第十五章15-3新素材開発
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
私も壁にぶつかりますわよっ!(エルハイミ談)
15-3新素材開発
ジルの言うその採掘場は山岳部の中腹にありそこまで行くには徒歩で行くしかない。
場所が場所だけにあたしたちも仕方なく徒歩で行くのだが‥‥‥
「何なのよこれっ!?」
シェルが岩にしがみつきながら文句を言っている。
「あー? シェルねーちゃんなんか言ったかぁ? 気をつけないと谷に落ちるぞ?」
あたしたちは「道」と言われる崖にへばりつきながら歩いている。
道と行ってもほとんど歩幅も無いようなここを歩くとは。
一応危なそうな所には崖の方に鎖の手すりが打ち込まれていてそれをたずさりながら歩けるけど‥‥‥
「ま、魔術師には結構きついわね。胸も壁にぶつかって歩きにくいわ」
ティアナとイパネマさんとイオマ、そしてあたしは壁につかまる時に壁に胸が押し当てられ意外と歩きにくい。
「何それ!? 偏見だわ!!」
シェルはそう言う事が無いのですんなりと歩けるはず。
「面倒くさいでいやがります。黒龍様、私が竜の姿になって運びましょうか?」
「今はなるべく魔力を使いたくないのです。ここはお母様たちに習ってついて行きましょう」
コクはもちろんクロエさんも問題さそうだ。
『エルハイミ、【浮遊魔法】使ってあげるから魔力よこしなさい。あなたたち四人のせいで進行速度が著しく遅くなってるわ。特にティアナとイパネマのせいでね』
「シコちゃんそれは偏見よぉっ!!」
シェルが叫ぶもあたしは素直にシコちゃんに魔力を注ぐのだった。
* * * * *
「やっと着いた‥‥‥」
ぜえぜえぇ。
エルフでもこう言った山岳部はこたえるのかな?
シェルは肩で息をしている。
「シェルねーちゃんなまってるんじゃないのか? 前は一緒に森入って狩りしてた時はこんなもんじゃなかったのに?」
逆にジルはケロッとしている。
やはり成長をしたジルは体力もかなりついている様だ。
移動に丸二日かかった採掘場は小さな村レベルの建物が有った。
「よう、ジルじゃないか? どうしたんだ大勢連れてきて? ってぇ、ティアナ様!?」
声をかけてきた鉱夫はティアナの姿を見て驚く。
「ボルバさん、こんにちわ。あのさ、例の鉱石ってまだ出てきてる? ティアナねーちゃんたちがすっげー興味あるんだって!」
ボルバさんと呼ばれた鉱夫はその場に膝をつきティアナに頭を下げる。
「まさかこんな所へティアナ様が来られるとは! むさくるしい所ではありますがどうぞご容赦ください!」
「ボルバと言いましたか? ご苦労様です。そうかしこまらなくてもよろしい。頭をあげなさい」
そう言ってティアナはボルバさんを立たせる。
「ジルからいろいろ聞きました。ここで珍しい鉱石が採取したそうですね?」
「はい、それなんですがちょうど大きな鉱脈に当たったみたいで今それがどんどん出てきているんですよ!」
ボルバさんは若干興奮気味でそう言う。
あたしたちはボルバさんに連れられて採掘されたその魔鉱石を見に行く。
「うわっ、こんなに出てきたんだ!? 何だよ、これじゃぁシェルねーちゃんにあげたのが珍しくなくなっちゃうじゃん!?」
ジルにしてみればシェルへの珍しいプレゼントになるはずだった魔鉱石だが今採掘置き場に山になって置かれている。
「ん? 別にいいわよ。あれ奇麗だし。ありがとねジル」
「え? あ、ああ‥‥‥//////」
それでもシェルにお礼を言われたジルは少し赤くなっている。
むむっ?
ジルってもしかして‥‥‥
あたしがジルとシェルを見ているとイオマが話しかけてきた。
「すごい! お姉さまこれだけあれば素体を作るのに足りそうですよ!」
「ええ、まさかこんなに有るとはですわ。ボルバさん、これ少し使ってみても良いですの?」
これだけ魔鉱石が有るのだ。
あたしはそれをロックゴーレムに精製してみたかった。
「勿論ですよ、エルハイミ様。もともとこれはジルの話でティナの町に運び込む予定でしたからね」
あたしはお礼を言ってからこの魔鉱石をロックゴーレムにしてみる。
ずももももぉぉおおおぉぉ‥‥‥
こぶし大の魔鉱石たちは音を立てながらゴーレムの姿になっていく。
が、普通のロックゴーレムではない?
「何なんでいやがりますか、これは?」
クロエさんが驚いている。
身の丈二メートル近くのこのロックゴーレムは通常のゴーレムとは違いその表面をきれいに並べまるで日本のお城の石垣の様にぴっしりと組まれた。
『あら、すごいわね? 魔力伝達が石や金属のくせしてミスリル以上に好いみたいじゃないの?』
「シコちゃんそれは本当ですの?」
確かに何時ものゴーレムよりすんなり組み上がった感じは有った。
それになんか動きもスムーズなような‥‥‥
「面白いでいやがりますね、主様少し遊ばせて下さいでいやがります!」
そう言ってクロエさんはゴーレムの前に立ち構える。
「お姉さま、丁度いいです、クロエさんに攻撃してもらってその強度を見てみましょう」
イオマに言われあたしも仕方なくクロエさんがこのロックゴーレムと戯れるのを認める。
「主様、こいつに本気で来させてくださいでいやがります! 最近歯ごたえの無いやつばかりでつまらなかったのでいやがりますから!」
クロエさんは既に準備が出来ていた。
あたしは仕方なくロックゴーレムに命令をする。
「ロックゴーレムよ、その娘を攻撃しなさいですわ!」
きぃぃぃいぃんっ!
ロックゴーレムは瞳を光らせ動き出す。
どんっ!
「へっ!? でいやがります??」
驚いた事にロックゴーレムはかなりの速さで動きクロエさんに迫る。
ぶんっ!
バキッ!!
「くっ!」
構えていたもののクロエさんはロックゴーレムの鋭い拳をもろに受けてしまい吹き飛ばされる。
って!
何それ!?
ロックゴーレムなのにマシンドール並みの動きしている!?
「お姉さま凄い!」
「エルハイミ、これは本当にロックゴーレムなのですか?」
「何なのこれっ!? 今までに見た事無いわっ! 本当にロックゴーレムなのエルハイミさん!?」
魔術に詳しい三人は驚きを隠せない。
確かにあたしはロックゴーレムを作ったはず。
「エルハイミ、あんたまた何かしたの? 土の精霊がゴーレムの周りをうろちょろしているし、風の精霊まであのゴーレムの体の周りにまとわりついているわ」
はいっ?
あたし精霊魔法って苦手なのよ?
それにそんなことした覚えが無いわよ!?
あたしは同調をしてみる。
そして感知魔法で見て驚いた。
全身を流れる魔力がまるでマシンドールの双備型魔晶石核の様に奇麗に流れている。
そしてそれがマナの動きをスムーズにさせあの爆発的な動きや強力な攻撃をしている様だ。
『まるでアイミの昔のようね』
シコちゃんがそう言う。
確かに昔の小柄なアイミと同じくその身体能力は凄まじいものになっている。
「くっ! 面白いでいやがります! 喰らえ! ドラゴン百裂掌!!」
「わきゃっ! クロエさんここでその技は危ないですわぁっ!」
あたしは慌てて【絶対防壁】を張って周りの被害が出ない様にするのだが、なんとゴーレムに打ち込まれたクロエさんの技はゴーレムの表皮をぼろぼろにしただけで止まってしまった!
「なにっ!? 私のドラゴン百裂掌が止められた!?」
驚くクロエさん。
しかしそんなクロエさんにゴーレムの右手がうごく。
「いかんっ! はぁっ!!」
ショーゴさんが飛び込みなぎなたソードを一閃する。
きんっ!
その攻撃をゴーレムは動かした右手で受け止めたが、なんと切れ込みが半分も行かない!?
「ゴーレムよそこまでですわ! 止まりなさいですわっ!!」
あたしは慌てて動きを止めさせる。
そしてゴーレムの近くにまで行く。
よくよく観察すると魔鉱石自体が魔力に包まれていて隣の魔鉱石へと次から次へと魔力が流れている。
どうやら切り口を見ても魔力が防御に勝手に変換されてあのなぎなたソードでさえ切り落とせなかったようだ。
「エルハイミ、これはすごいですね。まるでマシンドールのようです」
「お姉さまこれって予想以上にすごいですね。これで基礎骨格を作れれば素体もかなりの軽量化が出来そうです。余分な増幅や動力が必要無い分他の機能も取り付けられるかもしれない‥‥‥」
「もうそうそう驚く事は無いと思ったけど、やっぱりエルハイミさんの近くは常識はずれね、また驚かされたわ」
ティアナはゴーレムを見上げている。
イオマはその表面を擦って何やら考えている。
イパネマさんはあたしに振り返りため息をついてから笑っていた。
あたしはゴーレムを元の魔鉱石に戻し先ほどの事を考えながら前に見た「鋼鉄の鎧騎士」素体の脛のメインフレームを【創作魔法】で加工成形してみるしてみる。
そして出来上がった八十センチくらいのパーツを見てみる。
やはりそうだ。
これ自体が魔力伝達の機能を有していて目的に応じて魔力がその効果を発揮しやすくなっている。
つまり、人の意思を魔力に乗せればその反応速度は自分の体と同じ、いや、強化された自分と同じに動けるかもしれない。
「お、お姉さま、このパーツって!」
「ええ、『鋼鉄の鎧騎士』の脛パーツメインフレームですわ。魔鉱石を【創作魔法】で成形しましたわ。私の考えでは強度も高めた構造になっているので従来の金属より軽く強固になっていて更に魔力伝達率もずば抜けて高いはずですわ」
あたしはそう言って念動魔法でそのフレームを立たせる。
「ショーゴさん、試しにこれを切ってみてくださいですわ。多分なぎなたソードでも切れないはずですわ」
「ふむ、刃こぼれはあまり好きではないのだがな」
「大丈夫ですわ、これが終わったら魔鉱石を分けてもらってショーゴさんのセブンソード自体を強化しますわ!」
あたしはショーゴさんのセブンソードについても考えが有った。
「わかった。下がってくれ」
そう言ってショーゴさんはなぎなたソードを構える。
そしてふっと息を吐くと同時にその動きが見えないほど早くフレームを切る。
きぃいぃぃぃぃんっ!
高い鉄がぶつかる音がして予想通りフレームの表面でなぎなたソードの刃が止まった。
「やはり刃こぼれをしたか」
ショーゴさんはなぎなたソードの刃を見ながらそう言う。
逆にあたしはフレームの表面を見る。
つるりん。
傷一つ無いよ‥‥‥
少しは切れると思ったけど圧縮とクロスバンド構造にしたのが相当な効果を発揮している様だ。
あ、ちなみに中心部は空洞になっていて軽量化とスペースの余裕を確保しています。
「お姉さま、すごいっ!! ショーゴさんのなぎなたソードで傷一つ無いなんて!!」
「そうですわね、さしずめこの新素材は『エルリウムγ』とでも呼びましょうかしら? イオマにも生成方法を教えますわ!」
あたしはびっと指を立ててそう言ってみる。
「また異界の技術なの、エルハイミさん?」
イパネマさんはもう驚くのをやめたような感じであたしに話しかけてくる。
「そうですわね、そんなようなものですわ!」
こうして新素材「エルリウムγ」が出来上がったのだった。
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