第六章6-17四連型再度
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
働くざるもの食うべからず!
がっつり働かせるわよ!!(シコちゃん談)
6-17四連型再度
シコちゃんが目覚め最大の課題であった上級精霊の制御に希望が生まれた。
あたしたちは無知の為、危うくボヘーミャを壊滅に追い込むところであった。
半径五キロメートルのクレーターって言ったら原爆以上じゃないの?
本当にシャレにならない所だった。
『普通は四大精霊なんて集まることないからまず起こらないけど、過去にはそんな馬鹿な研究していて大災害起こしたのよ。あんたら危ないところだったのよ?』
「はい、深く深く反省してお入りますわ」
「まさか上級精霊の暴走がそれほどまでとは‥‥‥」
「流石上級精霊だわ!精霊は偉大なり!」
「こらっ! シェル! 茶化すんじゃありません! あなたがついていながらそう言った事に気付かないとは情けない」
わいわいがやがや。
一連の事を後からやってきたソルミナ教授にも説明して反省会。
そして切り札シコちゃんによる強制制御による四連型魔晶石核の稼働についてなのだが‥‥‥
『結論から言うと役に立たないモノになりそうね』
シコちゃんのその一言で聞こえてる人たちは固まる。
は?
どういうこと??
シコちゃんなら制御できるんじゃないかって自分で言ってたじゃない?
「それはどういう事ですの?」
あたしは思わず聞いてしまった。
『さっきのあの【精神束縛】をしようとしたのがばれてるのよ。寝ているけど上級精霊たちはかなり警戒しているわ。だからあたしが強制制御を仕掛けて、多分制御は出来るでしょうけどものすごく非協力的になるからどんなに鞭打っても抗う方に力使って本来の力は発揮しないでしょうね』
あー、そりゃ確かに鞭打ちされて大人しく言うこと聞いて協力的になる方が難しい。
しかしだからと言ってお願いして言うこと聞いてくれるような感じじゃないしなぁ。
「じゃあどうすればいいのよ?」
『正攻法で行くしかないわね』
「「正攻法?」」
あたしとティアナの声が重なる。
でも正攻法たって上級精霊とひとつづつ契約していくって事?
そんな英雄クラスがごろごろいる訳でも無いのにどうやって??
『エルハイミ、あなたが重要な役目を果たすことになると思うの』
は?
あたしですか??
『今から説明するけど、上級精霊クラスになるといくら強制制御しても強い意志で抗い続ける。だから期待した結果は得られない。でも同意のうえで事を成すなら話は別。予定通り、もしくはそれ以上の働きをしてくれるかもしれない。だとすると一番いいのは上級精霊たちと正規の契約をして正常な形で協力をしてもらうのよ。そこには強制も制御も無い、純然たる信頼での稼働になる。それは最上の状態となるわけね』
シコちゃんはまず基本となる考えを話す。
あたしは指名されたので一字一句聞き逃さないように注意してシコちゃんの話を聞いている。
ティアナは要点をかいつまんで聞こえない人にも説明をしてくれているようだ。
『上級精霊と契約するには大きく分けて二つ方法があるわ。一つは力の誇示。上級精霊と戦う、もしくは上級精霊を超える魔力などの力を誇示して自分より上の存在だという事を納得させる方法。そしてもう一つは上級精霊が属する女神と魂レベルでつながりが有り同族だという事を認識させる方法。これは英雄の要素を持つ魂の人はほぼ無条件で出来るわね。ティアナのように』
そう言えばティアナは鑑定の時にそんなこと言われてたっけ。
確か炎の女神シェーラ様の魂と深い関係が有るとか。
『ここで後者の方法はまず無理よね? エルハイミも言ってた通りそんな英雄級の魂がごろごろしてるはずないしね。で、残る方法は力の誇示なんだけど‥‥‥ 魔力だけじゃ納得させられないかもしれないからエルハイミの訳の分からない魂を引き合いに出すわ!』
はぁ?
力の、魔力の誇示じゃないの??
しかもあたしの魂たって鑑定でも不明瞭だったじゃないの?
そんなの使って大丈夫なの??
「でもシコちゃん、鑑定でも私の魂は何につながっているか分からないと言われましたわ。その様なモノで引き合いになるのですの??」
『そうね、だからかけよ。はっきり言ってエルハイミの魂は【始祖なる巨人】よりさらに上の何かとつながっている。あたしを作り出した女神たちよりずっと上の何かと。だからそれを引き合いに出すの!!』
えーと、何やらとんでもない話になってきました。
あたしの魂が「始祖なる巨人」より上の何かとつながっている?
まさかそんな御大層なことがあるわけないじゃん!!
いくらあたしが異界からの転生者だからって、もともとしがないサラリーマンのおっさんだよ?
どこにそんな御大層な要素があるってのよ?
あっちの世界では無信教者だったし。
あたしは思わず乾いた笑いをした。
既にダメなんじゃないかと膨大な魔力を背景にこちらが上と誇示した方が良いのじゃないかと考え始めているくらいだった。
『ねえエルハイミ、あなた本当に何者なのよ? あたしもあなたの魂に触れたから分かるけど確かにあなたって普通じゃないわ。さっきからシコちゃんの話を貴女を通して聞いてたけどその魂っていったい何なのよ?』
シェル?
こいつ盗み聞きしてたのか??
魂の隷属ってこういう使い方もできるのかぁ。
便利のような不便のような‥‥‥
はっ!?
こいつあたしとティアナの夜の行為ってこれで知ってたの!?
じゃ、じゃあ本当に筒抜け!!!?
あたしは真っ赤になってしまった。
『シェ、シェル、盗み聞きはよろしくありませんわよ‥‥‥ 時にもしかして昨晩のティアナと私の行為も‥‥‥』
『ああ、お楽しみの事ね? しっかり最初から最後のティアナが満足するところまで見させてもらってるわよ? 全くお盛んであたしまで変な気分になっちゃうじゃない? 思わず一人でしちゃった。(ぽっ)』
あううううううっ!!
こ、こいつぅ!!
あたしがいない一人部屋でそんな事まで!?
あ、あとで魂連結してシェルのも脳内記憶再生で見てやるんだからぁ!!
『エルハイミ! 聞いてるの!? 始めるわよ!!』
「はえ?」
シコちゃんの強力な叱責に初めてあたしは気づく。
え?
何を始めるって!?
『だあかぁらぁ、上級精霊たちの採用試験面接よ!!』
はい?
採用試験面接!?
一体どういう事よ!!!?
見るとシコちゃんは伊達メガネをかけてふんぞり返っている。
『さっきも説明したけど仕事もしないで引きこもっている上級精霊たちに魔力供給を遮断すると宣言してエルハイミを引き合いに出し、その魂見せびらかせエルハイミと契約すれば膨大な魔力を背景に安泰な未来があると理解させるの! 契約しなければじり貧、契約すればエルハイミの魔力がちゃんともらえるという事よ!』
「え? それって私の魔力だけで大丈夫ですの??」
上級精霊って言えば高給取りというイメージがある。
ならばお給料の魔力もお高いのでは??
『その辺は福利厚生がしっかりしているという事で平均的な魔力で納得してもらうわ! そう言った交渉は私に任せなさい!! がっつり働かせてやるわ!!!!』
シコちゃんがやる気出している。
あたしは呆然とその様子を見る羽目になったのだけど、最後の方は上級精霊が可哀そうになるような交渉となっていたりする。
シコちゃんのあまりにも容赦ない言葉攻めと言いくるめ、事例として出された下級精霊の末路などを聞かされた上級精霊たちはあたしの魂見てひれ伏し、膨大な魔力を見て安心し、魔結晶石という快適な空間の提供と通常運航の負荷の低さから喜んで契約を結んできた。
なんかあたしって黒色の企業みたいじゃない??
シコちゃんはずれた伊達メガネを直して満足そうだ。
周りの人たちもティアナの通訳で一連の状況を見てたけど、あたしとシコちゃんを見る目が変わってきたような‥‥‥
「と、ともあれすごいですよ! これで四連型魔晶石核が正常に稼働できますね!」
アンナさん、なんで一歩引いて乾いた笑いで笑ってるの?
「エルハイミって、思っていた以上だったのね‥‥‥ これならあたしたちの将来の新婚生活も安心だわ」
なんかティアナがぶつぶつ言ってる。
あたしはもう一度四連型魔晶石核を見る。
まだ動かしてないけどとうとう完成した四連型。
さて、暴走しない様に稼働させないとね。
あたしたちは開発棟のドームに四連型をもって移動するのであった。
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