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つなガール! NEXT  作者: 松竹梅竹松
第4章 間違いの続き
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第4章 第4話 県内最強の十二人

「……蒲田さん」

「水空。挨拶はまだか? 木葉と深沢も。高校の質が窺えるな」


 突然自分たちを罵倒し、体育館の入口に立つ一人の女性。髪は短く、シャツや短パンから覗く筋肉が相当な実力者であることを示しています。


「この方が、最後の一人ですか?」

「ううん。あの人は紗茎四人目の選抜メンバー、部長の三年、蒲田霧子(かまたきりこ)さん」


 しん、とした体育館に流火さんの小さな声が響きます。それを知っていながら木葉さんが続き、

「性格は見ての通り生真面目でうざったい。すぐ怒るし、織華嫌いだったんだよねー」

 そう言いながらゆっくりと入口へと歩を進めました。


「相変わらず生意気な奴だ。先輩に対する礼儀を知らんのか?」

「生憎今は藍根の生徒なのでー。怒られるいわれはないですよー?」


 環奈さんや雷菜さん、木葉さんは中学まで紗茎学園中等部に所属していました。おそらくその頃から仲が悪かったのでしょう。環奈さんは梨々花さんの後ろに隠れ、雷菜さんは元々不機嫌そうだった顔をさらにしかめ、木葉さんは煽るように蒲田さんの眼前に立つとその高い視線で見下しました。蒲田さんも低くはないのですが、おそらく百七十そこそこ。百八十五近い木葉さんを見上げ、握りこぶしを作りました。


「あー怖い怖い。他校の生徒を殴っちゃうんですかー?」

「小物を殴るほど私の拳は安くない」


「あれー? そんな大口を叩けるほど蒲田さんって強かったっけー? 中学時代はいっつも織華に止められてたしー、この前のインハイ予選もボコボコにふみつぶしちゃったはずだけどー?」

「貴様……!」


 蒲田さんの握りこぶしの位置がみるみるうちに上がっていきます。ちょっ……木葉さんはにやにやしてますけど、これ、止めないと……!


「いつもみたいに気に食わない後輩はぶん殴って黙らせればいいじゃない……」

「望み通りそうさせてもらうっ!」

 ついに振りかぶった拳が木葉さんに……!


「ごめんごめーん、おっくれちゃったーっ!」

 当たる寸前、この空気とは似つかわしくない明るい声が体育館へとやってきました。


「ってうわ、(きー)ちゃんとうざパイじゃんっ! やっばおひさおひさっ」

「おー、おひさでーす」

「うざパイとは何だ。まさかうざい先輩という意味ではないだろうな」


「お、正解! 珍しく冴えてんじゃん!」

「貴様な……!」

「あっ! (てん)ちゃんじゃんっ! おーい、おーいっ!」

 食ってかかろうとした蒲田さんをすらりと躱し、その人は体育館を踊るように駆けます。


 見た目は日向さんと同じギャルという感じ。ですがその全てが一回り外れています。例えるなら日向さんレベルマックスと言えばいいのでしょうか。髪はバリバリに染められていて、ウェーブや髪飾りが目を引きます。しかもかなり身長が高い。自分や木葉さんほどではありませんが、百八十は確実に超えています。


「ちょっと、今日までなにしてたの? 連絡しても返信ないし……」

「あーごめんごめん、スマホ壊しちゃって連絡先全部飛んじゃったんだよねー。あ、(ひー)ちゃんもいんじゃんっ! 相変わらず綺麗だねー」

「そっちもお変わりないようで」


(ふー)ちゃん! またおっぱい大きくなったんじゃない!?」

「ぅひぇっ!? はっ、はひゃっ、ふぁ」


(らい)ちゃんは……なんも変わんないね」

「身長伸びましたっ! ……0・0二ミリ」


「あと(すい)ちゃんは……あ、いたいた! えー!? なに水ちゃん髪染めたのっ!? やばー、ちょー垢抜けてんじゃんっ! なに高校デビュー!?」

「あの、そのこと梨々花先輩がいる前で言わないで……!」


 一通り紗茎中出身者たちに話しかけると、体育館の中央で両手を大きく開き、気持ちのいい笑顔で叫びます。


「いやー、ひさしぶりかな我が母校! さっすがにテンション爆上げだわ!」

 ……なんだかとても騒々しい方です。でも不思議と不快感はありません。こんなに異質なのに、まるで元からいたかのように思えてしまいます。


「流火さん、あの方はどなたですか?」

「あ、そういえば自己紹介まだだった!」

 自分が小声で訊ねたのと同時に、ギャルさんがどんっ、と腰に手を当て仁王立ちになってあの口上を始めました。


「あの人は紗茎中のOGで、天音ちゃんと同じ二年生」

(ひか)(かがや)くこの世界(せかい)! ()じこもるなんてもったいないっ!」


「それで天音ちゃんや矢坂さんと同様県内最強の二年生三人に贈られる称号、『銀遊の参(ぎんゆうのさん)』の最後の一人」

「だから(つた)えるこの()(ことわり)! バレーボールはおもしろいっ!」


「あの人の凄さを伝えるにはこう言った方がいいかな。私が中二の時レギュラーだったんだよ。私たち『金断の伍(きんだんのご)』の五人と、天音ちゃんと一緒に」

「『光明映鏡(こうみょうえいきょう)』、加賀美和子(かがみかずこ)っ!」


「つまり、紗茎が全国制覇した時のメンバーの一人」

「みんな一緒(いっしょ)()ぶよー! せーのっ、ばーんっ!」


 流火さんの解説をバックグラウンドに、自身が特別な存在だと証明する口上を告げた加賀美さん。


「えー? なんでみんなジャンプしてくんないのー? もう一回跳ぶよっ! せーのっ、ばーんっ! って、みんなやってよっ!」

 一人で騒いで跳び回っていますが、この方が十二人目の選抜メンバー……!


「ていうかすごくないですか? 全国制覇したことのある方々がこの場に集まってるなんて……国体も優勝できるんじゃ……」

「バレーはそんなに甘くないわっ!」


 またもや入口から知らない声が。ですが加賀美さんの時とは状況が違います。既に選抜メンバー十二人は出揃っている。なのに、一体誰が……!


「Good Evening Everyone」


 まず聞こえたのは流暢な英語。そしてそれと同時に姿が見えました。


 スーツ姿の小さな女性とメイド姿の大きな女性。メイドさんは手に持ったパイプ椅子を瞬時に組み立てると、スーツさんは脚を組んで一言、


「みなさんに殺し合いをしてもらいます」


 デスゲームの開始を宣言しました。

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