第七章7-9アテンザの知らせ
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
寒い寒い寒い寒い寒いっ!!(マリア談)
7-9アテンザの知らせ
ティアナの成人祝賀会の知らせが入ってここティナの町もあわただしくなった。
「そうか、主もいよいよ成人か。お祝い申し上げますぞ!」
ゾナーはそう言って頭を下げた。
砦や城の者たちも祝の言葉を次々に述べる。
本当はまだ誕生日はもうちょっとだけ先なんだけどね。
「ありがとう。でもゾナー、約一月後ここを留守にしなければならないわ。お父様からも言われてるだろうけど兵の事やここの事頼むわよ。せっかくここまで町が良くなってきたんだから」
「勿論だ、そこは抜かりなく見させてもらうぞ、主よ。任せてくれ」
ゾナーはそう言いまた仕事に戻ると言って行ってしまった。
最近はアコード様から逃げてる分一応このティナの町の事はいろいろと引き受けていてくれている。
特に治安や町への入場者の検査は厳しく行っていてくれてるおかげで今の所は大きなトラブルも無い。
「ティアナ、購入の穀物や備蓄品ですがここ数日後には入ってくるそうですわ。これで今度の冬は問題無いですわ」
懸念されていた越冬の貯蓄はアコード様のおかげで何とかなった。
後はさらに町の整備とかが進めばかなり安定し始めるだろう。
「ふう、何とかなったか。しかしいざ自分がやってみると治世って本当に大変ね。学園で習ったとおりにはまずいかないって本当だわ」
ため息をつきながらティアナは用意したお茶に口をつける。
あたしも一緒にお茶を飲みながら書類を見ている。
と、シェルがやってきた。
「エルハイミぃ~、これ何とかしないと死んじゃうよ? どうすんのこの子?」
見ると最近姿を見せていなかったマリアがシェルの差し出したポーチから顔を出す。
何やってんのよこの子?
「ティ、ティアナやエ、エルハイミはさ、寒くないの?? あたしだめ、今にも凍えそう‥‥‥」
マリアはガタガタ震えていた。
確かにここティナの町はコルニャより更に北方、今の時期は収穫も終わり冬の作物を作っている。
まだギリギリ暖炉に火を入れるほどではないけど確かに朝晩はだいぶ冷えてきた。
「もしかしてマリア寒いの苦手?」
「あたしの育ったミロソ島はこんなに寒いの無いもん! それにフェアリーになってからなんか寒いのが特に苦手になったような‥‥‥」
するとシェルが割って入る。
「当然じゃない、フェアリーは花の咲く地域にいるもんでしょ? あんたの育ったミロソ島やらだってもっと南にあるんでしょ? このままじゃ冬が来たら凍え死んじゃうわよ?」
そう言ってポーチをあたしたちに渡してくる。
あたしは慌ててミルク入れに温かい紅茶を入れてやってマリアに渡す。
マリアはさっそくそれを飲んでやっと一心地着いたような顔をする。
「ま、ここにいるならちゃんと面倒見てやらないと危ないから気をつけなさいよね?」
そう言ってティアナに何か渡す。
「さっき使用人の人から手紙が届いたって言われて渡すようお願いされたの、ティアナ宛だって」
ティアナはそれを受け取り封印の蝋を見る。
それはアテンザ様のモノだった。
ティアナはそれを確認するとすぐに封を切って中の手紙を読み始めた。
そしてしばらくしてわなわなと肩を震わせる。
が、最後の方でその震えは止まってあからさまに怒った雰囲気になる。
「なんて事よ!」
だいぶおこなティアナ。
ティアナはそのままアコード様の所に行くからついて来るようあたしたちに言う。
何が有ったか分からないままあたしとシェル、そしてポーチに包まれたままのマリアはついて行く。
* * *
「お父様、いらっしゃいますか!?」
見るとアコード様はゾナーと何やら話していた。
ライム様も一緒にいる。
「どうした? 慌てた様子だが?」
アコード様はティアナの様子にこちらを見る。
ティアナは周りを見て他にひと気が無いのを確認してからアテンザ様の手紙を出しながら言う。
「秘密結社ジュメルの協力者が我がガレント内部におります。しかも貴族、大臣に連なるものまでいるそうです」
「!?」
あたしは思わず絶句する。
予想はしていたがまさかそこまで有力者が絡んでいるとは!?
「それは本当か?」
アコード様は冷静だ。
慌てることなくティアナに確認を取る。
「はい、アテンザ姉さまの手紙によりますと魔晶石の流れ、魔晶石核の流れ、そして双備型魔晶石核の流れより我が国とボヘーミャしか知らない機密が外部に漏れていることがわかりました。それは運搬中に略奪されたのではなく、王城に納品されてから行方が分からなくなったものが有るそうです。マシンドール自体はユーベルトで生産されていましたが、最終組み立ての部位は必ず王城で行われていました。ですので最高機密であるはずの魔晶石核や双備型魔晶石核がそこより消えるはずは無かったのです。しかし実際には消えて無くなっていた」
そこまで言ってティアナはアテンザ様の手紙をアコード様に渡す。
「前半は読まなくて結構ですが、最後の一枚を読んでください」
言われてアコード様は最後の一枚だけ目を通し始める。
そしてムウっと唸った。
「確かにアテンザの調べでそれは間違いないだろう。ノルウェンから買い付けた魔晶石には秘密の番号を全て付けているのだという事らしいからな。しかし、双備型まで喪失していたか‥‥‥」
「どういうことです? アコード?」
ライム様の質問にアコード様はため息をついてから答える。
「はい、お母様、完璧な機密保持は難しいとは思っていましたがまさか貴族や大臣が関わっているとは思いませんでした。敵たるジュメルは既に我が陣に潜入していたのです。静かに確実に‥‥‥」
確かにアコード様の言う通り完璧な機密保持は難しい。
少なからずとも何かの折に噂話くらい流れるモノだ。
しかしそれは噂レベルで判断に迷うようなものがほとんどのはず。
だけど現実には情報漏洩どころか機密に当たる魔晶石核や双備型魔晶石核まで流れ出していたとは。
これは本気でまずい事になる。
万が一何かあった場合あたしたちは味方に後ろから切りつけられる可能性だってあると言う事だ。
「ティアナ、私はコルニャに行ってからガルザイルに戻る」
「ならばあたしもついて行きましょう、アコード」
アコード様が王都ガルザイルに戻ると言うとそれにライム様までついて行くと!?
「し、しかしお母様。王都に戻りますとその、何かと‥‥‥」
「大丈夫です、もともとのアガシタ様のお使いもしなくてはですしね。それにあなたが説明すれば他の子たちも納得するでしょう? それとも少しは力を見せた方が良いかしら?」
それはやめてぇっ!!
ライム様が変に力使っちゃったらガレントのお城が吹き飛んじゃう!!
『ライムは力使わない方が良いわよ、ただじゃすまなくなるから。それよりアコード、ライムが行くって言うなら連れてった方が良いわよ。ライムに仕事させないとしびれを切らしたアガシタ様が何を始めるかわかったもんじゃないから』
おいおいシコちゃんそれはマジっ!?
ただでさえややこしい所に現役の女神様まで首突っ込んできちゃったらどうなってしまうか!?
「シコちゃん、分かりました。ではお母様、明日には出立しましょう。よろしいですか?」
「ええ、もちろんいいわよ。そう言えばアテンザって娘の顔はまだ見てないものね。ちょうどいいわ」
何がちょうどいいのよ?
アテンザ様ご愁傷さまです。
あたしたちもこの件に関してはすぐにでもガルザイルに行きたいがまずはティナの町を何とかしなければだ。
「お父様、私たちもこちらの方が付きましたらすぐに王城へ向かいます」
「いや、むしろぎりぎりまでこちらの守りを固めてほしい。アテンザにも協力をさせるからお前はまずこのティナの町の守りを固めなさい」
そう言うアコード様の顔は既に腹を決めているようでもあった。
あたしとティアナはただその言葉に従うしかなかったのだった。
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