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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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第一章 転生編 『お姉様の襲来』

感覚が無い……何も見えない、聴こえない、自分という意識すら微かで……だが心地良い。


このまま暗闇へ沈んで往きたいと願ったなら、永遠に安息が得られるのではないか……。


『緊急事態発生を確認しました。』


「………。」


そのアナウンスを切っ掛けにして急速に揺り動かされる自我、そしてそれと反比例するかの様に……萎えてゆく心。

ってか感傷に浸ってる所を視られた気分で恥ずい。

ティンさんに覗かれたわ、恥ずいわ~。


『………。』


「……で、どしたん?」


『現在 マスターの身体が自律移動を開始致しました。』


何言ってるのか分からん……移動?自律!?今寝てるよね俺!?ちょっ、説明キボンヌなんだけど!!


『何者かが接近した後 呪術反応を検知……その瞬間 ワタシの観測モニターがロストしました。』


……接近を許したの?もっと早くに言おうよ。


『問題が発生した場合 意識の覚醒を促すのがオーダーでした。』


問題発生したら起こせ……つまりは事が起きてからか……確かにそう言ったけど、ニュアンスが違くない?

そう考えた所で、ふと先程、ティンの再三の提案を却下した事を思い出す。


もしかしたら、ティンなりに俺の言葉の心意を汲もうとしたのか……。


「ん……ごめん、俺の命令が悪かった、今後は安全確保を優先してくれ。」


本当にすまないと思う……ティンの役割を考えるなら、俺の相手はやりにくいだろう。

なんせ俺は雑念やしがらみが多すぎるし、またティンの提案や注意を大人しく聞けない場合も出てくるだろう。

最も近い存在として、お互いに理解するにはもっと気長に時間を掛けるしかねぇよな。


『……了解致しました。』


と、こんなやり取りをしている間もリアルタイムは進行していたりする。

何故って、ここは俺の無意識の表層海でネバーランドを起動している訳ではないのだよ。

まぁこれは少し後でティンさんに聞いたんだけどね……因みにティンさんの言う緊急事態とは観測モニターのリンクが切れて、俺の身体を視れなくなった事に対しての言葉だったらしい。

呪術の干渉が原因なんだろうが、それ以外は問題ではないと断言された。


問題じゃないんだ?……さて、それでは起きるとしよう……目覚めるのは今だっ(ビシッ)!!



視界が少し眩しい……歩きながら眼を覚ますとは、気味の悪い体験だ。


どうやらあの路地を出て、二番街への内壁近くまで来てたみたいだな。

やっぱり身体の自由が利かない、操られているのか。


ンン?重いな……何か背負ってる?


そう思った瞬間、不可解な感触に俺は気付いてしまったのだよ。


甘い良い香り……耳元で囁かれる様な吐息……何より背中を刺激するふたつの柔らかい物体……現状は不明でかなりパニクってるが、まさか。

ヤバい、俺は今、魅惑的なフトモモを両の腕で抱えている!!

あっ!?ブラつくヒールが見えた……。


ヤベ、顔は見えないが緊張してきた……これ何のイベントが発生したんだ?教えてくれギャルゲーKING!!


遠い青空に我が友の親指を立てて笑う姿が見えた……気がする。


(フフフ……それはラッキースケベだぜグッジョブ♪)


マジっすか!!


……不意に、正体不明の魅惑的な唇(だよね?)が耳の軟骨に微かに触れたァァ。


「……ハァ……ッン。」


俺は思わず生まれたての小鹿みたいな声を上げてしまった……実際に小鹿の声は聴いた事ないが。


「んん?……何だい起きたのか青少年。」


お姉様のお声掛けキタッ!!しかも大人ッポイ!!


「ごめんね今、解呪するから……。」


そう言うとお姉様は何やら妖しい声音で俺の耳元へ呪文を囁きかける……と、吐息がっ!?


次の瞬間、身体の中から得体の知らない何かが駆け上がり、吹き抜けると同時に自由を取り戻す……。


「……あ、あの。」


言葉が上手く出ねぇ、お姉様と密着するのがここまで緊張するとは。

数秒の時を費やし、尚も口ごもる俺に対してお姉様は一笑に付してから、やっと背中から降りてくれた。


「いや~最初は私がキミをおぶって何処か安全な所へ運ぼうとしたんだけど、ちょっと眠たくなっちゃって。」


ドギマギしながら、ようやく振り返ると……そこには俺の想像のナナメ上をゆく美女がこちらを覗き込む様に立っていた。


やや緋色を帯びた黒髪は肩までのび、毛先にはウェーブがかかっている、また化粧っ気のある端正な顔立ちが映えて凛々しい、二十代半ばくらいか……何より気になったのはその身なりだ。


先程視えたヒールもそうだが、彼女の服装……コート自体のデザインは気にならない、おそらく異世界(現地)のものだろう。

だが、そのコートの下から覗くスーツは違う、俺にとっては馴染みの深い、日本のしかもサラリーマンの戦闘服たる濃紺のフォーマルスーツときた。

お姉様の美しさと相まって、さながらキャリアウーマンといった所か、きっとスカートも似合うんだろうなぁ。

……ちょっと脱線したが、ともかく気を弛め過ぎるのは危ない。

あの時、ネフェルティの言った『人選』という言葉、他にも居るのだろうとは思っていた。


神の思惑で踊らされる者達……。


だとするとワザワザ俺に呪術を掛けて自分を背負わせた事にも納得する。

身体を掌握されたのだ、殺そうと思えば出来たと示しておいて何もしない……敵意は無いってか。


「なるほど、リアクションはウブだが気骨のある良い眼をする……どうやら私の意思表示も理解してくれたようだね。」


「一応、ありがとうございます、何故だか傷も治っているし……お姉さんが回復してくれたんでしょ。」


一体何処へ連れてくつもりだったのか、美人にお持ち帰りされるのは、吝かではないよ。


「ふふ、眠かったのは本当……おぶってもらうのに傷だらけだと気が引けるでしょ。」


そう言って微笑んだ後、お姉様は改めて畏まり懐から一枚のカードを取り出して差し出す。


「初めまして、今後ともよろしくお願いいたします。」


と言いつつ、最後に気さくにおどけて見せたのはお姉様流のビジネスジョークなのか……笑みを返しながらカードってか名刺な、社会人になった経験ないから馴染みがないわ。

表には異世界の言語が書かれてたが、瞬時に文字が日本語へと変換された。


「へぇ、便利な名刺だね、シオリ・トラビスさん?裏のマークはエレメンツ教、浄火の神フラムベールを奉るキシリア派のものだよね。」


「そうそう一応そこの神官やってるよ、あともうバレてるだろうけど、元の世界ではOLやってました、気軽にシオリって呼んでね、しかし話が早いな青少年……でだ、レディが先に名乗ったのだからキミも自己紹介をして欲しいな。」


success♪


うむ、お姉様の要求には素直に応じるのが俺の信条である……何気なくもう一度名刺を眺めた後、改めてシオリさんへ向き直して、渋々であったがあのダサい名前を名乗ってみた……。


「へぇ、モンテ君か私は嫌いじゃないな、その名前。」


本音ですかっ!?お姉様!!


「……因みになんですが、俺はこっちに来て日が浅くて、お姉……じゃなくてシオリさんもアームベルンに住んでるんですか?」


「いや、アームベルンにキシリア派の教会は無いからね、仕事で今日着いたばかりだよ。」


仕事……神官のだろうか?

そこら辺、何気に聞いてみたらお姉様は真剣な眼差しを俺へ向けてきた。


「キミに会いに来たんだよ、大地の転生者はずっと不在だったんでね……ネフェルティからも話を聞いていたしキミ、結構気に入られてるようだよ。」


うん、偶然にしては出来すぎだと思ってたよ、決して美人さんに浮かれてないし……てかあの女神サマーがシオリさんの上司?


「ふむ……その様子だとまだ第一覚醒期の兆候もみられないか。」


覚醒期?……呆気にとられている俺に対し、シオリさんは『少し歩こう』と提案してくれたので、それならギルドへ行こうかという流れになり、俺達は二番街のメインストリートを目指して歩き始めたのだが……。

それにしても、シオリさんはカツカツとヒールを響かせ颯爽と歩く姿が画になる……一緒に歩くのに気後れしてしまう程だ。

曰く、そのうち他の転生者、特に神に送り込まれた人間を感知出来る様になるらしい。

親和性が高くなるとか、ちょっと分からない話をされた……あとそうなると神サマーから時々、話を振られるようだ。

おっと、今すれ違ったカップルが振り向いてる……きっと何であんな冴えない男が一緒に居るんだとでも言ってるんだろう?はは、目移りしてるから彼女に怒られるんだよ御愁傷様。

……さて話が脱線したが、あくまで こちらからコンタクトは出来ないらしい、まぁ、それで俺の話を聴いたんだな。


「やはりこの国の街並みは良いな……。」


並み居る野郎共の視線なぞ何処吹く風と言わんばかりに、微笑みをひとつ称えて、お姉様は城まで続く景色へ眼を細める。


「そうっすか?最初は物珍しかったけど、三日も居たら飽きません?」


Boo♪Boo♪


「嘆かわしいな青少年……変わらずに在る景色の価値が分からないとは。」


あっ、しくじった……とは言え、まだこの国には愛着湧かないんだよなぁ。

お姉様へ首を傾げて見せながら、俺は苦笑いでお茶を濁す事しか出来なかった。


元の世界でだって、生まれた街に愛着も未練も持てなかったんだ……だからこそ『何時か分かる』と言われても、漠然としちまう。


「見えたな、あの建物がギルドだ。」


困惑気味の俺を尻目にシオリさんの親指が指し示す先……メインストリートの一画でその建物は俺達を待っていたかの様に鎮座していた。


「正確には総合商工業協同体(ギルド)なんだけど、所属する集団と云うかチームを指してギルドとも呼称してるんだよ。」


「へぇ、じゃあ個別のギルド名とかもあるの?」


「うん、あるわね……冒険者ってのも、あくまで一側面だし何でも節操なくやってるよ、因みに私達は面倒だから運営を親ギルって呼んでる。」


ちよっとしたあるあるを聞かされながら、俺はアームベルン唯一のギルド支部へ足を踏み入れてゆく。


次の瞬間……両開きのドアを押し開くと軋みが音を上げ、突き刺さる無数の視線が俺へと集中する。

それはほんの一瞬であったが、俺は即座に理解した……緩やかに漂う重圧と嘲笑、ここに居並ぶ者達の悪意を。

屋内は酒場(サルーン)も兼ねているのか木造の内装にいくつかの丸テーブルが並び、悪どい面のおっさん達が雁首揃えて卓を囲んで、酒やカード?を嗜んでいるのか……奥にはバーカウンターとギルドの窓口っぽいのが見えた。


「おいおい、此所はヒョロガリが来る所じゃねーぞ。」


一層巻き起こる嘲笑の渦……そんなアウェイ真っ只中でも、やはりこの人は違うね。


カツッ!と響くヒール、俺に遅れる様に後から入って来たお姉様は冷たい微笑みを称え、おっさん共を誹謗する。


「負け犬程、よく吠える……流石は大陸一の弱小ギルドだな。」


その瞬間、渦巻く悪意は凄まじい怒りに狂い、シオリさんへ向かおうとした。

だが……空気を読まず、切り裂き、蹂躙したのはまたしてもシオリさんだった。


目も眩む光と共に鳴り響く轟音、微かに俺の鼻腔を刺激する火薬の匂い。

何処から出したのか……張り詰めた緊張の最中で漆黒の銃身が一人のおっさんの頭頂部を掠め、奥のカウンターに飾られたボトルの一本を打ち砕いていた。

しかし、側でグラスを拭いていたバーテンダーのおっさんは動じるでもなく、溜め息をついてボトルを片付け始めている……撃たれて固まりながら、抜いたナイフを取りこぼしてるヤツより、よほど気になってしまうよ、何者なのこの人?


「遅い……襲うなら予備動作を見せるな、女の扱いも分からないの?」


し、痺れるな……ってか怖いよシオリさん。


「チッ!酒を飲む気分じゃねーやな。」


そう言って数人が立ち上がり、お姉様を避ける様に出口を抜けてゆく……うん、分かるよ、触らぬ神サマーに何とやらだ。

だが不意に一人が通り抜け様に俺の肩にぶつかって来た……んだよ。


「ふん!なんだいアンちゃん、スカンピンかい……。」


背後で確かにそう聴こえた直後……俺は満面の笑みをシオリさんへ向け、おどけながら手をひらひらとさせながら、あるものを見せワザと聴こえる様に言葉を紡ぐ。


「シオリさん一杯奢るよ、軍資金もコイツがあるし。」


「て、てめっ!?それは俺の財布じゃねーか!!」


「あん?表で拾ったんだよ(ウソ)……それが下民街のルールだろ、ってここは二番街か。」


高い授業料を払ったんだ、同じ轍は践まねーよ。

俺の懐から金をスろうとしたおっさんは腸が煮えくり返る思いだったんだろう、尚も俺へ食って掛かろうとしたがツレに脇を抱えられ、ギルドを出て行った。

うん、そうだよね♪だって俺の後ろで銃を持ったシオリさんが威圧感バリバリで笑ってたんだもん、俺ですら怖い。


「やるな青少年、格好いいぞ。」


success♪success♪


うっし!!悪戯っぽくおどけて、シオリさんは先程とは打って変わって、静かになった酒場を進む……笑顔の落差が激しいなオイ。


「ゴメンねギルマス、ボトルの代金、これで足りる?」


カウンターへもたれ掛かると懐から金貨を取りだし、そっとマスターに差し出すように置くシオリさん。

ってかこの人がギルドマスターなの!?


「相変わらずの跳ねっ返りだな、いいさ、バカ共には良いクスリだろう。」


マスターは静かにそう言うとシェイカーを振り始め、やがて琥珀色のカクテルを注ぐとグラスをふたつ、差し出した。


「オーダーシグナルだ……今回の要請を受けてくれて助かる。」


「マスターにはお世話になってるし、いいよ……それにコッチに用事もあったから。」


そう言ってシオリさんは妖しい視線を俺へ向け、カクテルに口を付けた……。


この時、俺はまだ知る由もなかったんだ……これがすぐ後に訪れる、受難の前触れである事を。

ちょっと投稿が遅れました。

次回は初のモンスター戦、どうなる兵太郎!!

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