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エルハイミ-おっさんが異世界転生して美少女に!?-  作者: さいとう みさき
第七章
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第七章7-29雪解け

おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。

異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。


うーん、遊び相手居なくなっちゃった。

暇ね。(シェル談)

 7-29雪解け



 長い長い冬の寒い空気が和らぎ始めた。



 ここガレント最北端のティナの町もだんだんと張りつめた寒い空気が和らぎ始めている。

 町は豪雪の冬にも何とか耐え、あれだけあった雪もどんどんと溶け始めている。


 「やっと雪も解け始めて道も見えてきたわね」


 ティアナは視察で近郊の様子を見ながら安堵の息を吐いた。

 ガレント側の街道は石畳が見え始めている。


 五メートル近くあった雪も今は二メートルくらいにまでなっている。

 もっともここからがなかなか解けない、ほとんど氷になっているからだ。



 「農場は流石にダメですわね、雪が氷になっていて溶けるまで手が出せませんわ。ゾナーの話では凍ってても春には作物が復活すると言ってましたが本当でしょうかしら?」


 植物も越冬は出来るだろうけど凍っちゃっても大丈夫なのだろうか?


 「結構大丈夫だよ、エルハイミのねーちゃん。うちの村でもなんだかんだ言って春には復活してたしな」


 「あんた何時までここにいる気よ?」


 シェルの突込みに狩人の少年、ジルはにかっと笑う。

 

 「雪が溶けたら帰るよ、それにしてもこのティナの町はいい所だよな! 食い物は美味いし、元ホリゾンの人間もいじめられる事も無いしな!」


 結局ここ数ヵ月の大雪で自力で村に返すのは危ないだろうと言う事でジルはティナの町にとどまった。

 ジルは暇が有ればシェルと一緒にガレント側の森で狩りは続けていたみたいだけど。

 おかげで鍋の肉に困る事は無かった。


 「でも雪が溶けたらジルも村に帰っちゃうんでしょう? こんなに長い間帰らなくて大丈夫だったの?」


 「大丈夫だよ、ティアナのねーちゃん。どうせ俺は一人だし、村のモンもこの雪じゃ諦めてるだろうし。生きて帰れば驚くだろうけどね」


 そう言って又にかっと笑う。

 あたしより一つ年下の彼はこの年で既に天涯孤独の身だった。

 もともと父親と二人暮らしだったらしいが数年前父親は他界し父親と同じ狩人として生計を立てていたらしい。

 

 「だったらいっその事ティナの町に住めばいいのに。ジルなら歓迎よ?」


 ティアナの提案にジルは嬉しそうにしたが首を横に振る。


 「それでも一度は帰らなきゃな。やっぱり村にもいろいろ知らせなきゃだしな、ガレントが噂と違って怖い所じゃないってな!」


 「当然よ! ガレントが、このティナの町が怖い訳無いじゃない!!」


 事実近隣の村でホリゾン側の人間も厳しい検査の後この町の住民として入って来ている者も多い。


 それでもホリゾンはこんな所にまでガレントの悪い噂を流布させている。

 

 国としてのプロパガンダなんだろうけど、事実と違うのはよろしくない。

 ジル自身も素直な子なのであたしたちとしてもティナの町に来てもらうのはやぶさかじゃない。


 「ま、その気が有ればティナの町に来なさい。歓迎するわ」


 偉そうにシェルが言っている。

 ジルは照れてるのか「ああ、分かった」とか明後日の方向を見ながら言っている。


 「主よ、そろそろ戻ろう。大事は無いと思うが一応用心だ」


 ショーゴさんに言われてあたしたちは衛兵を連れて視察を終わりにする。

 ティナの町に戻りギルドに向かい近況の状態を確認してから砦に戻る。


 * * *


 「今の所は順調ね。でもアンナの報告、どう思う?」


 メッセンジャーで数日前にアンナさんから連絡があった。

 師匠がいよいよ連合の為の会議を開くこととなった。

 開催は今から約二か月後。

 場所はボヘーミャで執り行う。

 会場となる学園は既にガレントの協力でマシンドールが配備され始めていて物々しさを増しているらしい。


 「連合が成立すれば確実にジュメルの痛手にはなるはずですわ。会議の開催でボヘーミャの守りにマシンドールだけでは少し心配ですが、協定が決まればすぐにでも連合軍が立ち上がり対処できますわ。そうすれば問題は無くなりますわ。むしろそれまでに何も無ければ良いのですですが‥‥‥」


 あたしはヨハネス神父を思い出していた。

 あのふてぶてしい神父はあたしたちに普通に接触してきた。

 あたしたちにも隙はあったがあれがジュメルなのだ。


 連合は何が何でも成功してもらいたい。



 そう考えているとシェルがやってきた。


 「ティアナ、ゾナーが呼んでるわよ? なんか町の警護について相談が有るそうなんだけど?」


 「うん? わかった、すぐ行くわ」


 そう言ってティアナはゾナーのもとに行こうとする。

 あたしもそれについて行こうとするとシェルに呼び止められる。


 「エルハイミはこっち手伝ってもらえない? そろそろ準備しないといけないのよ」


 「何をですの?」


 「蚕よ、蚕。冬も過ぎたしそろそろ蚕の主食になる葉っぱも出始める頃だから準備が必要なの。葉っぱが取れるようになったら網で囲った大きな箱を作って繭を孵化させて卵を産ませるの。温度調節と新鮮な葉っぱが絶えず必要だからその辺を飼育係の人に教え込まなきゃだめよ? 一回覚えれば次の冬の冬眠までは同じことの繰り返しだからちゃんと覚えてもらわないとね」


 あたしはシェルについて行って冬眠していた繭の部屋に行く。

 薄暗くしてあるそこは結構涼しい、いや、寒いくらいだ。


 「こんなに寒くて大丈夫ですの?」


 「冬眠させるからね、このくらいでもまだ温かい方よ。ここから徐々に温度を上げて行って冬眠から目を覚まさせ孵化させるの」


 シェルはそう言って窓を閉めて外気の侵入を止めた。

 そして障子の小さなようなやつを取り出す。

 そこには小さなマスに一つづつ繭がくっついている。


 「これが冬前に捕まえた蚕よ。これをこうしてぶる下げて徐々に温度を上げていくの。」


 そう言ってシェルは障子の格子を紐でぶら下げた。

 

 「それで私は何をすればいいのですの?」


 「えーとね、これから孵化するからどこかに飛んで行ってしまわない様に人が入れるくらいの大きさの木枠を作ってそれに網を張ったものを錬成してもらいたいの。あ、頻繁にえさの葉っぱは出し入れするから出入りが簡単な扉もお願いね。それと床は掃除しやすいようにね。」


 シェルはそう言って材料を渡してくる。

 あたしはそれを言われたような感じに錬成し始める。   

 出来上がったその網の枠組みをシェルは確認する。


 「うん良い感じ。これで準備は出来たっと。あとは葉っぱが生えてきたら毎日三回取り換える事ね。」


 「結構手間がかかるのですのね?」

 

 「自然界にいるなら餌となる幹から生えている葉っぱは枯れないけど取ってきた葉っぱはすぐにダメになるからね。大体一日に三回くらい入れ替える必要が有るのよ」


 まあエルフのシェルがそう言うのなら間違いはないのだろう。

 シェルに聞いたらエルフの村でも同じ様に飼育しているのがいるそうだ。


 ここティナの町でもこれが成功すれば産業として成り立つ。

 勿論他の事もいろいろと模索していかなければならないけどね。


 まずは一つ目っと。

 


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 朝早くにあたしたちはホリゾン側の砦の門にいた。  

 

 「それじゃ、行くな。ティアナねーちゃん、エルハイミねーちゃん、シェルねーちゃんにゾナー様、ショーゴさん世話になった。村に戻って落ち着いたらまた来るよ!!」


 「うん、気を付けていきなさい」


 「渡したお昼はちゃんと食べるのですわよ?」


 「その気になったらまた来なさい、今度は弓の同時二本撃ちを教えてあげるから!」


 「気を付けてな」


 「達者でな」


 あたしたちの見送りにジルは手を振りながら元気に森の中に消えていく。

 あれから一ヵ月ちょっと、雪もだいぶ溶けて容易に移動が出来るようになった。

 ジルは一度村に戻ると言い出してティナの町を後にした。


 「うーん、弟が出来るってこんな感じなのかしら?」


 「そうですわねぇ、ついつい面倒を見たくなるものですわ」


 「ジルは筋が良いからね、弓も教え甲斐が有ったわ」


 

 連合の会議までもう半月ちょっと。

 ティナの町にも春が訪れ初めだんだん活気が出てきた。

 これからどんどん忙しくなっていく。



 あたしは故郷のバティックとカルロスを思い出しながら南西の方を見るのだった。  

 

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