表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/52

Case.09『望まれない者』

 青空の中に降り注ぐ雨。どしゃ降りのように降り注ぐ水は、要らない僕の感情を洗い流してくれた。


「……僕は」


 丞のいた廃墟を見つめる――ただ彼は既にいないし、今更追っても罠がある。だから、今は見逃すしか出来ない。


「長通君、何があった?」

「……あの人を追っかけていたら、罠に引っかかってしまって」

「――本当に、それだけかい?」


 日尾野の言葉が胸に突き刺さる。だけど、今僕がテロ組織に親友がいた事実を教えれば……感情的にならないよう、捜査から外されてしまう。それだけは……避けないと。


「本当にそれだけだよ、日尾野警部補」

「――そうか」


 爆発の音を聞きつけ続々と警察がやってくる中、僕達はただ……黄昏ているだけだった。



 警察から事情聴取を受け署から再び外へ出た頃には、空は赤く染まりどしゃ降りだった雨は噓のように晴れていた。


「……帰ろう」


 雨が蒸発し、アスファルトの匂いが立ち込める歩道。まだ濡れている地面を踏めば、ぬかるんだような音を立てていく。


「ちょっと待ってくれないか、長通君?」

「日尾野警部補――」


 背後から現れた日尾野。そこに愛車の姿は無く、どこと無く決意を示したような表情をしている。その顔で――昼の件だとすぐに理解出来た。


「何ですか? 事情聴取は――」

「付き合って欲しい場所がある」


 いつもの笑顔とは違う、本気の眼差し。断る事も許さないような日尾野の気迫は、気を抜くと飲まれそうになる。だけど、僕も聞きたい事が残っているから――


「良いですよ。その代わり、僕も貴方に聞きたい事がある」


 承諾の返答。無言の圧力によって空気が貼り詰める中、何も言わずに背中を向け歩き出す日尾野。……どうやら、色々と――本気らしい。



 連れられた場所は、あの時の廃墟。色々調べた後、何も無いと判断され警察はもう撤収している。元々、あんな爆発が無ければ人目に付かない場所だ……警察の手が無くなれば、無人になる。そして、そんな場所に連れられたって事は――やる事は一つだ。


「……もう一度聞く。この場所で、何があった?」

「言ったでしょう? 何も無かったって――」


 反応よりも前に胸倉を捕まれ、コンクリートの柱まで詰められた。だけど、


「違うだろ? 長通君、何が――」


 その手を捻り、組まれた指を引き離しつつ無防備の腹部に蹴りを入れる。


「ガハッ」

「何があった? それはこっちの台詞です! ……何で()()()()()()()()!」


 最初は、間違いだと思っていたけど――あの時、日尾野がここに来た事で……疑心に変わった。


「裏切る……? 僕がそんな事――」

「じゃあ何で()()()()()()()()()()!」

「――っ!」


 そんな事は思いたくなかったけど、一度芽吹いた疑いという花は――枯れるまでその花粉を周囲に巻き続けていく。


「最初に車が爆発した時、怪我人が一人もいませんでした。あんな爆発音がしたのに、鉄片が一つも周囲に漏れなかった。まず、そこから貴方への疑いが始まった」


 きっかけは、あの爆発音。車を粉々にする威力を持つ爆破は周囲に損害という物を生む。それなのに、怪我人が一人もいなかった。たまたま人が居ないなんて事はありえない、なんせ――人込みを掻き分けて事件現場に向かったから。


「愉快犯の可能性も考えました。ですが、そうなると車を破壊出来る威力は出ない。車だけで、あの威力はおかしいんです」

「それが裏切りとどう繋がる?」

「なら、日尾野警部補が見てないとおかしいんですよ。――別の部品、()()()()を!」


 車を漁っていたのは日尾野。なら、見つけてないとおかしいのだ。……なんせ日尾野は車好きで、()()()()()()()()()()()()()()()()。別に発火装置なのかを判別する必要は無い。僕が爆弾や罠を使う事は『セブンヴィランズ』内では周知の事実。なら、弾を見せた時と同じように見せるのが行動心理。


「発火装置を見つける見つけないの問題じゃない。あの場所から車の部品か車の部品じゃないか、それを分けるのは容易――ですよね、日尾野警部補」

「……黒こげで、分からなかったとしたら?」

「それはあり得ない。それなら、何で逆に――銃弾だけは見つけられたんですか?」


 黒こげで何も分からないのなら、あの場所から小さな弾を見つけ出せた行為の否定へと繋がる。何も無い鉄くずを弾として拾った訳じゃないのは、僕の網膜が証明済みだ。


「それは……」


 少しばかり狼狽える日尾野。


「……ここで起こった時もそうです。何で、あの場所にいたんですか?」


 その問いかけに返答は無い。裏切り者――僕をあそこに誘導する為には、少なくとも僕を連れ出す必要があった。


「日尾野警部補。貴方は――」


 何も答えず下を向く日尾野へ近づいた途端、雷光が走る。


「な――」

「……すまないが、君を止めろと言われてしまった。恨むなら、恨んでもらっていい」


 右手には警棒、左手には盾。もう一度立ち上がる日尾野の目は、どうしようもなく諦めた――罪の瞳。


「何で――」

「僕だって、もうこんな事……したくないんだよ!」


 悲痛な叫びを起こす、一人の男。――誰も得をしない、悲しい戦いが起こってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ