第十五章15-14黒龍と赤竜
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
うはぁ~、おっかねぇ~。
早く逃げよっと!(ゾリッダ談)
15-14黒龍と赤竜
あたしたちは「赤竜の火山」と呼ばれる火山口を目指していた。
「そろそろ奴が戻ってくる頃だ、一旦こっちの岩場で姿を隠すぞ。渡した布に隠れてくれ!」
そう言ってゾリッダさんは荷物からあの布を引っ張り出す。
忍者の隠れ蓑じゃないけど土や岩の様に染められた布をかぶって岩場の影に行く。
こうして赤竜が戻ってくるまで待つのだ。
そうそう、村にはバックアップでセレやミアム、アラージュさんやカーミラさんがアイミと一緒に待機している。
万が一赤竜が村に行ってもアイミたちが村を守るつもりだ。
そしてしばらく岩場で隠れているといきなり大きな音がして竜の唸り声が聞こえてくる。
ぐろろおろろぉぉ‥‥‥
「来たっ! みんな静かにして動くなよ!」
ゾリッダさんはそう言って更に身を小さく固める。
あたしたちもそれに倣って纏まって小さくなる。
そして竜の鳴き声と共に風を切る音がしてあたしたちのいる岩場を飛び越しその音は小さくなっていく。
「赤竜め‥‥‥」
一緒に隠れていたコクが小さく唸る。
本当はコクとしてみれば真っ先に竜の姿になって戦いを挑みたい所だろうけどまだまだ成竜にすらなっていないコクにはとても赤竜を倒せるだけの力は無い。
だから当人も良く分かっているのでこうしてあたしたちと共に行動をしている。
「行った様だな。さて、ここからが厄介だ。赤竜が気まぐれを起こして寝床から起き上がれば今までの苦労はおじゃんだ。かと言って慎重すぎれば寝床に着くのが夜になっちまう。慎重かつ急いで奴の寝床まで行かなきゃならんぞ?」
言いながらゾリッダさんは布をしまい火山口を見上げる。
幾つか山々が連なっているここだが赤竜の寝床は富士山の様になっている火山口だという。
ゾリッダさんも過去一度だけ行った事があるそうだが赤竜が守ると言われている財宝を見ることなく逃げ帰って来たそうだ。
「わかりました急ぎましょう」
ティアナはそう言って何時でも戦えるよう腰の剣を握った。
* * *
あたしたちは急ぎ火山を登りとうとう火口付近まで来ていた。
「伝説ではこの火山の中に古代魔法時代の神殿があるそうでそこにはお宝があるそうだ。赤竜はその神殿の前を寝床にしてるって話だから火口に下っていく道に沿えばそこまで行けるだろう? 俺の役目はここまでだ。あんたらの健闘を祈るよ、じゃなっ!」
そう言ってゾリッダさんはそそくさと逃げるように山を下りていく。
幸いな事にここに来るまで赤竜は起き上がる事は無かった。
あたしはティアナと顔を見合わせ安定しそうな場所を探す。
「シェル、そこの岩場をもう少し平らにしてくださいですわ。キャリアーハンガーが出せるくらいに」
「わかった。土の精霊よ、私に力を貸して!」
シェルが土の精霊に働きかけ岩場の整地を始める。
そしてほどなくそれが終わりあたしはポーチから初号機をキャリアーハンガーごと引っ張り出す。
ティアナはすぐに初号機に乗り込む。
「ティアナ、あたしも行く!」
マリアがティアナにくっついて行って初号機の中に入って行く。
腹部と胸部の装甲が閉められ初号機が起動する。
『いいわ、エルハイミ。始めます!』
「赤お母様避けてっ!!」
初号機が動き出すと同時にコクの警告が発せられる。
ティアナの初号機はすぐ様横に飛び退くとそこに業火の炎が降り注いだ!
ごばぁぁあああぁぁぁぁっ!!
「なんですってですわっ!?」
「下がれ主よ!」
余波で炎がこちらまで飛んでくる。
ショーゴさんがとっさにあたしを引っ張ってその炎から救い出す。
『【対炎魔法】!!』
シコちゃんがあたしの腰に着いたまま【対炎魔法】を発動させる。
おかげでその炎はあたしたちを焼き尽くす事は無くキャリアーハンガーだけを飴の様に溶かすのだった。
「赤竜! 貴様ぁっ!!」
『ん? 小物の中に懐かしい反応があるな? これは‥‥‥ お前、黒龍か!?』
器用に人のコモン語をしゃべる赤竜。
所々下位の言語が混じっているけどあたしたちにも聞き取れる。
そして声のする方を見上げれば上空にいつの間にやら飛び上がっていた巨大な影。
赤竜。
その全長はちょっとした丘かと思うくらいの大きさがある。
頭から尻尾までは百メートルを超えているだろう。
赤黒くごつごつとした鱗を持つ太古の竜らしい風格がある。
赤竜は空中にとどまりコクを睨む。
『誰かと思えば黒龍ではないか? 何だその姿は? 貴様転生でもしたか? ふはははははっ! なんと滑稽な姿よ! 人間の子の姿ではないか!? 貴様、我に殺されに来たか?』
器用にその咢を天に向けて笑う。
「赤竜! ディメルモ様の仇! 今この場で貴様に裁きを与えてやる!!」
コクはそう言ってその場で服をはぎ取る。
そして裸になりその魔力を膨らませ本来の姿である竜になる。
しかしその大きさはとてもではないが赤竜に遠く及ばない。
『なんだ貴様、本当に転生したか? まだ幼竜の姿ではないか! つまらん、今の貴様ではその辺の下位竜族と同じではないか!!』
『侮るな! 我には新たな主がついている! 貴様こそ年貢の納め時だ!! お母様!!』
叫びながらコクの黒い幼竜は空へと飛びあがる。
そしてコクが注意を引き付けている間にあたしたちは極大魔法を完成させていた!
『行くわよエルハイミ! 【爆裂核魔法】!!』
シコちゃんとティアナが開発した極大の爆裂魔法!
それがあたしたちと赤竜の間に赤い光が収束していき一気にそれを爆発させ赤竜側にまばゆい光を放つ。
『何っ!?』
どばぁごがぁぁああああああぁっんっっ!!
その光は赤竜を飲み込み全てを焼き尽くす。
成竜のコクのドラゴンブレス並に強力なこの一撃だ、いくら赤竜とは言えただでは済まないだろう。
「だめ! エルハイミ見てあれっ!!」
シェルが指さすその先にはかろうじて【爆裂核魔法】を避けた赤竜がいた。
『人間! 貴様もあの憎っくき魔法王と同じか!? しかし我はもう油断せぬ!! 二度と魔法の力には屈せぬぞ!!』
そう言って大きく息を吸い込む。
赤竜がドラゴンブレスを吐くつもりだ!!
『やらせない!! はぁああぁっ!! ガレント流剣技一の型、牙突!!』
既に空中に飛び上がっていたティアナの初号機は自分の何倍もある赤竜に剣を突き立てる。
『こざかしい! たかがゴーレム一機この我に敵うと思うなぁ!!』
赤竜はティアナの鋭い一撃をその巨体に似合わず避ける。
ちっ!
しかし完全には避け切れずその剣の一撃がかする。
『痛っ!? なにっ? 我に傷をつけただと!?』
赤竜は驚きながら尻尾を振って空中の初号機を薙ぎ払う。
『くうっ!』
『ティアナそのまま後ろに飛んで!!』
ティアナがそれを腕に付けた小型の盾で防ぎながら耐えようとするとマリアが後ろに飛ぶようにアドバイスを入れる。
初号機はその威力を後ろに飛ぶことにより軽減していく。
『【竜切断破】!!』
あたしは赤竜に向かって光の刃を放つ。
しかし何と言う事だ、【竜切断破】は赤竜の足に当たったにもかかわらずその鱗にほんのわずかな傷をつけただけだった。
『お母様下がって!』
空中のコクは赤竜にドラゴンブレスを吐く。
しかしそのブレスは赤竜にとって痛くもかゆくもないモノだった。
『ちょこまかと鬱陶しいわっ! 情けないブレスなど痛くもかゆくもないわっ!!』
「はぁああぁぁっ! ドラゴン百裂掌!!」
「ドラゴンクロ―!!」
背中にドラゴンの翼を生やしクロエさんとクロさんも空中で赤竜に攻撃をする。
しかしそれらは全て赤竜の分厚い鱗に阻まれ傷一つ付けられない!?
「風の精霊王よ、あたしに力を貸して!!」
クロエさんやクロさんの攻撃を受けきった赤竜に今度はシェルが精霊魔法を使って風の嵐をぶつける。
まるで竜巻の様なそれは赤竜を飲み込む!
しかし‥‥‥
『ぐはぁあぁあああぁぁっ!!』
ばんっ!!
空気を押し破るような音がして赤竜を飲み込んだ竜巻ははじけて消えた。
「うわっ! 化け物!! あれを弾くの!?」
シェルは驚きながら継いで火山の中から炎の上級精霊イフリートを呼び出す。
そして炎の柱となったイフリートは赤竜に体当たりしていく。
『その程度の炎、生ぬるいわぁ!!』
そう叫んで赤竜はとうとうドラゴンブレスを吐き出す。
それは女神をも焼き殺す炎。
女神の分身である炎の上級精霊イフリートでさえ焼き尽くされてしまった。
『クロ、クロエ! 今です来なさい!!』
コクは空中にいるクロさんとクロエさんに魔力を与え竜の姿にする。
成竜と呼ばれる大きさの竜に成ったクロさんとクロエさんはコクのもとに飛んでいく。
『行きます! 三位一体攻撃、乱気流撃破!』
コクを先頭に三匹の竜が一直線に連なり赤竜に飛び込んでいく。
そして先頭のコクがブレスを吐く。
『甘いわぁっ!』
赤竜は難なくそのブレスを飛び越え器用にコクの背中に蹴りを入れて続くクロさんへ強烈な尻尾の一撃を入れる。
『取ったぁっ!』
赤竜の一撃を受けふっ飛ばされるクロさんの更に上にクロエさんの竜が飛び出しその首に噛みつこうとする。
が、赤竜は器用に頭だけクロエさんに向けてドラゴンブレスを吐く!
いくら竜の姿でもこれを食らってしまったらクロエさんはやられてしまう!
『クロエっ!!』
地面に落ちながらコクが叫ぶ。
女神をも焼き尽くすその炎がクロエさんに迫る!
『へっ? でいやがります??』
最後にクロエさんが放った言葉は赤竜の炎に包まれてしまったのだった。
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