第十六章16-28エルハイミ
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
エルハイミ、好きよ!(ティアナ談)
16-28エルハイミ
「エルハイミぃっ!」
薄れる意識の中ティアナの叫び声が聞こえる。
あれ?
あたしなんで空中につるされているの?
「ふっふっふっふっふっ、流石はエルハイミさん。まさかあの『狂気の巨人』を倒してしまうとは。私も驚きましたよ?」
この声‥‥‥
あたしは重い頭を左右に動かし声の主を探す。
しかし声はすれども姿が見えない。
「おや? 私をお探しですか? ここですよ、あなたのすぐ後ろにいますよ」
そう言ってあたしの頬に後ろから手が添えられる。
その手はくいっとあたしを振り向かせる。
そしてあたしは驚く。
「ヨ、ヨハネ‥‥‥ス神父‥‥‥」
「お久しぶりですね、エルハイミさん? お元気そうで何よりだ」
「ヨハネスっ! 貴様ぁっ! エルハイミを離せぇっ!!!!」
「くっくっくっくっ、ティアナ姫、あなたもお元気そうで何より。しかしエルハイミさんは渡せませんよぉ、今まで我慢していたのですから!」
そう言ってヨハネス神父はあたしの服を引きちぎる。
びりびりびりっ!
あたしは上半身の服を引き裂かれもう少しで胸が露出してしまいそうだ。
「エルハイミっ!」
「はっはっはっはっはっ! なんと芳醇な香り! そしてなんと純粋な力! これですよ、私が求めていた魂は!! エルハイミさん、あなたはやはり最高だ!! ここまでの魂、お目にかかった事すらありませんよ!!」
胸の近くまではだけたあたしの首筋にヨハネス神父は口づけをする。
「ふはははははははっ! なんと甘美な味! さあエルハイミさん、あなたの魂を今こそ喰らってあげましょう!」
「くっ、ですわっ‥‥‥」
あたしは先ほどのあのお方の力を酷使してしまってもう魔力も体力も残っていない。
いや、魂の枷を外されて意識を保つのでさえやっとだと言うのに!
今のあたしには指一本動かす力も残っていない。
「魔力は残っていなくてもあなたの魂は素晴らしい! さあ、私と一つに成るのです。そうすれば人では味わえぬ甘美な快楽と幸福を与えてあげましょう!!」
「させぬでござる!!」
どすっ!
どうやらベルトバッツさんがいつの間にかヨハネス神父の近くに忍び寄っていたようだ。
今の衝撃、ベルトバッツさんの攻撃がヨハネス神父に届いた?
「ふん、無粋な! いけませんねぇ、邪魔をしては!」
「なっ!? 心臓を一突きのはずでござる!!」
なに?
どうなったの?
「ぐっでござる!!」
どがっ!
視界の端にベルトバッツさんが燃えながら地面にたたきつけられている?
「ベルトバッツ! くっ、お母様‥‥‥」
「なんなのよあれ! エルハイミ母さん!!」
人の姿に戻ったコクやセキはベルトバッツに駆け寄りその炎を消し止める。
「ちっ、こちらも魔力切れでいやがります‥‥‥」
「黒龍様、お下がり下さい」
コクとセキの前にクロエさんとクロさんも立塞さがるけど、二人とももう魔力切れだしよくよく見れば体のあちこちに傷を負っている。
「狂気の巨人」と空中戦をしたためだ。
「主を離せ!」
「エルハイミっ!!」
ショーゴさんやシェルの声もする?
あたしは声のする方を見ようとするが力が入らない。
「ぐっ!」
「きゃぁっ!!」
ショーゴさん、シェル!
悲鳴を聞きあたしは焦る。
「しつこいですね? ザシャ、ジェリーン邪魔者の相手をしなさい。私はこのメインディッシュをいただきましょう!!」
ヨハネス神父がそう言うとわずかな振動がしてヨハネス神父の体から何かが這い出て飛び去る気配が!?
「なんだあれは!?」
「ありゃぁ、もう人じゃねえ。悪魔と融合したバケモンだ!」
ドゥーハンさんやご先祖様の声がする。
びりっ!
あたしの服がさらに破かれる。
そして上半身が裸になる。
プルンっ!
ああ、ティアナぁ‥‥‥
あたしは胸を完全にさらけ出し両腕をヨハネス神父に持ち上げられるように吊るしあげられる。
「エルハイミっ!」
「さあいただきますよ!」
がぶっ!!
「くがっ!」
あたしの首筋から肩にかけてヨハネス神父が噛みつく!
そして吸血鬼の如くあたしの体から魂を吸い始める。
「なんと甘美な! そしてなんと芳醇な! 最高ですよエルハイミさん!!」
「ぐぅがぁぁぁああああぁぁぁぁっ!」
吸われている。
あたしの魂が。
やばい、意識が‥‥‥
「エルハイミぃっ! アイミっ、【特殊技巧装着】!!」
あっ!
ティアナそれは使っちゃダメ‥‥‥
しかしあたしの視界の端でティアナはアイミに入りあの赤い鎧を身に着けた騎士の姿になる。
「エルハイミを離せぇっ!!」
その踏み込みはヨハネス神父の想定を超えていたのだろう。
悪魔と融合したザシャやジェリーンが反応する暇さえ与えずあたしの首筋に噛みつくヨハネス神父の頭を槍が狙う。
「なんとっ!」
しかし悪魔王と融合しているヨハネス神父も普通ではない。
とっさにあたしの首筋から口を離し避ける。
そしてティアナはその隙にあたしを抱きかかえヨハネス神父から引き離す!!
「エルハイミは返してもらうわっ! エルハイミは私のもの、誰にも渡さない!!」
そう言ってあたしを地面におろし師匠たちに預ける。
「ティ‥‥‥ア‥‥‥ナ‥‥‥」
「エルハイミ、もう大丈夫よ、あなたは私が守る!」
見ればティアナはそう言ってヨハネス神父と対峙する。
あたしは師匠たちに抱きかかえられ師匠のマントを覆いかぶらさせられる。
「くっ! せっかくのエルハイミさんの魂がぁっ! よこしなさい! それが有れば私は女神の分身に、いや、女神すら超えられるのです!!」
そう叫ぶヨハネス神父はその体を一気にふくれあげさせ服を破り背に蝙蝠の翼を、頭に悪魔の角を、そして全身に剛毛を生やし尻尾を生やし半人の悪魔の姿になる。
『よこしなさい! エルハイミさんを!! その魂を!!』
「させないわ! 我が体は剣で出来ている」
きんっ!
ティアナは持っている槍を二つに分ける。
するとその槍は片手もちの剣に姿を変える。
「ただの一度も引かさず、ただの一度も敗走をさせない。我が体はエルハイミを守るための剣で出来ている!!」
ティアナの魔力が膨張していく。
「こ、これは!?」
あたしを抱きかかえる師匠が驚きの声をあげる。
「ユカ、あれは‥‥‥」
「闘気に魔力が集まり剣に集中しています」
ファイナス市長が師匠の側に来てあたしに回復の呪文をかけてくれる。
精霊魔法の回復呪文は魔術師の使うそれとは違い精霊の力で回復をする。
薬草を飲ませるような、つまり外部からの回復だ。
だから体力も使わないしわずかだが魔力の回復までしてくれる。
カッ!
ティアナの持つ剣が光り悪魔王ヨハネスを襲う。
「喰らえ! ガレント流剣技九の型、ダブル九頭閃光!!」
騎士姿のティアナが持つ双方の剣からまばゆい十八の光が悪魔王ヨハネスに殺到する。
『くぬぅっ! ユミル、フェル、フィジー、メル私を守れっ!』
悪魔王ヨハネスがそう言うとヨハネスの前に四体の女型の悪魔が出現する。
そして身を挺して悪魔王ヨハネスの身を守る。
ざしゅ!
ぐさっ!
ざっ!
ずしゃっ!
ざばっ!
十八の光は全て四体の女型悪魔に阻まれてしまった。
『くっふっふっ、よくやってくれました! さあ、ティアナ姫行きますよ!!』
そう言って悪魔王ヨハネスは口を開きそこから光る魔光弾をティアナに向かって撃ち出す。
しかしティアナは既に胸の装甲を開いていた!
そこには魔結晶石核四つがきらめきその力を既に溜め込んでいた。
そしてティアナは最大最強の必殺技を放つ。
「【最大旋風魔光破】マキシムトルネードぉ!!」
ティアナの放ったそれはまるで竜巻の様な魔力の渦でプラズマを放ちながら悪魔王ヨハネスが放った魔光弾を飲み込む。
そしてその威力を衰えさせずに悪魔王ヨハネスに迫る!
『ヨハネス様っ!』
ティアナのそれが直撃する寸前に横から飛び込む影。
その影は悪魔王ヨハネスをかばうがもろに【最大疾風魔光破】を受け、威力を弱めながらも悪魔王ヨハネスを捕らえる。
『ぐぁぁああああああぁぁぁぁぁっ!』
『ヨ、ヨハネス様ぁっ!!』
飛び込んだのは悪魔融合したジェリーン!?
ガガガガがガガガっ!!
バチバチっ!
彼女は直撃を受けぼろぼろに崩れながら消えて行った。
しかし威力を相殺されたものの悪魔王ヨハネスは体中に傷を負いながらもまだ健在だ。
『ぐっ、ジェリーン‥‥‥ 引きます!!』
そう言ってその場で踵を返し天高く飛び去って行く。
「あ、あいつっ!」
シェルが矢を放つも既に届かずその姿は天に消えて行った。
「ティアナぁッ!!」
何とか動ける様になったあたしはティアナのもとに駆け付ける。
しかしティアナの甲冑は光の粒子になりながらぼろぼろと消え始めていた。
「エル‥‥‥ハイ‥‥‥ミ‥‥‥ よかっ‥‥‥ た‥‥‥」
「ティアナぁ!」
甲冑が消え騎士の姿からいつものティアナの姿に戻った彼女をあたしは抱きかかえる。
しかしあたしもまだまだろくに回復していない。
ティアナを抱きかかえながら膝を地面につく。
そしてティアナを見ると何とかあたしを見てほほ笑んでくれている。
しかしあたしは焦った。
ティアナがだんだんと光り輝いて光の粒子になって崩れ始めたからだ!!
「いやぁっ! ティアナぁッ!!」
「エル‥‥‥ハイミ‥‥‥、今度は‥‥‥ちゃんと‥‥‥守れた‥‥‥」
「駄目ですわティアナ! 意識をしっかり持つのですわ!!」
地面にティアナを寝かせたあたしはティアナを揺さぶる。
しかし彼女はどんどんと光の粒子になって崩れていく。
「ごめ‥‥‥ん‥‥‥ あたしは‥‥‥ここま‥‥‥で‥‥‥ でも、また‥‥‥きっと‥‥‥生まれ‥‥‥かわ‥‥‥ってあなたのもと‥‥‥に‥‥‥」
「いやぁぁあああぁぁっ! ティアナぁっ!! 消えちゃいやぁぁっ!!」
あたしは光り崩れるその粒子を必死につかみティアナに戻そうとする。
「好きよ‥‥‥ 愛して‥‥‥る‥‥‥ どんなに‥‥‥時が‥‥‥経っても‥‥‥愛して‥‥‥る‥‥‥」
「ティアナぁッ!!!!!」
あたしは魔力なんて残っていないのに無理やり【治癒魔法】や【回復魔法】、魂を削ってでも魔力をティアナに注ぎ込む。
しかしティアナの崩壊は止まらない。
「だめぇっ! いやぁっ!! ティアナっ! ティアナぁッ!!」
あたしは悲鳴に近い叫びをする。
しかし既に半身が崩れ落ちどんどん消えていくティアナ。
「こうなったらあのお方の力をもう一度!!」
あたしが無理やり同調フルバーストをしようとしたその時だった。
「無理し‥‥‥ちゃ‥‥‥ だ‥‥‥め‥‥‥」
そう言ってティアナの手が涙でぐしゃぐしゃになったあたしの頬に触れる。
そして引き寄せるかのようにあたしの唇をティアナの唇に重ねる。
「探して‥‥‥ね‥‥‥、生まれ‥‥‥かわ‥‥‥ったあたし‥‥‥を‥‥‥」
最後にそれだけ言ってティアナは完全に光の粒子になって崩れ落ち天へと消えて行った。
「ティアナ?」
あたしは自分の手を見る。
そこにはあたしの愛したティアナの姿はもうない。
只々何も無いあたしの手のひらがあるだけだった。
視界が曇った。
あたしはもう何も無いその手で自分を抱きしめ空を見上げ子供のようにわんわん泣くのだった。
ずっと‥‥‥
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