第五章5-2女の悩み
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
ティアナ、チャーンス!?
5-2女の悩み
しばらくぶりに開発棟に戻ってみると修羅場が存在していた。
そりゃそうか、あたしやティアナがいなければいくら心眼開いたアンナさんでも魔力量自体は足らなくなる。
ポーションを飲んでは回復し、ローテンションを組んでは回復をし、使えそうなスタッフなんかもフル動員してガレント向けの双備型魔晶石核の作成が進んでいた。
「あら、戻ってきたの? 良かった、助かるわぁ~」
既に視点の合っていないソルミナ教授が出迎えてくれた。
ぴこっ!
おかえり~だって。
サラマンダー召還役のアイミも元気そうだ。
「あ、エルハイミとティアナだ、おかえり~!」
なんだかんだでここに入り浸っているマリアも元気そうだ。
相変わらずお菓子を抱えている。
たまに思うのだがマリアのあの体の何処にあれだけのお菓子が消えていくのだろう?
で、見るとマース教授やジャストミン教授は仮眠室で死んでいる。
教頭のゾックナスさんも休憩中か、机の下で毛布にくるまっている。
既に高齢のわりにそう言う所は大丈夫みたいだ。
「皆さん、差し入れと交代です。とりあえず寝てから食べてください」
アンナさんがバスケットにいろいろと食料とワインや果実酒を持ってきた。
「そう言えばアンナ状況聞いてなかったけど、こっちってどんな感じなの?」
「師匠も言っていましたが今のペースをキープできれば二、三日に一機できる計算です。ですが効率が悪いともう少し時間が掛かりますね」
そう言って室内を見渡す。
ソルミナ教授もすでに毛布にくるまって机の下で倒れている。
まさしく死屍累々状態。
「うあー、こりゃだめだ。エルハイミ、落ち着いたらまずはこっちの手伝いね」
「そうですわね、少なくとも数か月分は先行作成してあげないと四連型の方に教授たちが時間をさけなくなってしまいそうですものね」
あたしはみんなを見ながら思う。
風呂にも入る時間ないのか、ちょっと匂うぞ。
そう言えば、ティアナにアレ来てから師匠に【浄化魔法】習ったんだっけ。
【浄化魔法】は女性の特に冒険者なんかにはものすごく重宝される。
なんせ、この呪文使うとお風呂に入ってきれいにしたのと同じ効果が得られる。
しかも衣服も同様で、洗いたてのようになる。
ティアナなんかアレが来ている時には生理用品まで一緒に新品のようにきれいになるのでものすごく助かっているとか。
女の子は大変なんだよなぁ~、あたしもそのうちお世話になるだろうけど。
で、部屋の中もちょっとあれだったのでまとめて皆と部屋全体に【浄化魔法】をかけておく。
うん、これできれいさっぱり。
心なしか眉間にしわが寄って寝ていたソルミナ教授も健やかな寝顔に変わっている。
さてと、あたしは別の机にかかっているシーツをはがしてみる。
そこには四連型魔晶石核用の基礎が組み上げられている。
まだ各魔晶石核は作成されていないが、それらをはめ込む場所や共鳴回路は取り付け終わっている。
この四連型は強度も考慮してマース教授が提供してくれた希少金属ミスリルや高品質魔晶石原石なんかも使われている。
成功すれば理論上無限大の魔力を引き出すらしいが、それより知りたいのは異世界へとつながるかもしれないと言うスパイラル効果だ。
うーん、こっちも早く始めたいけど先に双備型魔晶石核片づけなきゃなぁ~。
あたしは仕方なしにもう一度シーツをかぶせる。
しかし、ここの施設ちょっと問題だよなぁ。
仮眠室とかあっても雑魚寝なので男女がまとまって寝なきゃならない。
まあ、流石にここで襲われることは無くてもお風呂や着替えとかも同じ施設を使うから男女の区別がないので順番を決めなきゃならない。
最近こういったデリケートな問題が気になるようになってきたかな?
ティアナの事もあるし、やはり以前と同じにはいかないもんなぁ。
ふとアンナさんを見る。
うーん、普通に考えて美人だしグラマラスだし、性格だって悪くない。
炊事洗濯掃除もやってできなくはないし、それなのに浮いた話の一つもない。
ソルミナ教授もエルフだから外観はもちろん、人間社会で上手く協調していて学生からの人気も結構ある。
師匠だって、仮面で顔が完全に見えないけど和製美人でしっかりした大和撫子を体現したような人だ。
あたしはまだ前世の記憶のおかげで男性には全く興味はない。
むしろ女性の方が好きなままだ。
うーん、学園のここってやっぱり女の墓場になるのかなぁ?
なんてくだらないことを考えていたけど、ティアナに呼ばれて現実世界に戻ってくる。
「エルハイミ、とりあえず二か月分作っちゃおうよ、そうしないと教授たち動けなさそうだもん」
「そうですわね、ではアイミ魔力注入しますからこちらに来てくださいな」
ぴこぴこ。
アイミがこちらに来る。
アンナさんは魔晶石の原石を準備してくれる。
あたしたちがいないと、魔晶石核の融合できる人が限られるし、頑張っても一日一回の融合が限界だろう。
結構魔力使うからね。
あたしとティアナは同調をしてアイミが生み出すサラマンダーをポコポコと融合させ魔晶石核を作っていく。
そして双備型魔晶石核の機体に魔晶石核を取り付けてどんどん共鳴させ起動させる。
教授たちが眠りから覚め、少し元気を取り戻すころにはおおよそ二十個の双備型魔晶石核が出来上がっていた。
教授たちは大いに喜び、スタッフも久しぶりに自室に戻れるとか言ってる。
どんだけブラックな環境なんだか‥‥‥
アンナさんの差し入れを食べた教授たちはいったん自室に戻っていろいろと片付けをしたいと言って出て行った、ソルミナ教授以外は。
美味しそうに果実酒を飲んでいるソルミナ教授にティアナは思い出したかのように話す。
「そう言えば、お兄さんのソルガさんに会ったんですよ。伝書鳩の手紙届きましたか?」
ソルミナ教授は嫌そうな顔をしてからこちらを見る。
「ええ、間違いなく届きました。やたら小言がびっしり書かれてましたが」
苦笑をする。
ソルガさんの話ではすでに数百年ふらふらしているらしいが、たまには実家に帰っているのだろうか?
「私の実家はエルフの村なので一度帰ると次がなかなか出させてもらえないんですよ、あそこってすごく保守的だから」
そう言えばエルフの生活について聞くのは初めてだ。
「ソルミナ教授、エルフの村ってどんなところなんですか?」
興味深々のティアナはソルミナ教授に聞いてみる。
「つまらない所ですよ。まったく変化が無くて何十年も同じような事の繰り返し。数百年に一度若い木、人間界では子供ですね、が生まれますが大体人間にして十五歳くらいまでは同じように成長するのであっという間に肉体的には成人と同じようになりますね。そして大体二百歳になるまではいろいろと学ぶわけですが、二百歳を超えると一応大人の仲間入りで個々に仕事が割り当てられます」
「仕事ってどんなことですの?」
「そうですね、私は綿集めさせられてました」
「綿集め?」
「何せ毎日同じ事させられるんでつまらなかったですが、村に必要な物資は基本自給自足ですのでね。決まった役目はちゃんとこなさないと怒られますから。毎日毎日綿を集めては村の倉庫にしまうのが私の仕事でした」
うーん、人間界でも農村では役目分担とかあるけどもう少しいろいろしていたはず。
「綿集めだけですか?」
「そうです、綿集めだけです。それ以外の余った時間は自由に使えるのですが、気付くと何もしないでぼーっと夕方を迎えるのなんてざらでしたからね」
うあー、それはそれで拷問だなぁ。
「なので水浴び行ったり、森で動物たちと遊んだりとするしかないんですよねぇ。あ、そうそう、人間界に来て驚いたのが水浴びって男女別々にするんですよね。エルフの村では混浴が当たり前だったので人間界で最初の頃は男性に一緒にお風呂入るとか言うと襲われそうになったりと大変でした」
はははとか笑っているけど、そりゃそーだ。
確実に勘違いするよな。
「まあ、大体が先に驚かれエルフの習慣だったと言うと止められ別個に水浴びしろと教育されましたけどね。こんな貧相な体つきでも気にしてくれるのはうれしかったですが」
そう言えばソルミナ教授も残念な胸をしている。
というか、エルフ全体がそんな感じで、下手すると男女の区別がつかない人もいるそうだ。
「もともとエルフは胸が小さい種族なので人間界に来るまで気にもしなかったのですが、流石にこちらに来ると皆さんがうらやましくなってきますね」
エルフもそう感じるモノだろうか?
自然とみんなの視線がアンナさんに集まる。
「そう言えば教授、エルフの人って胸の大きな人ってまったくいないのですか?」
ティアナはちょっと興味を持って聞いてみる。
なんだ、その同志を見るような眼は!?
あなたは大きくならなきゃダメでしょうに!!
「そう言えば、一人いましたね。泉で見かけた頃は小さかったのに、人間界から戻ってきたらやたら大きくなっていてみんな驚いていましたが。みんなどうやったらそんなに大きくなるのか聞いてましたねぇ」
「「えっ!?」」
あたしとティアナの声がハモる。
「そ、その話、詳しく聞かせてくださいですわ!!」
「お願いします! ソルミナ教授!!」
あたしとティアナの情熱に少し引き気味なソルミナ教授であったが、そのことについて語り始めてくれるのだった。
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