第十五章15-16回収と再生
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
ふぅいぃぃっ、オレンジ味!!(マリア談)
15-16回収と再生
あたしたちは何とか赤竜を倒せた。
正直もう少し何とかなると思っていたけど終わってみれば結構みんなボロボロ。
そしてあたしも何度か本気で死にそうになった。
太古の竜がここまでとは。
やはり「鋼鉄の鎧騎士」の初号機を作り上げておいてよかった。
「現状確認ですがもうケガ人はいないのですか?」
ティアナの確認でもう一度みんなを見てみる。
あたしも含め数名がケガをしたり魔力切れを起こす寸前だった。
「コク、もう一度手を見せなさいですわ。体に傷が残っては女の子としては一大事ですわ」
「お母様、もう大丈夫です。この程度の傷で済んだのはマシな方ですから」
一応あたしの回復魔法で傷はふさがっているはずだけど跡が残るかもしれない。
それに意外とクロさんやクロエさんも外傷がある。
三人は竜の姿になって空中戦を行っていた。
なのでやはり肉体的なダメージが一番大きい。
「むしろエルハイミの方が心配よ。あのブレスの直撃を受けたのだもの、本当に大丈夫なの?」
シェルは水筒の水を飲みながらあたしの心配をしてくれてその水筒を渡してきた。
あたしはその水筒を受け取り喉を潤してから答える。
「イパネマさんのおかげで九死に一生を得ましたわ。それにあのブレスでこの程度の火傷で済んだのは奇跡ですわよ。イパネマさんありがとうございますですわ」
「いいのよそんな事。あたしもエルハイミさんには助けてもらったもの。こうしてちゃんと再生してもらった腕が使えるのだものね」
そう言ってイパネマさんは魔力回復のポーションを飲む。
ほんのわずかだけど魔力が回復するこれはこういった時に大変助かる。
それを見ていたシェルは慌てて自分もポーチからポーションを取り出し口にする。
「イパネマさん、私からも礼を言います。良くエルハイミを守ってくれました」
ティアナもポーションを飲んでからイパネマさんにお礼を言っている。
実はティアナの膨大な魔力も初号機のあれだけの稼働でかなりを使っていて本人も魔力切れを起こす寸前だったのだ。
「ううぁぁ、なんか疲れた。ねえ、さっきからみんなが飲んでいるそれって何?」
マリアが文字通りひょろひょろと飛んできてあたしの肩にとまる。
「魔力回復のポーションですわ。気休め程度しか魔力回復はしませんがこういった時には助かりますわ」
「ふぅ~ん、ね、エルハイミそれってまだある? あたしにもちょうだい!」
マリアも初号機に乗って魔力でも持って行かれたなのかな?
あたしはポーチからポーションを取り出し封を切ってマリアに渡す。
マリアは両手でそれを持ち上げ中の液体を飲む。
するとしおしおになっていた羽根がピンとなって元気にパタパタと動かす。
「ぷっはぁーっ! なんかこれ飲んだら少し楽になった!」
そう言ってまたパタパタと羽根を動かしシェルの所へ飛んでいく。
うーん、どうやら初号機は乗る者全てから魔力を吸い取るのかな?
『とりあえずはみんな落ちるいたようね? で、これからどうするの、ティアナ?』
シコちゃんがティアナにこの後を聞く。
ティアナはもう一度みんなを見渡してからこの後どうするかを話し始めた。
「まずは赤竜を倒せたのですぐにでも火口の神殿に行き『女神の杖』を回収したいのですが、赤竜以外にガーディアンがいた場合また戦闘になるかもしれません。ですので最低限の戦闘が出来るまでここで回復を待ちます。それとこれですが‥‥‥」
ティアナは赤竜の卵を見る。
赤竜は戦いに敗れその体が朽ち果てる前にコク同様に再生の秘術を使い卵の姿になった。
そして多分周りの魔力を徐々に吸収していき幼竜の姿で孵化するのだろう。
コクの時もそうだったが再生して孵化した幼竜はすぐには前の記憶は戻らず本来ならば下位竜族同様近くの動物を捕食して魔力を蓄え成長する。
そして一定の大きさまで成長すると初めて以前の記憶を取り戻し自我も芽生える。
しかしそれまではただの魔獣同様で危険な存在になる。
赤竜の場合太古の竜だ。
その幼竜とは言え孵化すればすぐにでも人間にとっての脅威となる。
「このまま放置すると言う訳には行きませんね‥‥‥ 以前コクに聞いた話では当面は動物を捕食して魔力を溜めるとか。それは人間も対象になるのですか?」
ティアナはコクに向かって質問する。
「そうですね、赤お母様。その可能性は十分に有ります。特に人間は他の動物に比べ魔力の貯蓄量が多い。効率よく成長するには人間を捕食するのが確かに早い方法でもあります」
しれっとコクは恐ろしい事を言う。
コクにしてみれば人間の存在など取るに足らないもの。
だから冷たい様だが事実のみを言う。
「ならばその危険な芽を摘み取る為にここで赤竜の卵を破壊しましょう。そうすればザキの村にも影響は無くなるでしょう」
ティアナはそう言って腰から剣を抜く。
「赤お母様お待ちください。出来れば命ばかりは助けてやってもらいたいのです」
しかしコクはそう言ってティアナの服を引っ張りを制止する。
ティアナはコクを見て聞く。
「コク、あなたにとっては赤竜はディメルモ様の仇ではないのですか?」
「確かに仇ではありました。しかし今はその仇も私の手で取れました。同じ竜族として罪を償った者の命を奪うのは流石に忍びない。赤竜も当面は私にすら敵わない幼竜。どうか見逃してやってはもらえないでしょうか?」
うーん、コクとすればもう仇は取って赤竜の罪は無くなったって認識かぁ。
でもこのまま孵化すると人間を襲う可能性もあるしなぁ‥‥‥
ティアナもその辺が気になってコクに今一度聞く。
「しかし人間を襲うとなれば見逃すわけにはいきません。コク、それでもかばうつもりですか?」
「ですのでお母様にお願いが有ります。赤竜の卵に魔力を与え人を襲わぬ竜として孵化させ自我が戻るまで面倒を見ていただきたいのです。どうかお母様、お願いします」
そう言ってコクはその場で膝をつき頭を下げあたしに懇願する。
「コク‥‥‥」
コクとて竜族。
同胞を思いやる気持ちもあるのだろう。
しかし‥‥‥
「コク、赤竜に私が魔力を与えると言う事はその、コクと同じ事をしなければならないのですの?」
「いえ、お母様のおっぱいは私のモノです! 赤竜には爪の垢でも飲ませれば十分。指から魔力を吸わせればいいのです」
えーと、それってコクもそれで魔力吸収できるって事じゃないの?
わざわざあたしが授乳しなくてもいいんじゃないの!?
「コク、だとするとコクも‥‥‥」
「いえ、私はお母様と魂の隷属をしていますのでおっぱいでなければ魔力吸収が出来ません! これは確定事項です!!」
‥‥‥
‥‥‥‥‥‥なんか腑に落ちないわね。
しかし今はその事に突っ込んではいられない。
あたしはティアナを見る。
ティアナは既に剣を鞘に納めている。
そしてあたしの胸を見てからあたしの指先を見て納得したかのように頷く。
「エルハイミが決めてください。但しコク、万が一の場合はたとえ幼竜であっても切ります。エルハイミに害を及ぼす者は許しません」
「それは勿論です。お母様に害を及ぼすなら私だってただではおきません」
ふんすと鼻息荒くコクもそう言う。
結局この流れ、卵は回収して飼い慣らすしかないようだ。
となればやる事は一つか。
あたしは卵のそばまで行ってその卵をポーチにしまう。
とりあえずはここにしまっておいて後で魔力供給しながら飼い慣らすか。
あたしが卵を回収したのを見たコクは安堵の息を吐く。
「ありがとうございます、お母様」
「仕方ありませんわ。それより食事の準備でもしましょうですわ!」
あたしは気を取り直して体力と魔力を回復する為に食事の準備をする。
とにかく今は少しでも休んで回復をしなければならない。
壊れて動かなくなった初号機を見ながらあたしたちはひと時の休憩をするのだった。
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