第四章4-25緊急会議
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
え~お留守番?つまんな~い!(マリア談)
4-25緊急会議
「全くをもって、どういうつもりでしょうな?」
フィメールさんは苛立ちながらお茶を飲んだ。
今あたしたちはガレント大使館にいる。
ティアナから北のホリゾンが南下侵攻してきたとの知らせはあたしたちに衝撃を与えた。
何よりこのタイミングで進行してくる意味が分からない。
「国境付近の砦にはすでにマシンドールが配備されています。どこまで侵攻するつもりかはわかりませんが、そうそう簡単にはいかないでしょう」
アンナさんが伝書鳩が知らせた手紙を熟読している。
そうなのだ、マシンドール配備前ならまだしも配備後に侵攻してきても痛手を被るのはホリゾン帝国の方だ。
マシンドール一体につき初期タイプなら騎士団一個小隊並、遠距離魔法が使えるタイプなら中隊並でさらに大きな戦果が期待できる。
「どう考えても不利なはずですな、何か秘策でもあるのでしょうか?」
ロクドナルさんも唸っている。
「とにかく、一刻も早くガレントに戻りましょう」
ティアナが当たり前のように提案してくる。
「殿下、お待ちください。我々が戻ってもすぐにはどうこうなるわけではございません。今は外交筋を通して対話による解決を模索中です」
手紙を熟読していたアンナさんは首を横に振った。
「あちらにどういった思惑があるのかつかめないうちに我々が動くことの方が危険です。確かに我々が前線に参入すれば剣聖の名をもとに、そして無詠唱魔法の使い手をもとにかなり有利に事が運べましょう。しかしそれでは一時しのぎにしかならない、未だ戦火を切っていないというのですから先ずは対話にて様子を見るべきです。それに、今のガレントにとって我々は切り札となりましょう」
確かにロクドナルさんが英雄魔法戦士ユカ・コバヤシに打ち勝ち、剣聖の称号を手に入れた話は瞬く間に世界中に広まった。
自然と現在学園にいるあたしたち無詠唱魔法使いの話も広まる。
仕掛けるならむしろ切り札になりそうなあたしたちを始末する方が利口だ。
もっとも、剣聖と無詠唱魔法使いを相手にするにはそれこそ国を挙げての軍隊が必要だろうけど。
「しかし参りましたな、そうなると私たちも動きようがございません。今は本国の連絡を待つしかありませんからな」
フィメールさんはため息をついた。
まだ本国では対話での解決を模索中であたしたちに帰還命令は出ていない。
「参りましたわね、ティアナ。気持ちは分からなくはありませんが、今は連絡を待つしかありませんわ」
あたしもこうなってくるとどうしようもない。
伝書鳩でも二日はかかる距離、とにかく今は情報が欲しい。
「はあぁ、すぐにでもガレントに戻りたいのになぁ」
すぐにか、そりゃそうだ‥‥‥
ん?
そう言えばボヘーミャとガレントの間のあれってどうなっているんだ?
「ティアナ、以前馬車の中で聞いたことのある魔法王ガーベルが使ったゲートはどうなっていますの?」
ティナは記憶をたどるように上目遣いで考える。
「確か、ガレントの方は中央都市の中にあるはずよ。多分がれきの下かどこかで正確な場所は知らないわね。ボヘーミャはどこかに有るのだろうけど、師匠に聞けばわかるんじゃないかな?」
「ティアナ、もしガレント側のゲートの入り口が分かればもしかしたら今の私たちなら使えるかもしれませんわ」
「!」
そう、魔力消費量が半端ないこのゲートでも今のあたしたちの魔力なら使えるかもしれない。
流石に全員を一度に運べるかは疑問だけど、少なくともティアナとあたしくらいならいけると思う、多分。
「殿下、ガレント側のゲートなら確認できるものは全部で三つありますよ。しかし、生きているのはたぶん一つだけ。精霊都市ユグリアにつながるゲートだけのはずです」
アンナさんお話ではゲートは入り口と出口が対になっているので一所から一度にいろいろな所へは行けないのだとか。
だから今ガレントと確実につながっているだろうゲートはユグリアにあるゲートだけ。
精霊都市ユグリア。
エルフも住んでいるこの街は古都として有名だ。
話ではエルフ以外の亜人も結構いるらしく、森の恵みを受けた美しい街並みだとか。
魔人戦争の折にも戦争を嫌い、難民の避難場にもなったことがあるらしく結構穏やかな国とのうわさだ。
アンナさんの話ではユグリアからのゲートは何故かガレント王国、首都ガルザイルの郊外にある女神ファーナ様を祭る神殿の中に厳重に封印されているらしい。
なんでそんなところにあるんだろね?
でも、おかげで空から落ちた宮殿に押しつぶされずに残っているもんね。
瓦礫の中からボヘーミャのゲート探すよりはずっと確実か。
「だとすれば、ボヘーミャからゲートでユグリアに行って、ユグリアからガレントに行ければすぐじゃない!!」
ぱあっと表情を明るくするティアナ。
しかし、二回もゲートをくぐれるほどあたしたちに魔力はあるのかな?
「殿下、それならば伝書鳩で日時を決め、最短二日後に出発しましょう。今はボヘーミャとユグリアの間のゲートが使えるかどうかを確認した方が良いですし」
アンナさんの発案で方向を決める。
とにかくゲートが使えるかどうか見定めるだけでも始めなければ。
その後あたしたちは師匠の下へと向かった。
◇
「そういう事ですか。分かりました。使用を許可しましょう。それと、精霊都市ユグリアの市長宛に便宜を図ってもらえるよう親書も書いてあげましょう」
師匠はお茶を飲みながら快諾をしてくれた。
「そう言えば師匠はゲートを使ったことがないのですか?」
ティアナが素朴な疑問を口にする。
「残念ながら私はありませんね。まれに本当に急用でゲートを使う方もいますが、百人近い魔術師がほとんど魔力を使い切ってやっと一人飛ばせるかどうかですから、あまりにも効率が悪い」
げっ!
百人分!?
じゃあ、ここにいるガレントの関係者四人と一体、おまけのマリア入れればどれだけの魔力が必要なのよ!?
あたしはげんなりしていた。
いざとなれば踏ん張ってみんなを飛ばそうかと思っていたけど、流石にこれは全員はきつそうだな。
「まあ、ユグリアならばももう少しましじゃないでしょうか? ゲートは人数や重量、距離によって消費魔力が異なりますからね」
そう言って師匠はお茶をすする。
「そうすると、ユグリアにはあたしとエルハイミで行きましょう! アンナとロクドナル、サージは大使館で待機していて」
ティアナはそう言い、すぐにでも出発したいと師匠に申し出た。
「わかりました、親書を書きますからしばらく待ちなさい」
そう言って師匠は書斎に行って親書を書き、あたしたちに手渡してくれた。
「ゲートは校舎の中央最下層に封印しています。今から連れていきますからついてきなさい」
そう言って師匠についていくあたしたち。
とりあえずみんな来る。
地下のゲート封印場まで到達すると、そこには淡い様々な色の輝きを放っているゲートがあった。
中には光っていないのもあったから、もしかしてらそれは向こう側が壊れているか何かかな?
師匠は水色に輝くゲートを指さし、これが精霊都市ユグリアにつながるゲートです と言った。
使い方は難しくなく、魔法陣に入って魔力を注入すればいいだけらしい。
中途半端な魔力では発動しないらしいので、あたしが注入することにする。
「それでは行ってまいりますわ」
「みんな、あっちに着いたら伝書鳩送るからね、ユグリアからなら一日で届くはずだから」
ティアナはそう言って大事そうに伝書鳩を抱いている。
あたしは魔力を注入してゲートを起動させる。
青い光が強く輝き始めあたしたちを精霊都市ユグリアへと転送する。
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