介さんについて、お話をお伺いに」

「……分かりました、こちらへ」


 校長と呼ばれた女性は、僕達を校長室まで案内する。とりあえず、第一段階は突破した。そもそも門前払いをされたら、僕達は何も出来ないから。


「……それで、何用でございますか?」

「羽飼祐介さんについて、噂程度で良いので何かご存知ありませんか?」

「それは既に警察へ話しました。何度来たとしても、同じ事しか話せませんよ?」

「……現在、羽飼さんは容疑を認めております。ですが、それは供述だけ。ですので、小さな事だけでも良いので、何かございませんか?」


 日尾野の警察手帳を見せ、本物の警察と確認しながら第二段階。正直、新しい情報なんて出る訳が無い。『申し訳ございませんが、警察に話した事が全てです』か、本当にどうでもいい情報を渡されるかの二択。だから、ここで行う行動は――盗聴とカメラを仕掛ける事だ。


「――そうですねぇ……申し訳ございませんが――」


 会話の最中、仕込みを開始。事前に学校の構造を見て校長室の広さと高さを推測し、仕掛けるべきマイクの本数は分かっている。仕込むべきは四箇所、出来るだけバレない場所が好ましい。一つを椅子に仕掛け、口の中で歯を鳴らし神白に合図。後は――


『……大丈夫、音は拾えてるよ』


 音質等をクリア出来たら、一箇所は完了。一度ここを訪問している神白は、潜入には向かない。だから、別の場所で人の出入りを監視かつ、機材の最終調整を頼んでいる。


「――そこを、何とかありませんかね? 例えば――」


 日尾野は会話を引き出そうとするフリをして、僕の姿を隠すように合わせつつ注目を奪っていた。とりあえず、注目を集めるには限界があるので……急ごう。

 順調に二箇所目である植木鉢の裏と、三箇所目校長のテーブルの裏を終わらせ、最後の場所。本棚の奥に隠すマイクを仕掛ければ――


「――あれ? もう片方の人は本にご興味が?」


 会話の隙間、色々と限界が訪れていた所で校長に近づかれる。……不味い、目の前にある本は考古学の本、幼少期から本は好きだけど……この類までは網羅出来ていない。


「あー……はい。この本、良いですよね」

「分かりますか? 考古学、昔の人類が残した異物、古代のロマンが詰まっている存在なんですよ!」


 ……やばい。分かると言ってしまったがゆえに、校長先生のスイッチが入ってしまった。


「オーパーツと呼ばれる、当時の技術じゃ到底再現出来ない代物も良いですよね――」


 話が込み始めた校長先生。この状態で仕掛けるのは無理なので……歯を三回鳴らす。保険の一つを起動させる合図だ。


「昔なのに今という――!?」


 小さな炸裂音。火薬で作っていた、いたずらに使われる殺傷能力の無い自作の爆竹だ。


「……申し訳ございません、少しばかりお待ち下さい」


 流石に学校内で爆竹騒ぎは、校長も動く。警察が滞在中なら、尚更動いて校長らしさを見せなければいけないからだ。


『……よし、大丈夫だ。見つからない場所まで移動出来た』


 破裂させた主は兎川。作った保険を渡し、歯を三回鳴らした時にどこでも良いから火をつけて逃げろという物。


「――よし、最後も仕掛け終わった」

『音も正常だよ』


 校長が出向いている間に全てを仕掛け終わり、第二段階を終了。……僕達の出番はここで一旦終わりだ。


「お待たせ致しました……って、帰られるのですか?」

「そちらも何やら忙しくなりそうですので、ここら辺で退散致します」

「申し訳ございません……うちの生徒が騒ぎを起こしてしまい……」

「いえいえ、それでは――」


 学校から外に出て、警察という存在を彼らの眼から消す。ここからは神白と……特に兎川が鍵になる。警察役が消えた事で起こる……裏の顔を確認する為に――。

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