第八章8-14おめでた!?
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
蚕たち、ごめんっ!!(シェル談)
8-14おめでた!?
「エルハイミ、そっちの格子は残しておいて! 次の子たちを産ませるから!!」
シェルの指導の下あたしたちはいよいよ繭から絹糸を取り出す作業に入り始めていた。
あれから数ヵ月ホリゾンは大人しく黙々と砦の建設をしているらしい。
偵察部隊の話では徐々に補給線もでき始めているらしく、砦までの道が出来始めているとのことだ。
こちらも追加の砦も出来て監視体制とかだいぶ強化された。
各砦には小さな村のような所も出来上がってきて、養殖池や酪農の準備が始まっていた。
そんな中いよいよティアナの町の産業の柱になりそうな絹糸、シルクの生産が始まるのであった!
「うわっ! すごい湯気!! ここに繭を入れるのね?」
様子を見に来ていたティアナが繭をつまみ上げてまじまじと見ている。
まだ生きているさなぎが中にいるのだが繭の状態だと触れるのね、ティアナ?
「この白いのが絹かぁ。これが下着になるのね?」
あの後お気に入りになってしまったシルクの下着。
もちろんあたしも愛用してますよ?
と言うか、ティアナもシェルも既に手放せなくなっている。
今は毎日は使えないけどここで絹が取れ始めればあたしたちの毎日の下着分くらいは手に入りそうだ。
実はみんなかなり期待している。
「ティアナ、逃げた方が良いわよ? 茹で始めると凄い臭いするから!」
既にシェルは口元に布を巻きつけている。
見習いの職人たちもシェルにならって布をつけ始める。
あたしも慌てて布で鼻と口をふさぐ。
ぐつぐつと煮える熱湯に繭を入れる。
心の中で「ごめんっ!」と謝りながら繭を放り込んでいく。
しばらくすると繭は水分を吸って半分くらい沈む。
そして異様な臭いを放ち始める!
「うわっ! なんて臭いなの!!」
驚くティアナはパタパタと手で目の前を扇ぐがそんなものではこの臭いはどうにもならない!
「布を巻いていても臭いが入ってきますわ! シェル、何とかならないのですの!?」
「今は我慢よ! もうすこしで繭が茹で上がるからそうしたら火を落として少しずつ入れられるわ! 最初のこれが一番きついのよ!!」
そう言いながら鍋をゆっくりかき回す。
そして完全に繭が茹でられたころ火力を落とし、沸騰するかしないかくらいで調整する。
シェルは鍋から器用に棒で糸の解けたあたりを引っ張って準備していた糸車に引っ掛け、くるくると糸を紡ぎ出し始めた。
ほどなく糸は車に溜まり始め、代わりに鍋の中にはさなぎが浮き始める。
シェルはそれを小さなお玉の網のようなものですくいあげ籠の中に入れていく。
「こんな感じで糸を取り出してね。この後は少しずつ繭を入れていけば最初ほどまでのきつい匂いにはならないわ。さなぎは既に死んでいるけどそのまま茹でると中身がにじみ出して来るから早めにこっちの籠に入れてね。かわいそうな子たちだけど最後まで有効に使わせてもらうわ。たくさんたまったらゴザの上に出して天日干しすればいろいろと使えるから」
見習いの職人たちにそう言ってから今度は車を外し別の部屋に行く。
別の部屋に行ったシェルはあらかじめ用意していた糸紡ぎの道具に先程の車を乗せて糸の精製に入る。
カラカラと器用にろくろのようなもを足でまわしながら芯がねとなるボビンに紡いだ糸を絡めさせる。
次第にそれは白い光沢を持った絹糸になっていく。
そして出来上がった糸をボビンから外して練り上げてからもう一度お湯で茹でる。
「茹で終えたら引っ張り出して絹糸の完成よ。茹でなくてもそのまま使えるけど、下着にするならもう一度茹でて油分を抜かなきゃだからね。こうすると肌触りが良くなるのよ」
そう言って茹で上がった絹糸を取り出し水分を絞ってから乾かす。
後は機織り機で生地にしていけば出来上がりでだそうだ。
「二、三日後には生地が出来上がるでしょうから下着になるのはその後二、三日必要だわ。今回は染色しないでいいのよね?」
「ええ、まずは純白のが良いですわ! 色付けのはその後でおいおい考えましょうですわ!」
あたしは乾かしている絹糸を見る。
既に水分がなくなり始めつややかな白い絹糸独特の感じになり始めている。
ああ、これで毎日シルクの下着が使える!
女の子にとってはとても重要な事なのだ!
「さて、そうすると今度は試作のデザインが重要になってきますわね? 流石に横が紐と言う訳にはいきませんもの」
それはそれで需要があるだろうけど今は普通の物を作るしかない。
こちらの世界の普通の下着はお世辞にも可愛らしいものはない。
ビキニアーマーの下のようなのは例外として、カボチャパンツが多いのだ。
あとは横ひもパンツかな?
とにかく可愛らしく実用性のあるものに仕上げたい。
あたしはティアナたちと相談する。
「下着の試作品をアテンザ様にお渡しして宣伝と販路の確保を考えてますの。でも普通の下着ではそうそう人気が出るものではありませんわ。ここはデザインと実用性を兼ね備えたモノを作ろうと思いますの。二人とも協力してもらえますかしら?」
あたしの提案に二人は顔を見合わせ大きくうなずく。
「それいいわね! 是非やりましょう!!」
「そうねせっかくだから穿き心地がさらに良いもを作りましょう!!」
そう言っていろいろとアイデアの出し合いをするのであった。
◇ ◇ ◇
「出来たわよ、エルハイミ、ティアナ!」
そう言ってシェルはあたしとティアナの前に試作品の下着を並べる。
机の上に置かれたそれは何だかんだ言ってかなり凝ったものになっていた。
「まずはこれね!」
そう言って指さしたものはスタンダードなデザインの物。
カボチャパンツをもっとスタイリッシュにしたような感じでなるだけぶかぶかをなくしたもの。
ある程度の年齢の女性でも抵抗なく穿けるようにした。
シンプルなデザインに前面の腰の所でリボンでゆるさ調整が出来るようにした。
デリケートラインにレースの小さいのを縦に二本入れたので落ち着いた感じの可愛らしさがある。
「うん、これならお母様でも使えそうね!」
ティナはそれの肌触りを感じながら前後を裏返し見ている。
「次はこれよ!」
そしてシェルが指さしたのはもっと切れ込みが深くなったものだ。
これは前面にきれいな刺しゅうを施し腰回りにレースをあしらってデリケートラインは普通に二重にしたものだ。
わざとサイドでゆるさ調整をする紐をつける事で正面からの見た目が非常にきれいだ。
万が一誰かに見られても困る事は無いおしゃれな仕様になっている。
「日常的にはこれが一番いいかしら?」
ティアナは緩さ調整の紐を確認している。
ちょうちょ縛りにしてみたりして全体の感じを確認する。
「さあ、最後は一番の自信作よ!これなら気になるあの娘もいちころよ!!」
最後に出てきたのはまさしく夜の営み用としか言えないような代物だった!
隠す面積はぎりぎりの布量、レースと刺しゅうをふんだんに使いデリケートラインも目立たなくなっている二重構造!
しかも両サイドにデザイン性の高い紐で縛るタイプで密着度はぴか一!
お尻の方もティーバックに近い感じでティアナが穿いているのを想像するだけで鼻血モノ!!
「こ、これはぁ~////」
「ティ、ティアナ、今晩早速穿いてみ見ません事!?///」
「あんたたちわぁ~////」
思わずきゃいきゃいしてしまうあたしたち。
「でも流石にこれはアテンザ様にはお出しできそうもありませんわね?」
「どうかな? そう言えばコルニャにもメッセンジャーつながっていたわね。姉さまに聞いてみようか?」
そう言ってティアナはその下着を持ってメッセンジャーの前に行った。
この件は既にアテンザ様に話をしているので出来上がりを楽しみにしているらしい。
しばらくして返信のメッセージが届いたようだ。
ティアナはすぐにそれを開示する。
『ティアナ、いよいよ下着が出来たのですね? しかし残念ながら私はそれを試す事が出来そうもありません。実はとうとうフリッタとの間に子供が出来たのです。下着については全部試作品をまわしてください。既に夜会には触れ込んでおきましたから試したいという人たちは大勢います。本当はせっかくのティアナの提案だったのにお姉ちゃん、残念で仕方ないわ!! ティアナ、子供産んだら必ず私も穿くから、待っていてね! ティアナぁ‥‥‥』
ぶつっ!
最後の方は時間切れで切れてしまったようだ。
しかし問題はそこじゃない!!
ティアナはさび付いたマシンドールよろしく首だけをギギギっと鳴らしてこちらを見る。
そして震える声でこういう。
「アテンザ姉さまがおめでただって‥‥‥」
ここって喜ぶところだよね??
でもあたしも同じでさび付いたマシンドールのようにティアナに聞く。
「おめでとうございます? って、どうするのですのティアナぁ!? おめでたですってぇ!! お祝いに行かなきゃですわよ!!」
「どうしようエルハイミ!? お祝いに行きたいけど、どの位で安定するの!? 今あたしが行ったら姉さま興奮して流産しちゃうのじゃない!!!?」
アワアワと二人して右往左往している。
「とりあえずお祝いのメッセージだけでも入れておいたら?」
「「それだわ(ですわ)っ!!」」
シェルに言われてあたしたちはとりあえず慌てて祝電のメッセージを入れるのであった。
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