第三章 盗賊領主はハンコウする編 「激戦(汗)を越えて。」
久し振りの更新となります……って何度同じ事書いてるのやら(汗)
最近、ちょっとモフモフの短編ものを書きたくなりまして、気が向いたなら、そちらも読んで頂けたなら幸いであります。
宜しくお願いします。
……視界が白けて歪んでやがる、どうやら意識を取り戻したらしい。
「………。」
「おや、目を覚ましたかい……ってどうしたよ?顔赤け~ぞ。」
不意に何処かからミシェルの声がするが、よく分からない。
俺はカッタくて冷たい地面の上で寝ていたんだろう、背中は痛いし寒かった……オマケにあんな目に遭うとは。
『…………。』
おっと、ちょっと悪寒を感じるな、地べたに体温を奪われ過ぎたかな。
「モンテ様、大丈夫ですか?」
「ああ、何となくだが状況は把握してる。ダロスの転移魔法のおかげで俺は気絶してたんだろう。」
「ハイ、個人差がありますが、ほぼ全員が気を失ったようです。」
ロジャーの声を聞きつつ、俺は両瞼を擦ってボヤけた視界をクリアに戻すと、そこには異様に高く荘厳な天井画が一杯に広がっているのが見えた。
いや、それだけじゃない……辺りを改めて見回すと、暗い配色だが技工を凝らした内壁や石柱、金糸を織り交ぜた国旗やタペストリーがアーチ状に配置されている。
城の内部?ケタの違う荘厳と不気味さを内包したこの場所はまるで……まるでゲームのラストダンジョン、これ魔王城じゃねぇか!?
……みんなも俺と同様の印象を受けていたんだろう、広大な回廊らしき一画で辺りを見回し、それぞれが戸惑いを表情に浮かべていた。
どうでもいいが、最後に目覚めたの俺だったんだ……不様に転がってんの俺だけだし、みんな各々でお城の内見に夢中になってやがる。
『解析終了、おそらく広大な結界の範囲内へ転移させられた模様です。』
お、おう、いきなりかよ、相変わらず仕事早いねティンさんや……。
『………。』
何よ、黙られると気不味いだろ、頼むわ、はよコメ!
『補足します……幾つかの複合結界の様ですが、マスターを含め、全員に直接作用する効果は検出されませんでした。……ですが』
あのティンさんが口ごもってらっしゃる……猛烈に嫌な予感がすんな。
『城内に巨大な生命反応を持つ存在が五つ確認されました。』
巨大な生命反応?まぁひとつはダロスだろうけど、もしかして魔王とかも含まれてんのか、ってかそんなに強いって事かよ?
『………。』
……ティンさんの説明に、俺はただ絶句するしかなかった。
まず、この城内の結界は最早、結界という代物ではなく、複数存在し重なる次元断層みたいになっており、それぞれに想像を絶する生命反応の化け物が居るらしい。
ティンさん曰く、現在俺達の居る次元の反応が一番弱いが、それでもゾウとアリ程の差があるんだと……聞かなければ良かったわ。
不意に遠くから乾いた靴音の鳴り響くのを感じ、全員が薄暗い回廊の奥を凝視した。
俺も腕を突っ張って起ち上がってから視線を向けると靴音の主であろう人影を認める。
やがてその全容を視認出来る迄近づいた所で、傍らのミシェルが呻くのが聴こえた。
それは高貴な燕尾服を着込んでいたが、顔の、いや、頭部がカラクリの様な造りをした何かであった。
無機質で、瞼等なくギョロっとした眼球が不規則に左右へ揺れる……何より生物特有の気配というか、揺らぎみたいなものが感じられない所から、燕尾服の内側もカラクリなのは容易に想像が出来、俺以上にロジャーや水蓮達は納得した様に頷いているようだ。
「ハジメマシテ……御主人サマヨリ……案内ヲオオセツカリマシタ……ツイ……テ、キテキテキテ……クダサイ。」
不気味にカタカタとカタコトの言葉を話しながら、人体の可動域を無視した動きをするロボット(?)はゲテゲテと名乗ったが、インパクトが強くて正直声が耳に入らねぇ。
それでも何とか一礼して、「頼むよ」と言うのがやっとだった。
……俺達はゲテゲテについて魔王城の回廊を歩いてゆく、途中で案内がてら天井画や由緒有りげな彫像をゲテゲテが由来や解説をしてたっぽいのだが、正直俺には判らなかった。
何故だか鬼の三人が食いついて質問してたが意味が分からん……そうこうしている内に前方、回廊の内側にこれまたデカい扉が視える。
ゲテゲテは両開きの扉の前で止まり、直立不動のまま「オツレイタシマシタ。」と報告すると、扉の奥から間を空けて「入れ。」という聞き覚えのある声が響く。
さっき迄の不気味な挙動とは打って変わり、執事然とした所作で扉を開け放ち、ゲテゲテは俺達を招き入れた。
「………。」
……そこは荘厳で不気味かつ精緻な印象に似つかわしくない小ぢんまりとした、応接間に見えた。
無駄にケバい紫色の四人掛けソファーを挟み、部屋の中央に置かれた御影石に似た重厚そうなテーブル、上座にひとつだけ置かれた玉座みたいな椅子に……ダロスは座っていやがった。
「やぁ♪ゴメンね気絶するとは思わなかったよう。」
怖気のする声で、軽く手を振り上げて宣う……戸惑うしかない。
「あの……もしかしてここって、魔王城ですか?」
「ンーー、そうそう、ボクの管轄領域だけどね♪あっ、魔王様は忙しいから謁見とかは出来ないよう♪」
「………?」
何これ?ノリが軽いドコロかボクっ娘訛りキタんですけど……ちょっと、理解が追いつきませんって。
「……ああっ、ゴメンねぇ、戸惑うよね。我が家に帰ってきたから素に戻っちゃった♪ちょっと待ってねぇ。」
そうペラッペラの喋りを披露すると、ダロスは徐ろに立ち上がり……全身を覆い尽くす外套を脱ぎ捨てる。
そこにはゲテゲテ同様の無機質なカラクリのボディが佇んでいたのだが……本当に驚いたのはその後だった。
「………。」
ダロスが何事か呟いた直後、蒸気を吹き上げながら、そのボディがなんと中心線で可動、分割してゆく!!
中から姿を現したのは、クレイジーな真っピンクの長髪をポニテにした中○生位で金と銀のオッドアイを輝かせた美少女でした……うん、もう色々ネタだわ、トータル○○ールじゃねぇか!!
とか内心でツッコミを入れてる間に、分割されたカラクリは折り畳まれる様に小さくなっていき、瞬く内にコンパクトなブレスレットと化して少女の右手首に収まったようだ。
「……。」
余りの事態に唖然とするだけの俺達を見やり、反応が楽しかったのか、ダロスちゃん?はニッコリと微笑む……。
「びっくりしたか?」
可愛らしい声に俺は納得した、あの怖気のした声は機械的なボイチェンだったんかと……。
「あ、あの……カックイイっすね、それパワードスーツなの?」
パワードスーツ……この異世界にそんな概念は無いのは判りきっていたが、その瞬間、美少女の瞳は更に輝きを増してしまう。
「いや……これは僕の拘束具なのだよ。」
至ってクソ真面目な表情と声音だったが、俺は不意打ちを食らった様に吹いた……吹いてしまった。
エッ何?と言いたげな周囲の怪訝な表情を他所に、口元を片手で覆い笑いを必死に抑えるが何かが崩壊していたのか、止めどなく横隔膜が暴れやがる、もう呼吸が出来ない、涙がちょちょ切れる。
久しぶりに現代のネタに触れすぎたせいだろうか……そんな俺のリアクションをいたく気に入ったのだろう。
美少女ダロスは破顔して笑いながら、俺の背中をバシバシと叩いた。
当然、周囲は全員ポカーンである。
「………ヒィ……ヒィ。」
「あはは、気に入ってくれて何よりだよ♪どう?落ち着いた。」
俺は無言で片手をひらひらと上げる。
だが一通り反応を楽しんだ次の刹那、ダロスの表情が僅かに真剣味を帯びた……そして。
「パワードスーツね、その概念、やっぱり君……異世界の人間でしょ。」
一瞬にして、今度は自分の思考がフリーズするのを感じ、俺はただダロスへ視線を向けるのだった。
つづく
おまけ 『永延の攻防戦(爆死)』
……思考が重い、意識が漂う様に揺れている。
『現在マスターの意識は表層海におります、気絶状態ですね。』
ハッとした……急速に意思が拡大し、視界が開ける。
「またここか……トラブルの予感しかしねぇわ。」
そこはコバルトブルーの海面を下から覗いた様な空間で、目の前には……巫女服のティンさんがゆらりと浮いている、秒で吹いてしまった。
『このこすぷれ、ダメでしたか?』
一瞬にして表情を曇らせてしまうティンさん、ついにコスチュームプレイって言っちゃったよ、この娘……復帰してタガが外れたのか?
「いや……可愛いと思うよ。」
そう言うと一変して表情を輝かせ、ティンさんは俺の正面まで降りてくる。
「それで、どうして気絶してんの?もしかしてヤバい状況か。」
真面目くさって宣ってみる、何となく雰囲気を変えたかった。
『個体名ダロスの長距離転移魔法の負荷により気絶したようですが、危害を加えられたのではなく、危機的状況でもありません、現実時間にして後五分程で目覚めるでしょう。』
「そうか、万が一直ぐに覚醒する事は可能だったよな。」
『場合によっては可能です。』
場合による……何か引っ掛かる物言いだな、そういや復帰直後、ティンさんったら怒ってなかったっけ?
そう思いつつ、彼女を見ると何やら頬を赤らめモジモジしだした。
まぁティンさんには俺の思考は筒抜けだからな……そう考えながら、この時の俺は事態を甘く見ていたのかもしれない。
「よし、じゃあ速攻で目覚めさせてくれる?」
無神経だった……よくよく考えれば、ティンの方からアクションを起こしてきたんだ、何か有るのは分かるだろうに……。
ティンの表情から感情がスッと消え、能面の様になる、ちょっと怖い。
『申し訳ありません、ですが覚醒の前に幾つかお聞きしたい事があります。』
「お、おう……分かったよ。」
完全に気圧された……何なら一歩後退りした程だ。
そんな俺に構わず、ティンさんが片手を上げて指を弾くと、水中?ともかく俺の前にふたつの映像が展開されて映し出される。
刹那、事態は理解出来なかったが何とも言えない罪悪感が湧き上がるのを感じた。
それはナボル村とアドの町での、とある俺の行動を映した映像だった。
『マスターの行動は記憶のバックアップメモリーとして記憶しておりました……この二人にした行為について教えて下さい。』
一瞬にして肝が冷えた、違う、あれは不可抗力だったんだと言いそうになったが、一概にそう断定出来ない後ろめたさから、俺はあたふたしてしまった。
またも後ずさる俺を逃すまいとティンさんはずずいと詰め寄り俺の腕を掴む。
純情DTである俺は思春期に想いを寄せた娘とクリソツな巫女に迫られ、パニックに陥る。
「ば、あれは簡単にしていいもんじゃねーんだよ。」
『教えて下さい。』
「駄目だってばよ。」
『教えて下さい!!』
「そういうのは雰囲気を大事にーー」
『ワタシにして下さい!!』
「…………!!?」
そんな攻防戦(敗北必至)を永延と繰り返し……まぁ、その後、何とか一応の着地点に落ち着いたのだが、色々大変だった。
ティンさん自身が感じた新たな感情について、彼女もやきもきしていたのかもしれない。
その感情についても俺はティンさんが納得するまで解説を迫られたが、人に感覚的なものを教える事程難しい事はないのだ。
つづく?




