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エルハイミ-おっさんが異世界転生して美少女に!?-  作者: さいとう みさき
第六章
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第六章6-34葬儀

おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。

異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。


全く世話がやけるんだから!(シェル談)

6-34葬儀



 「エルハイミ、最後のお別れをしてやりなさい」



 そう言ってパパンはあたしの背を軽く押す。

 あたしは棺桶の中の爺様を見る。

 安らかに微笑んだ顔は蒼白になっていた。

 手に持つ花を棺桶に入れる。


 そしてお忍びで駆けつけてくれた大叔父様事、国王陛下と場所を代わる。


 「大叔父様、どうぞですわ」


 「うむ、ありがとうエルハイミ。イーガルよ、先に行ってしまったか‥‥‥ 最後にもう一度酒を一緒に飲みたかったな‥‥‥」


 そう言ってエドワード陛下は大親友と最後の別れの挨拶をした。

 みんなには見えないだろうけど、片目の端にわずかに光るものが有った。



 葬儀に参列してくれた人は沢山いた。

 中には個人的にお忍びで来ている大臣もいた。


 あたしは教会の窓から空を見る。

 どんよりと今にも雨が降りそうな曇り空。


 みんなの心を映し出したような空だった。




 「姉さま、お爺様とはもう会えないの?」


 「カルロス、やめろよ、姉さまを困らせるなよ!」


 あたしの弟で双子の兄バティックが弟のカルロスを叱責する。

 二人を引き寄せてあたしは抱きしめる。


 「あなたたち、ちゃんと最後のご挨拶をするのですわよ。お爺様に会えるのはこれが最後なのでわ。ちゃんとお爺様にお花を渡してあげてですわ」


 そして二人はママンに連れられて一緒に爺様に最後の挨拶をした。



 ◇ ◇ ◇



 あれから二日が経った。

 ハミルトン家が保有する墓地の墓に爺様の棺桶を納めたがそこにはご先祖様たちの棺桶がいっぱいあった。


 ふとあれが全部ライム様の子孫なんだと思うと途方に暮れる。


 昔パパンがあたしが生命力を魔力に使って大騒ぎになったのを聞いたとき「親より先にだけは死ぬな」と言っていたけど、今は何となくわかる気がする。


 もし自分の子供や子孫が先に逝ってしまうなんて考えたらぞっとする。

 そんな事をぼおっと考えたいたらシェルが声をかけてきた。


 「エルハイミ、今ちょっといい?」


 「はい? なんですの改まって??」


 あたしはシェルを見ると真面目な顔でこっちを見ていた。


 「エルハイミは分かっているの? あなたがもう定め有る者では無い事を」


 「定め有る者?」


 なんとなく繰り返し言うあたし。


 「やっぱりそうか、エルハイミあなたはもう普通のヒュームと同じ時間を過ごすことは出来ないのよ? 英雄ユカ・コバヤシと同じくエルハイミはもう『時の指輪』を身に着けているのよ?」



 あれ?

 そう言えばあの時シェルにつけさせられた指輪ってどこ行ったんだろう?



 あたしは自分の手を見る。

 しかしそこにはあたしの手だけで指輪が無い!?


 「シェ、シェル! 大変ですわ『時の指輪』が無くなっていますわ!?」


 「落ち着けって、『時の指輪』はちゃんとあなたの手についてるわ。意識して指輪を探してごらんなさい、左手の中指よ」


 言われてみるけど左手の中指には何もない。

 意識しろって、念じろって事かな?

 あたしは中指の指輪を意識する。

 するとうっすらと輪郭を徐々に指輪が姿を現した。


 「『時の指輪』は命の共有、エルハイミが本気で外したいって思わない限り勝手に無くなったりはしないわ。普段は今みたいに消えてるけど、意識すればすぐに現れるのよ。だからあなたはもう時の定めの有る者じゃなくなってるのよ」


 「どう言う事ですの? この半年、私はちゃんと成長してましたわよ? 指輪をつければ年を取らないのではないですの?」


 シェルはため息をついた。


 「よく聞いてエルハイミ。指輪をつけた者は大体大人になるまでは普通に成長するのよ。エルフと同じ。そして成人したくらいからほとんどその外観は変わらないわ。そして対になるエルフの『命の木』が枯れるまで命を共有するから死ぬ事は無いわ」


 つまりあたしはシェルがどうにかならない限り死ぬ事は無いと言う事だ。


 「あなたにはマーヤの事やエルフの村の事で恩が有るわ。でも選択は自由のはずだった。指輪をつけるも外すも。でも魂の連結を行ってしまった為にあなたの指輪は外せなくなってしまったの。つまりもうあなたの知るヒュームたちと同じ時間を過ごす事が出来なくなってしまったのよ!」


 何を言っている?

 あたしは理解できなくなっていた。

 指輪が外せない、年は取らなくなる、みんなと同じ時間がもう過ごせない?


 「どういう事ですの、シェル?」


 「今はいいけど、今後あなたの知る人は確実にあなたより先に死ぬわ。それも一人や二人じゃない」


 「それって‥‥‥」


 あたしはやっとシェルが何を言いたいか分かった。

 そう、爺様のようなことはこれからずっと永遠に続くのだ。

 死なないあたし、死ねないあたし。

 でも他のみんなはどんどん死んでいく。



 今は理解できない。

 でもその時はきっと‥‥‥



 「だからエルハイミ、元気を出せとは言わないわ。でもあなたはまだやらなきゃならない事がたくさんあるでしょう? あなたの為ではなく他の人たちの為に」


 なんて不器用な慰め方なんだ。

 あたしはため息をつく。



 あたしには時間が腐るほどあるけど他の人は違う。

 だから他の人が生きている間にやらなければ成らない事を他の人の為にしろか。



 「全く、人使いの荒い事ですわね!」


 「でもエルハイミは後悔したくないんでしょう? 仕方ないからあたしも付き合ってあげる、あなたが飽きるまで」


 シェルはそう言ってにかっと笑った。

 その笑い方は何となくメル長老に似ていた。


 あたしはまだそこまで笑顔を作れないけどつられて微笑は出来た。

 確かにずっと落ち込んではいられない。

 ここでやるべきことやって早いところティアナの待つ北の砦に行かなければならない。



 あたしはそう思い行動を開始するのだった。  

 

 

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