第七章7-15下準備 *
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
なんか気持ちよかったわね?(シェル談)
7-15下準備
約半日後にアコード様たちは冒険者風のいで立ちでこのユエナの街にやってきた。
到着時には既に日も暮れ、先に宿を確保していなければ危なかっただろう。
「途中ヨハンに話は聞いた。今はヨハン達が海からの通路を確認している」
あたしたちは近くの酒場でアコード様を交えて夕食を取っていた。
他の隊員たちも同じ酒場に別のテーブルで各々が注文をしている。
「先ほど貿易ギルドのギルドマスターソル殿にも会ってきたが、かなりここで活動拠点を強固なものにし始めているらしいな?」
「はい、ですので早めに手を打たないといけません。それとマシンドールですが既に二体双備型と共にあちらの手に落ちていて改造を施されているそうです」
「となると、それも相手にしなければか。正直ぞっとするぞ」
もともとマシンドールの性能は十分に理解している。
それが二体も双備型を搭載して相手に渡ったのだ、その脅威たるや。
「悩んでも仕方がない、今は十分に英気を養いヨハンの情報を待つまでだ。冒険者に扮して少しこの街の地理も覚えておきたいからな。あすは冒険者ギルドにも顔を出してみよう」
そう言ってアコード様は酒をあおる。
今回の目的はジュメルの拠点壊滅と出来ればマシンドールと双備型魔晶石核の回収だ。
焦らず確実に事を進めなければならない。
明日はこの街の下見と言う事となった。
旅の疲れもありあたしたちは早めに部屋に戻る。
* * * * *
下着姿になって髪の毛を梳かす。
お風呂は無いのでさっき【浄化魔法】をかけたからあとは寝るだけで済む。
見るとティアナも同じく髪の毛を梳かしていた。
あたしはティアナの方に行ってそっとそのブラシを手に取る。
「ティアナ、そんなに荒々しくしては行けませんわ、私がやりますわ」
そう言ってティアナの真っ赤な髪の毛をブラシで梳かし始める。
たまに香油をなじませながら枝毛が無いか確認しながら丁寧に梳かしていく。
「あ、いいなぁ、エルハイミ、あたしにもしてよ!」
「あんたはだ~めっ! 自分でやりなさいよ」
「ええっ! けちっ! そんなこと言うとあの時の事暴露するわよ!!」
ティアナがあから様に動揺する。
「えっ? なに? 何の事!?」
「しらばっくれてもダメよ、いいのエルハイミに知れても!?」
何だろうね?
ちょっと気になるけどティアナに聞くのも悪いから我慢しておこう。
「はいはいですわ、シェルにもやってあげますから意地悪しないのですわ!」
「やったっー!」
「うううっ~~~~」
ティアナが終わった後シェルの髪の毛も梳かしてあげる。
こいつの髪の毛あたしと同じで金髪だけどちょっと違う。
透き通ったような金色なのだ。
やっぱりエルフって違うのかな?
そんなことを思いながら髪を梳かすのを終える。
「さて、これで良しと。ちょっと早いですが今日はもう寝ましょうですわ。明日は町の探索ですしね、良く休んでおきましょうですわ」
そう言ってあたしは最後にシコちゃんを軽く磨いてから自分のベットに入る。
あたしをはさんで右にティアナ、左にシェルがベットに入る。
マリアもあたしのベッド枕元にもぐり込む。
「それではおやすみなさいですわ」
「うんお休み、エルハイミ」
「おやすみ~」
「ふああぁぁ、お休み、エルハイミあたしをつぶさないでよね~」
『ま、今日はちゃんと眠れそうだわね、みんなお休み』
そう言って部屋のランプを消す。
さて明日は何処から周ろうか?
そんなことを思いながらあたしは瞳を閉じる。
* * * * *
ドンっ!
うっ!?
なに? 何かがあたしのベットに入り込んできた?
眠い目をこすりながら見るとシェルがそこにいた。
こいつ寝ぼけて人のベットに入り込んだか‥‥‥
でも流石にあたしも眠くてこいつをむこうのベットに寝かせ付けるのがしんどい。
ちょっと考えたけど反対側を向いてそのまま寝る事にした、幸いベットにはまだ余裕があったからだ。
そのまま目を閉じあたしはまた眠りにつく。
* * *
寝ボケているあたしはごそごそとうごめくもので目が覚める。
「んん~、エルハイミぃ~」
ん?
これってティアナの声??
あたしは慌ててシーツをはぎ取る!
するとそこにはシェルに抱き着きキスしようとしていたティアナがいた!?
「ティ、ティアナぁっ!?」
「へ? あれ? エルハイミ!? え、じゃあ、これって‥‥‥ げぇっ! シェ、シェルぅっ!?」
シェルをやさしく抱きしめていたティアナは慌てて離れる。
「ティ、ティアナぁ、私と言うものが有りながらいつの間にシェルとそんな仲にぃ!!」
「ち、違うわよ! あたしはてっきりエルハイミだと思ったのよ! ていうかなんでシェルがこっちのベッドに潜り込んでいるのよ!? まさか、シェルもエルハイミ狙いだったの!!!?」
慌てるティアナ、涙目のあたし。
あたしはシーツの端をかじりながらティアナに言う。
「ひどいですわティアナ、いくら間違いとは言え私はそんなに貧乳ではありませんわ! 毎晩ティアナに育ててもらってこの歳ではそこそこ大きい方ですわ!! それを間違えてあんなに情熱的に! く、悔しいですわ!!」
そしてつんと向こうを向く!
「エ、エルハイミ、ごめんなさい、本当にわざとじゃなかったのよ! ね、機嫌直して!!」
困り顔であたしに抱き着いて懸命に頬にキスするティアナ。
ちょっとうれしいけどそんなことくらいじゃあたしの怒りは収まらないわ!!
「うう~ん、なんか心地よかったわねぇ~」
むくりとシェルが起き上がり伸びをする。
そんなシェルにティアナはきっと目を剥き怒る!
「あんたが紛らわしくエルハイミのベッドに寝てるからとんでもない誤解が生じたじゃない! とっとと自分のベッドに行きなさいよ!!」
「ほぇぇ~どうしたのぉ~? ふぁあぁぁぁ~ ‥‥‥」
『いいからマリアは寝てなさい、子供は見ちゃだめよ、【睡眠魔法】!』
ぽてっとまた寝るマリア。
確かに子供には見せられない光景だ。
「う~ん、なんであたしエルハイミと一緒に寝てるのよ~、あれ? ティアナもいるぅ~」
半分まだ寝ぼけてるシェルに自分のベッド行くように言う。
平謝りのティアナはまだあたしに抱き着いて謝っている。
仕方ない、そろそろ許してやるか。
「仕方ありませんわ、もう許してあげますわ! その代わりこの後は一緒に寝てくださいですわ!!」
「エルハイミ! うん分かった、一緒に寝よう!!」
そう言ってあたしたちは同じベッドにもぐりこんだ。
* * * * *
『あの後珍しく大人しく寝てくれて助かったわ、全くエロフにエロハイミに今度はティエロね!!』
「「「ティエロ!?」」」
朝からシコちゃんにからかわれるあたしたち三人。
確かに昨日の夜はトンだアクシデントだ。
思い起こせば腹立たしいのでこれ以上考えない様にしよう。
特に今朝はシェルの顔がつやつやなので余計に苛立たしい。
そんな内心の葛藤をよそにアコード様が現れる。
「おう、みなそろっているな。それじゃ食事を済ませて冒険者ギルドに向かうとしよう。その後街の大体の地形を覚える為に街の散策をするぞ」
アコード様はそう言って朝食を注文する。
あたしたちも簡単に朝食を済ませた頃に、すっ! と冒険者風の男が近寄ってくる。
男は無造作にジョッキをもってアコード様の近くに座る。
そして小声で話しかけてくる。
「アコード様、海へつながる地下通路の出入り口、その他抜け道の把握をいたしました。マシンドール二体、怪人十五体但し魔晶石核タイプと思われます。黒ずくめがおおよそ百五十、幹部らしき女が二名いました」
アコード様は果実のジュースを飲みながらご苦労と小声で言う。
ちらっと自分の部下たちに目配せをしてから「今夜決行だ」とだけ言う。
それを聞いたヨハンさんは「御意」とだけ言って立ち上がりまたどこかへ行ってしまった。
「さて、冒険者ギルドに行きながらいろいろと見て回るか。ティアナ、一緒に行くか?」
「はい、お父様わかりました」
そう言ってみんなで立ち上がりながら冒険者ギルドに向かう。
* * * * *
冒険者ギルドに着くと朝の依頼クエストの張り出しを丁度していた。
ふううん、実際にはあんな感じで依頼を受けるんだ。
戦士風の人や魔術師風、その他いろいろな格好した人がいる。
中には人族でない者もいてまさしくこれから冒険に行くんだなって感じがする。
アコード様とティアナは受付カウンターに行って何か話している。
あたしととショーゴさんは壁際の椅子に座ってマリアと話をしている。
するとこちらに近づく影一つ。
「これは珍しいですね、フェアリーですか?」
見るとイケメンな神父さんのようだ。
「ええ、私たちの友人ですの。あなたは神父様?」
「はい、昨日この街に着いたばかりです。ヨハネスと言います」
ヨハネス神父はそう言ってお辞儀をしてくる。
「私はエルハイミ、こちらはショーゴさんですわ。神父様はお仕事を探しに?」
「いえ、まだ勝手がわからないのでとりあえずはここに来た次第です。この後王都に行きたいのですが一人旅は危険ですので護衛の依頼でもと思いましてね」
「あら、それでしたらキャラバンの乗り合い馬車の方がお得ですわ、護衛の冒険者もついてますから安心ですわよ?」
ほう、と言ってヨハネス神父は窓の外を見る。
「それではキャラバンの乗合馬車を探した方が良いですね、しかしどこにあるのやら?」
「それでしたら貿易ギルドがそこになりますわ。あちらで聞いた方が良いと思いますわ」
あたしはにっこりとそう言う。
神父様はあたしに礼を言ってからこの場を去っていった。
「あれ? エルハイミの知り合い?」
用事を済ませたティアナが戻ってきた。
「いえ、マリアを見かけて話しかけてきた神父様ですわ。王都ガルザイルに行くのに護衛を探していたみたいですが乗合馬車の方が良いですわよとお教えしていたところですの」
ティアナは「ふう~ん」と言って一枚の地図をあたしに見せる。
「この街の観光案内マップだって。大まかな通りやおすすめのお店があるみたい。これを見ながら大体の地理を覚えましょ!」
「あ、装飾品市場だって!? 見てみたいわね!」
シェルが指さしながら言う。
「シェル、遊びに来たんじゃないわよ?」
「まあ、見るだけならいいじゃないですの? あまりきょろきょろと街ばかり見ていると怪しまれますわよ?」
あたしの発言にシェルは万歳している。
ティアナはちょっとへこんでぽつりと言う。
「もしかして昨日の事まだ怒ってる?」
「そうですわねぇ、ティアナが髪飾り買ってくれたら機嫌が直るかもしれませんわね」
ティナに見えない様に舌を出すあたし。
「わかった! じゃあ早速そこに行きましょ!!」
ティアナはあたしの手を取って街へと躍り出すのであった。
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