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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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第二章 領主編 『神サマーと仮想空間』 前編

深夜に文章を書きながら寝ぼけ、全てを消してしまうこと二回……憂鬱になりながら己れを奮わせ何とか更新まで来ました。


いや、ホントは一週間位、何も手がつけられなかったんだけどね。

「よぉ、久し振り、一方的に話掛けてくるってのは聞いてたが、まさか会いにくるってのは想定外だったわ。」


「それは我が言いたいぞ……まさかこんなに早く出向く事になるとはな。」


アステカっぽい装飾の盾を仮面にし、相変わらず暑苦しいおじさんだ……まぁ神サマーなんだけど、何か威厳に欠けるんだよな~品位が感じられないというか~。


「ボーイ、我が心の声まで聴き通せる事を忘れてない?威厳と品位の話は最も神様にしちゃいけないと思うぞ、だからもっと敬い畏怖して奉って欲しいな♪」


「な♪……じゃねーし、んで此所は何処だよ、あんたが姿を現したって事は現実じゃないんだろ?ネバーランドの仮想空間とも違うようだが。」


アーガマに辟易しながら辺りを見回してみる……薄暗く埃臭くて湿度高めってか、洞窟……砦……いや、遺跡と表現した方がしっくりくるだろうか。

俺が目覚めた場所を中心に綺麗な図形を描く様に数百体の石像が配置されている。

が、綺麗なのは配置だけで石像の多くが酷く破損し、経年劣化の風化や苔に侵食されて欠けた部位が周辺に散らばっていた。


「原形を留めている石像を見るに悪魔でも信仰してたのか?デザインがヤバ過ぎるだろ。」


俺は立ち上がって更に監察してみる……すると侵食は遺跡内の壁や石畳にも同様に及んでおり、石壁の苔を取り払うと下から微細な幾何学模様の溝が視てとれた。

多分、建立された当時は贅と技術の粋を結集した儀式用の祭壇だったんだろう……と思ったが、ここはおそらく現実空間じゃないから関係ないか。

だが、ひんやりとした冷気が沈殿している様な肌の感覚や埃の匂いは現実そのものだと思える。

視線を上げると、遥か頭上から僅かに陽光が射し込んで揺れていた。


「あんたにとって想定外かつ、手を煩わせる事って……もしかして、また死んだの俺?」


「それは早計だな、まぁ少し歩こうか、道すがら話すから。」


楽し気にそう話ながら振り返り、『移動』し始めるアーガマ……体長4~5m越えの神サマーが地上数十㎝の所で浮きながら動く姿にちょっとシュールさを感じるのは俺だけだろうか?


「遺跡か……或る意味で正しい例えだなボーイ。」


「他人の心を勝手に覗いてほしくないんだけど、で、どう正しいんだよ?」


「ふむ、元々ボーイ達、転生者に与えられた脳量子神速演算思考エンジンの技術は別次元の宇宙で構築されたものを転用し改良したんだが、この空間はそのシステムのアーカイブデータが部分的に現れてしまっているのだよ。」


「アーカイブ?部分的に?だからどういう事よ。」


「何、ここに転がっている石像は皆、システムを構築した別次元の神々、その成の果てと言っても差し支えないのだ。」


何かさらっと壮大にエグい事言わなかった?……このおっさん。


「おっさんではないぞ~まぁ、この石像が神々の実体という訳ではなく、システムの管理と調整に伴う力を彼等がLINKという形で供給するための装置、その名残というのが正解だな……だが擬似的な依代としての役割を持つ石像が自壊しているのだ、神々の消滅は間違いないぞ。」


「アーカイブ……つまりジャンク メモリーとしてしか彼等の痕跡は残っていないのか、なら原形を留めている石像の神は……。」


「未だに存在を維持しているのだろう、最初に教えたが我ら高次元の神は生死の概念から逸脱している、人類の信仰心も力になるが我らにとっては副次的なものよ、だがその石像の神々はそうではなかった。」


存在の維持……副次的ではなく人類やそれに近い種族の信仰心が彼等にとって死活問題だったという事だろうか?


「うむ、だが余りに多くの神が乱立し信仰が多様化した結果、彼等の宇宙で云う人類は完全に滅びた。」


「は?なんでそんな急展開で話がブッ飛ぶんだよ。」


「何処の宇宙でも神が乱立すれば、自ずと人間達はその多様化に耐えられず勝手に神々の代理戦争をやらかすものだ……おかげで人類が入植出来る惑星は皆無となり、神々も糧を失って滅びる構図が出来上がるのよ。」


「ふーん、でも神を名乗るなら新しく惑星を創ればいいじゃん。」


「それほどの権能は彼等だけでなく、我らも持ち合わせておらん……宇宙の真理を解き明かし、多少の干渉は出来たとしてもそれを書き換える事は不可能なのだ。」


「……石像の事は分かったよ、けど俺が此所に呼び出された事情とどう繋がるんだ?」


「ん?まったく関係ないムダ知識というヤツだが?」


いや、嘘だな……このおっさんの話は回りくどさが一周して、どっかで必ず繋がる気がする。


「で、さっきから何処に向かっているんだ?」


「その質問は意味がないな……ここはボーイの精神世界に間借りした仮想空間なのだから、移動や距離の概念は役に立たんよ、強いて言うなら、ボーイが我を連れてゆくのだ。」


……おい、訳分からんぞ神サマー。


「でだ、ムダ知識の続きだが、彼の神々は信仰を失い尚、消滅を免れようと、浅ましくも新たな楽園を創ろうとしたんだ。」


「楽園?脳量子神速演算思考エンジンと関係するのか……。」


「現実世界で信仰が得られないなら、凝縮と拡大を繰り返す電脳世界で新たな人類を誕生させ、輪廻の循環を得ようと試みたのさ……な、浅ましいだろ?」


その瞬間、俺は思わず歩みを止めてしまう……脳裏に在る存在が過ったからだ。

そして、そんな俺の顔を一瞥し短く笑ってアーガマは言葉を続けた。


「彼女……ティンと名付けたのか、ん?どうしたボーイ、何をそんなに不貞腐れているんだ。」


「別に……何でもねーよ。」


「ふっ、『別に』と言っている時点で大抵は不貞腐れているものだよボーイ……まぁ彼女のバックアップメモリーを閲覧して大体の事情は知っているがね。」


知っている……その言葉で一瞬、あの森での出来事が記憶に甦る。

今は考えたくもねぇ、知っているなら別に聞かなくてもいいだろ!?


「言葉にしろよボーイ、その彼女が今、ボーイのせいで機能不全を起こしかけているんだぞ。」


「は?機能……不全だとっ!?どういう事だよ。」


「彼女を……ファミリアを万能な存在だと思ったか?自己学習型人工知能は確かに万能の可能性を秘めている。だがボーイが彼女に要求した自我とは自己学習ではなく自己進化の領域だぞ。」


「……そんなもん要求した覚えはねぇよ!?俺はただ……俺自身を理解して欲しかっただけだ。」


「理解=感情、延いては自我の形成を要求する事になるんだよ。折に触れる度、ボーイはそれを彼女に求めただろう……それがどれだけの負荷となるかも判らずにだ。」


そんなまさか……いや、言われてみれば思い当たる節がある。ティンは俺に合わせて感情を得ようとしていたのか?


「ティンはどうなっちまうんだ?」


「一言で云えば崩壊しかけている……本来、精神の上澄みたる感情とは無形のものだ。如何に神速演算思考を有する人工知能であっても手掛かりのない事象は推し測れん。だが彼女は各々の感情を擬似的なバグに当てはめ、発生条件を絞る事でエラーとして再現を試みた。」


「………。」


「事の重大さを少しは理解したか?他の転生者と同様にファミリアを便利なシステムとして利用していたなら、ここまでの事態には陥らなかっただろうに……結果、ある出来事を契機として彼女は感情、その片鱗を獲得するに至ってしまった訳だよ。」


ある出来事か……それはおそらく……。


「あの森で陸竜から落ちた時だな?」



あの時、あの出来事の裏で起きた事態……アーガマの話ではティン本来の予測能力ならば陸竜を襲った巨大なトマホークの投擲を数秒前に予測出来たという。

だが感情獲得に割かれた容量と度重なるエラーによって引き起こされた能力の減退が予測を遅らせ、結果、ティンはマスターである俺の命を危機に晒す事となった。

俺の命令(オーダー)とファミリアとしての使命の板挟みで発生したバグは『恐怖』というエラーを起こし、そして畳み掛ける様にティガーの負傷とグール化の事実を知ったんだろう。


ファミリアとしての使命を優先するならば事実を告げるべきだ……しかし、恐怖に駆られていたティンはそれを躊躇った。

いや……もしかしたら、事実を告げる事で俺の心に自身以上の負の感情を与えるのを恐れたのか?守ろうとして迷い、そして『不安』に支配されるまま沈黙せざるを得なかったのだろうか?


……だとしたら俺は、俺がやるべき事は……。


「ほう、彼女を一度、拒絶しておきながら助ける気か?」


拒絶……確かに俺はティンを拒絶した、自分自身の無力を誤魔化したくて八つ当たりしちまった。

気付いていたのに……また俺は同じ轍を踏むのかよ!?


助けたい……ティン、いや、俺自身のために……そう強く願いながらアーガマへ眼を向ける。


「………。」


「困った時だけ神サマー頼みか?呆れたボーイだな。」


「……さっき、あんたは俺があんたを連れてゆくんだと言った……少なくとも、俺に今回の件のケツを拭かせる気だったんだろ。」


「我がボーイに提示出来る方策はひとつだ……彼女を初期化しろ。」


「!?ふざけるなよ……それを呑めると思うか。」


「それが我の条件だ……納得出来ないのなら、お前が彼女に課した様に手掛かりのない答えを出せ。」


「………。」


「暗闇から女の子を救いだすというのはそう云う事だ……まぁ相手は女の子ではなく人工知能だがな。」


「それでも……やるんだよ。」


僅かな沈黙の後そう絞り出す様に呟いた瞬間、アーガマが微かに笑った気がした……そして景色が一変する。

音を立てて空間にヒビが入り、偽りの世界は砕け散って目映い閃光で埋め尽くされた。


「……。」 「………?」




「眼を開けろボーイ……ここが目的地だ。」


俺は光に眼を慣らしながら、僅かに瞼を開ける……。


「人間とは不便だな~精神世界においても生理現象が適用されてるとは……。」


うるせぇほっとけよ……思いきって眼を見開いてみた。


「………。」


ここが精神世界だというのは理解している……理解しているんだが何だこれ?

こ、公園……なのか?黒服とサングラスのおっさんにお姉さんが遊具で懸命に遊んでいるの?せわしなく巡っている様にも見えちまうが。


「注目するのはそこではないぞボーイ。」


アーガマに促され、向き直ると公園の中央……オブジェじゃないよな……藁床に2m程の巨大な卵?が鎮座していた。


「石材製じゃないな……ホンモノかよ。」


「此所が何処なのか忘れてるのか?」


「わーてるよ、ちなみに聞くけどブランコとかで遊んでるコイツらも何処かの神様って事ない?」


「いや、ないな……ここはボーイの表層意識に影響を受けている皮肉とパンチの利いた空間なのだろう?」


知らん……戸惑いしかないわ。


俺の思考を読み、呆れた様に笑って見せるアーガマだったが次の瞬間、沈黙と共に卵へ触れた。


「さて、そろそろ本題に入ろうか?」


「……ああ、頼む。」


「これからこの卵の殻を一部割る。」


卵を割る……そうする事で俺を内部へ送りこむらしい。

だがデカイと言っても2m位の物体に対してかなり大仰な物言いだと一瞬思ったが、流石に考え直した。

ここが仮想空間であるなら、見た目のサイズなんざ基準にならないだろうと……問題はその後からだった。

基本的にこの仮想空間での時間経過はない、それはネバーランドでもお馴染みだろう。

空間内部で過ごしている俺達は体感として時間を認識しているが厳密には俺達の時間も止まっている……だが卵を割るという行為により、時流の逆流が起こってしまうらしい。

それを放って置けば、ネバーランドは崩壊し、俺の精神も魂ごと崩壊に呑まれて消えてしまう。

とんでもない荒事をしやがるわ……そうならないようアーガマが時間経過が発生して10分きっかりに殻を修復し、時流を修繕するという、つまり俺は10分の間に内部でティンに会い、彼女の問題を解決しなけりゃならない。


「手を出すんだボーイ。」


そう言ってアーガマは俺に白金色のブレスレットを手渡してきた。


「それはフォーマット コードの象徴だ、一回限りのものだがな……いいか最悪の場合、これに初期化の意志を向けるだけで実行出来る様にしてあるから、必ず10分のカウントダウン以内で戻ってくるのだぞ。」


「……分かった。」


その言葉と共にブレスレットの宝玉部分に残り時間を示す数字が点滅し始める。


「覚悟はいいかボーイ?」


「ひとつ聞いてもいいかアーガマ。」


「……何だね、言ってみそ。」


「俺をこの世界に転生させた目的は何だ……ずっと気になっていた。」


「答えは言えんよ……が、ひとつ我の希望を伝えるなら。」


「伝えるなら?」


「ボーイにはその答えを捜しだし、辿り着いて欲しい……それだけだ。」


「……分かったよ、覚えておく。」


俺は意を決し、心中でアーガマの名を叫ぶ!!

次の瞬間、アーガマが触れていた部分が僅かな破砕音を立てて割れ、七色の光が俺を包み込んでいった……。



後編へつづく

えー今回の前編は少し短めになってしまいましたがどうでしょうか?


第一話から音沙汰無かった神サマーの再登場から会話が長くなってしまいました、すんません、もうちょっと展開を早くする予定だったのですが(汗)


今後も見捨てず、読んでつかぁさい。

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