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エルハイミ-おっさんが異世界転生して美少女に!?-  作者: さいとう みさき
第十章
259/636

クリスマススペシャル7-27.5サンタクロース

クリスマスなので少し昔のエルハイミたちを覗いてみようと思います。

本編「7-27ホリゾンの狩人」の後の辺のお話です。

あちらの世界にはクリスマスってないんですけどねぇ~

いつも通りのエルハイミたちを見てやってください。


クリスマススペシャル


 7-27.5サンタクロース



 「さんたくろーす?」



 ティアナは聞き慣れないその言葉に目をぱちくりさせている。

 あたしはお茶を飲みながらもう一度説明をする。


 「ええ、サンタクロースですわ。十二月の二十四日頃の夜にこっそりと現れて良い子にだけプレゼントを与えて去っていく真っ赤な服を着たおじいさんの事ですわ」


 あたしたちはこの北の砦に就任して初めての冬を迎える事となる。

 冬で豪雪地帯と言われるここは既に一面の銀世界。

 更に振り続けた雪のおかげで東北の雪国にも負けない積雪量。

 いろいろと整備なんかも大変で右往左往する毎日だった。


 そんなごたごたが落ち着いてきた今日この頃、いつものお茶を飲んでいる時にクリスマスの話が出た。

 

 勿論、この世界にクリスマスは無い。

 なのであたしは師匠の世界の話と前打ってその話をしていた。


 「でもそのサンなんとかって何者よ? 魔法使い? 夜中に家に忍び込むなんてもしかして隠密か何か?」


 「ええとですわね、実際には架空の人物で子供たちに良い子にしてもらう為の便宜ですわ」


 うーんとか言ってティアナは考え込んでいる。

 どうもそう言う感覚が全く理解できないようだ。


 「でもさ、そうするとその子供のプレゼントってどうなるの?」


 「実際には子供が寝静まった頃に親がそ~っと部屋に入って来て枕元につるされた靴下の中に玩具やお菓子を入れていくのですわ」


 あたしはそんなクリスマスの思い出を懐かしく思いながら話す。

 

 「うーん、なんで靴下?」


 「ごめんなさいですわ、それは私にもわかりませんわ」


 そう言えばなんで靴下なんだろうね?

 よくよく考えると意味が分からない。


 「変な風習ね」


 そう言ってティアナはお茶を飲む。



 * * * * * 


 

 「エルハイミ、見てみてこの生地! さっき町で買ってきたんだけどここまで見事に赤い色に染めるのってすごいよね!?」


 シェルが買い出しに町に行っていたがどうやら予定以外の物もかなり買い込んできたらしい。


 「シェル、まだまだ財政も厳しいのですからあまり無駄遣いしないでくださいですわ」


 「わかってるって、でもすごいよねここまで赤い色出せるなんて一体どういう顔料使っているんだろ?」


 生地を染めるのは色々な方法があるものの通常は赤い色を出すのは難しい。

 確かにこの生地は見事なまでの赤い色に染まっている。

 シェルは暇があればいろいろと作っているけど特に人間界に来てからは衣服を自作したりしている。

 マリアの服も器用にいろいろ作ってたし、やっぱりこいつに協力してもらって絹の生産とその後もいろいろと手伝ってもらおう。

 

 あたしはそんな事を思いながらシェルが買ってきた生地を見ていた。


 と、ふとサンタクロースの事を思い出す。

 ミニスカサンタの衣装を着たティアナ‥‥‥



 い、いいかもしれない!!



 あたしはシェルに興奮しながら相談をする。


 「シェル、この生地は何かに使う予定が有りますのですの?」

 

 「うん? 無いよ。あまりにもきれいな赤だったので買うだけ買って何かに使えればと思っただけだから」



 やっぱり無駄遣いしてるんじゃないかよ!

 ちょっと額に血管浮かんだけど今は我慢。

 ティアナにミニスカサンタの衣装を着せると言う野望の為、今は我慢よ!



 「そ、それじゃあこの生地使ってこういったデザインの衣装を作ってもらいたいのですわ」


 あたしはさっそくそのデザインを紙に書いてシェルに渡す。

 シェルはそれを見て眉間にしわを作ってあたしを見る。


 「なにこれ? 赤い生地と白い生地を使って紅白の衣装を作るのは分かるとして、なんでおへそ出したり下着が見えそうなほど短いスカートなのよ? しかも意味不明なこの三角帽子って何?」


 「ええとぉ、サンタクロースと言う迷信に出てくる人の衣装ですわ。この時期に煙突から忍び込んで子供たちにプレゼントを配る善意の人ですわ」


 シェルはますます頭にクエスチョンマークをつけて悩んでいるが「まあいいや、分かった作ってあげるわ」と言い衣装を作ってくれることとなった。



 『また何か変な事考えてるの、エルハイミ?』


 「変ではありませんわよ、そう言う衣装もあると言う事ですわ」

 

 シコちゃんは納得していないようだったけどそれ以上は何も言わなかった。



 よし、これでティアナのミニスカサンタ姿が見れる!

 あたしはウキウキしながら残りの仕事をこなすのであった。



 * * * * *



 「出来たわよ、でも本当にこの時期の衣装なの? これじゃ凍え死んでしまうわよ?」


 「大丈夫ですわ、これは屋内専用ですわ。それに他の人に見せる訳でも無いしティアナに着てもらうのですわ」


 するとシェルはすぐに察したようで少し顔を赤くしてにやけた。


 「このエロハイミぃ~、そうか、ティアナとお楽しみに使う気だったんだ」


 あたしもつられてにやけて顔を赤くする。

 それはシェルには肯定と受け取られ「ほどほどにねぇ~」とか言われてしまった。



 シェルだしまあいいかと思いながらあたしはウキウキしながらティアナの所へ行く。



 * * *



 「それでこれを着ればいいのね?」


 ティアナがかかげるその衣装はあたしの想定した通りの衣装だった。


 「はい、ですわ。着てもらえますかティアナ?」


 「いいわよ、でもこれって寒くて外には出れそうにない衣装ね?」


 そう言いながらティアナは服を脱いでミニスカサンタの衣装に着替える。

 そして‥‥‥


 「ど、どうかしら?」


 もじもじと太ももをすり合わせている。


 

 おおぉーっ!!



 まさしくミニスカサンタだ!

 赤いブーツを履いてその美しいおみ足をスラリと見せまくって、見えそうで見えない絶対領域のスカートが動くたびにあたしの視線をくぎ付けにする。

 キュッとしまったウエストからはかわいらしいおへそがのぞき見え、たわわに実った双丘を寄せてあげての肩出し衣装に短めのハーフマントが良い感じにかかっている。

 真っ赤な髪の毛には半かぶりの三角帽子が良く似合っていて、これで白いプレゼントの袋を持っていれば完璧な姿になる。



 「え、エルハイミ、これってその、ちょっと露出が強すぎない?」


 「いえ、最高ですわ! 完璧ですわ!」



 あたしは興奮してティアナのその姿をぐるぐる回りながら見る。

 部屋は十分に暖めているから裸になっても寒くないほど。

 しばらくティアナにはこの衣装を着てもらいたかったけど、夕食の時間になるので一旦元の姿に着替え直す。



 「ねえ、エルハイミ、あの衣装って何に使うのよ? あたしエルハイミ意外にあんな恥ずかしい恰好見せるの嫌よ?」


 「勿論他の人になんか見せませんわ! あれは今晩ティアナと一緒に寝る時に使いたいのですわ」


 「あっ」


 あたしのその言葉にティアナは理解したようで真っ赤になってほほ笑む。


 「もう、エルハイミったら‥‥‥」



 うんっ、今晩が楽しみだわっ!!



 あたしたちは夕食の為に食堂へと向かった。



 * * * * *



 「そう言えばエルハイミ殿、先ほどシェル殿から聞いたがサタンクロスなる不審人物が夜半に出回るとか聞き及んだ、十分警戒するがダークエルフの件もある、主ともども気を付けてくれ」


 食事中にゾナーがそんな事を言ってきた。

 ついぞこの間ダークエルフの刺客があたしたちを襲って以来、ゾナーはティナの町の警備はもとよりこの砦の警備もかなり厳重に行っている。


 

 「聞けば子供たちをさらう売人だとか、返り血で真っ赤になるほど殺人が好きな異常者だとか色々と噂されているとか。全くここのところ変なのばかりで参るな」



 そう言ってゾナーは酒を飲んでいた。


 「そうか、まだまだティナの町の安全には注意しなきゃだわね。ゾナー、しっかりとお願いね」


 「任せてくれ、我が主よ。ダークエルフの時のような事は二度と起こさんよ」


 そう言ってまた酒をあおる。



 うーん、そんな話初耳だけど確かにこんな雪深いティナの町でも行商人や冒険者たちは来てくれている。

 彼らの安全確保の為にもそんな変質者は速やかに排除しなきゃだね。



 あたしはそう思いながらあまりおいしくない保存食材メインの夕食を済ましたのだった。



 * * * * *


 

 あたしとティアナは部屋に戻っていそいそと支度を始める。

 既にティアナはあのミニスカサンタの姿になっている。

 

 しかしあたしはすぐにはティアナに手が出せない。


 「エルハイミ、何その寝袋? 首だけ出してないで早くこっちにおいでよ」


 「うふっ、ティアナせっかくなので私もティアナにサプライズプレゼントですわ! さあ、この袋のひもを解いてですわ!」


 見た目人さらいの袋に入れられて頭だけ出しているような格好のあたし。

 しかしその下にはサプライズプレゼントの衣装を着こんでいるのだ!


 ティアナはあたしの近くまで来てそのひもに手をかけた。

 と、その時だった!

 


 ばんっ!



 いきなり扉が開いてシェルが入ってきた!?


 「やっほーう! 見てみてあたしも着てみた!」


 何とシェルもミニスカサンタの姿で現れる。

 胸が無いので少々残念だけどスラリとしたスレンダーなそのスタイルはそれはそれで目の保養になる。

 しかし突入してきたシェルはあたしたちの姿を見て固まる。



 「何それ!? 人さらい!?」



 扉を開けっぱなしだったのでシェルのその声は廊下に筒抜けになってしまった。



 「なにっ!? 人さらいだと!? どこだっ!!」


 「サタンクロスが出ただって!? 気をつけろ奴は返り血でその衣装は常に真っ赤になっているらしいぞ!」


 「主様の部屋の方から悲鳴が上がっただと!? 急げ!!」



 ガチャガチャと鎧の音がして衛兵たちがこちらに来る。



 「うわっ! やだこんな格好他の人に見られたくないっ!」


 「ティアナ、私だって袋の中はもっとすごい恰好ですわ!!」


 「あちゃー、とにかくこっち来ちゃだめね、眠りの精霊よ手伝って!」



 シェルはそう言って廊下の方に眠りの精霊で衛兵たちを眠らせた。

 バタバタとした音がして衛兵たちが倒れる。



 「気をつけろ! サタンクロスは魔法を使うぞ!!」


 「主よ! 無事かぁっ!?」



 うわっ、ゾナーまでやってきた!!

 早く何とかしないとあたしたちのこの格好が見られちゃう!!



 「と、とにかくここから一旦逃げよう! あたしの部屋に行くわよ、ティアナ、エルハイミ!」


 『全くあんたらときたら、【隠蔽魔法】 これでしばらくはあなたたちの姿は見えないわ。でも気を付けて、他の人に触れられたりするとすぐに見つかっちゃうから」


 シコちゃんが気を利かせて【隠蔽魔法】をかけてくれた。

 この魔法は姿を消してくれるけど何かの拍子ですぐに破られてしまう。


 ティアナとシェルは袋に入ったままのあたしを二人で担いで扉の横に移動する。


 すぐにどたどたとゾナーや衛兵たちが入ってくる。

 そして部屋の中を一瞥しながらゾナーは声を張り上げる。



 「主よ! どこだ!?」



 必死になってあたしたちを探しているけど、とにかく今がチャンス!

 ティアナとシェルはあたしを担いだままそぉ~っと扉を抜けた。


 しかし抜け出したそこに眠りで転がっていた衛兵を踏みつけて起こしてしまった。



 「う~ん、なんだこのやわらかいものは?」



 起き上がった衛兵が伸ばした手がシェルのお尻にふれた。

 そして形を確認するかのように撫でまわす。



 「いっ、いやぁああああぁぁっ! 風の精霊よ!!」



 シェルが驚いて風の精霊でその衛兵を吹き飛ばす。

 哀れ衛兵は廊下を転がりながら飛んでいく。


 「いたぞ、あそこだ! エルハイミ様がさらわれているぞ!!」


 「なにぃっ! すぐに取り押さえろ!!」


 今のでシコちゃんの魔法は切れてしまった。

 そして担がれたあたしの顔だけ見えるのであたしは二人組にさらわれているかのように見える。



 「やばい、見つかった! ティアナ急いで!!」


 「って、どこ逃げるのよ!? こんな格好で!」



 慌てて走りながらあたしたちは廊下を曲がってすぐの大きな扉の部屋に逃げ込んだ。

 そして慌てて扉を閉める。



 ぴこっ?



 あたしたちが逃げ込んだ部屋はアイミたちがいる部屋だった。


 ぴこぴこ?×四


 どうやらアイミたちはあたしたちのこの姿は何だと言っているようだ。


 「アイミ、今はとにかく静かにしてですわ」


 「何か着られる服無いかしら、アイミ?」


 ティアナがアイミにそう言うとアイミはよく使う外套を出してくれた。


 「とにかくこれ着よう、それとこの服は脱いでおこう」


 シェルはミニスカサンタの服を脱いで下着姿の上にアイミたちの外套を羽織る。

 ティアナも同じく衣服を脱ぎ去り外套に身を包む。


 そしてミニスカサンタの衣装をまとめて隠そうとした時に扉が叩かれた!



 「やばい! そうだウィンドー、この衣装を外に風で吹き飛ばして!」



 ぴこっ!


 風の上級精霊を魔結晶石に宿すウィンドーはティアナに言われてその衣装を窓の外に向けて吹き飛ばす。

 しかし加減を知らないこの子は竜巻並みの風を引き起こし窓ガラス事割ってその衣装ごと外へ吹き飛ばしてしまった!



 がっちゃぁーん!!

 ぼひゅーっ!!



 「エルハイミ殿!!」


 扉を蹴破って衛兵たちとゾナーが入ってくる。



 「アイミ、賊は何処だ!!!?」



 ぴこっ?


 アイミは小首をかしげる。

 しかしウィンドーが窓を指さし破壊されたそこを見たゾナーはすぐに外を見る。

 


 「逃がしたか!?」



 「主様! それにエルハイミ様、シェル様も! ご無事で!?」


 他の衛兵たちがあたしたちを見つける。

 

 「おお、主よ無事か! 良かった。エルハイミ殿も何とかさらわれずに済んだか。しかしエルハイミ殿や主をさらおうとするほどの使い手だったのか?」


 「え、ええとぉ~」


 「そ、それはですわねぇ‥‥‥」


 「そそ、すごい使いてだったわよ! アイミたちのおかげで何とか助かったのよ、ありがとアイミ!」


 シェルがいきなり機転を利かせてでっち上げた!?


 「そ、そうなのよ、寝込みを襲われてね」


 「そうでしたわね、おほっ、おほほほほほ」


 あたしもティアナも話を合わせる。

 


 「しかし無事で何より、肝を冷やしたぞ、エルハイミ殿や主殿をさらえるほどとはな」


 そう言ってゾナーは短刀であたしがくるまれていた袋のひもを切る。



 「あっ!」



 あたしはその唐突な行動に対処できなかった。

 そして切られた紐がほどけ首だけ出していた袋がばさりと床に落ちる。


 「とにかくこれで自由ぅ……にぃいいぃっ!?」


 袋が落ちて姿を現したあたしはきわどい所だけをリボンで隠した「あたしをプレゼント♡」状態だった。

 思わず両手で胸を隠しその場にしゃがみながらあたしは叫ぶ。

 


 「い、いやぁですわぁあああああぁぁぁぁっっ!!」



 あたしの悲鳴がこだまする。


  

 * * * * *



 その後ティナの町には冬場に出没するサタンクロスと名乗る真っ赤な服を着た人さらいの話でもちきりになった。


 何せあの領主でアガシタ様に祝福されし乙女ティアナと雷龍の魔女エルハイミ、そしてその友人であるエルフのシェルまでもさらう寸前だったからだ。



 あたしは思う。

 もうミニスカサンタは止めようと‥‥‥  

 


  

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