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エルハイミ-おっさんが異世界転生して美少女に!?-  作者: さいとう みさき
第六章
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第六章6-2ファイナス市長

おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。

異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。


エルフの門限ってそんなに厳しいのかな?(ティアナ談)

6-2ファイナス市長



 「これがゲートでの転移魔法ですか? 思っていたのとは少し違いますね」



 師匠はあたりを見渡している。

 あたしたちはゲートをくぐり精霊都市ユグリアに来ていた。



 「英雄ユカ・コバヤシよ、よく参られた」


 声のする方を見るとソルガさんともう一人のエルフの男性がこちらを見ていた。

 すかさずソルガさんは師匠に握手を求める。


 「お久しぶりです、ソルガ。変わりはありませんか?」

 

 「ええ、おかげさまで元気にやっています。早速ですがファイナス市長がお待ちです。案内しますのでこちらにどうぞ」


 そう言って師匠を誘導する。


 あたしたちはこのストーンサークルのようなところから出て小高い丘を下り壁のような大きな幹の森を抜ける。

 そこにはいつみても美しい精霊都市ユグリアが見えてくる。


 「ティアナにエルハイミ、アンナ、ロクドナル、変わりはないか? それとこちらは初顔だな。俺はソルガだ」


 そう言ってソルガさんはショーゴさんに握手を求める。

 一瞬迷ったショーゴさんだけどソルガさんと握手をする。


 「俺の名はショーゴ・ゴンザレス。我が主エルハイミ様に従事する者だ」


 「ほう、エルハイミの。いい目をしている。お前は戦士なのだろう?」


 「ああ、しかし今は主の剣であり盾だ。この命尽きるまで必ず主をお守りする」


 ソルガさんはニヤリと笑い拳を掲げる。

 それをショーゴさんは拳をぶつけ応える。



 何だろう、馬でも合うのかな?



 「兄さん、なんで私を無視するのです?」


 「無視はしていないぞソルミナ。今回はお前も村に行かねばならんのだからちゃんと来てくれてほっとしているよ」


 そう言ってソルミナ教授の頭をなでる。


 「ううっ、兄さんはいつも卑怯です」

 

 そう言いつつもかなりゆるい顔をしている。

 


 そんな会話をしながらあたしたちはこの街一番高い「緑樹の塔」に着いた。

 そしていつものように中に入り受付で例のおばちゃんに話をして今日はいきなり上の応接間に通される。



 「それでは英雄ユカ・コバヤシしばし待たれよ。ファイナス市長を呼んでくる」


 そう言ってソルガさんは部屋を出る。

 

 あたしたちは出されたお茶を飲みながらファイナス市長が来るのを待っているけど、ソルミナ教授がそわそわして落ち着きがない。


 「うう、とうとう村に帰らなきゃですか。嫌だなぁ」


 「ソルミナ教授はお見合いのお断りのお話をしに行くのですよね? その後はどうするつもりですか?」


 師匠に問われソルミナ教授は背筋を伸ばしこう言う。


 「引き続き学園にお世話になりたいと思っています。個人的な問題はまだまだありますが自分が受けた学生をちゃんと卒業させ、今のプロジェクトである四連型魔晶石核の完成までは何としても成功させたいので!」


 まっすぐなその物言いに師匠は小さく口元だけ笑って「では引き続きお願いします」とだけ言った。




 「ちゃんとした理由が言えるではありませんか、それを先方にお伝えした上でお断りをすれば万事解決ですよ?」



 見ると入り口にファイナス市長が立っていた。


 「英雄ユカ・コバヤシ、お久しぶりね」


 「ファイナス市長、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」


 師匠は挨拶をしながら例のどぶろくを渡す。


 「わざわざお土産までいただいて、気を使わせましたね。所でユカ、今回はあなたが動くほどの事なのですね?」


 「ええ、手紙にも書いた通り私の夢もかなう可能性があります。ですので長老たちにぜひ協力を願いたい」


 ファイナス市長はにっこりと笑って答える。


 「私たちエルフはあなたに救われた。この恩は必ず返すと誓いました。ほかの長老もあなたが来るのを待っていますよ」


 ファイナス市長はそう言ってあたしたちを手招きする。


 「今から行けば夕刻の門に入れます。案内しますからさっそくついてきて」


 師匠は黙ってファイナス市長について行く。

 あたしたちは慌ててその後について行った。



 * * * * * *



 先ほどのゲートに近い森の中をあたしたちは歩いている。


 この森林はサージム大陸の真ん中辺にある大森林で、世界でも一番大きな森林と言われている。

 精霊都市ユグリアと水上都市国スィーフの間に有るこの森は別名「迷いの森」とも呼ばれていて、エルフの結界のおかげで人間たちは森の奥へと入れない。


 森の奥にはエルフの村があって何重にも結界がかけられていて関係者以外そうそう簡単には入れないようになっている。


 先程夕刻の門と言うのは一日に三回だけ開く門があり、エルフたちはそこを通って村に入るそうだ。

 それ以外は結界のせいでそうそう簡単には入れないらしい。



 「しかし、聞きしに勝る所ですね。マナが豊富で迷いの精霊たちがあんなにいるなんて」


 瞳を金色に薄く輝かせアンナさんは森を見る。


 今の彼女には普通の人間では見えない世界が見えている。

 つられてあたしやティアナも同調をして感知魔法を発動させる。

 そして感じたのは常に精神に干渉してくる魔力。

 そう迷いの精霊の魔力があたしたちを惑わそうとしている。


 しかし、ファイナス市長が通ると迷いの精霊たちは途端に拡散していなくなる。


 「エルフの血に反応して道を開けてくれているのです」


 ファイナス市長は誰に説明するわけでもなくそう言った。


 「なんか透き通ったあたしみたいのがいっぱい飛んでる!」


 マリアがティアナの肩に止まって髪の毛を引っ張る。

 

 「それ多分迷いの妖精よ。マリアとは違うからついてっちゃだめよ!」


 ぴこぴこっ!


 アイミがマリアがどっか行きそうになったら捕まえてくれるって言ってる。

 

 「うん、ありがとアイミ」


 最近ティアナはアイミの言葉が分かるようになってきたようだ‥‥‥



 「さて、皆さん着きました。ギリギリ門限に間に合ったようですね。ではここからは決してしゃべらないで振り向かず私についてきてください。金色の世界で迷うと何十年、何百年と迷ってしまう場合がありますからね。大いなる幹は静寂を好みますから」


 そう言って目の前にある蔓でできたアーチに重々しい木材で出来てもうすぐしまってしまいそうな扉をするりと潜り抜ける。

 その後を師匠は何も言わずついて行く。

 あたしたちも慌てて師匠たちについて行く。


 扉をくぐると今までと同じように森なのだけどすべてが黄金色に輝いている場所に出る。

 幻想的なそれはまるで時間が止まったかのように静かだった。

 

 前をファイナス市長と師匠が歩いているけど、近くて遠い?

 なんか距離感がおかしい。

 歩いているような走っているような変な感覚で二人の後を追う。

 もしはぐれたら永遠にここで迷い子になりそうで背筋をぞっとさせる。

 

 あたしはとにかく目標の師匠たちの背中だけを見て必死に歩く。


 そして‥‥‥


 気が付いたあたしは周りを見ると先ほどの扉からわずか数歩の場所に立っていた。

 周りを見ると他のみんなもあたしと同じような顔をしている。


 「ふふっ、初めての方は驚いたでしょう? あれがこのエルフの村の守りの結界です。ようこそ我らがエルフの村へ」


 そう言いながらファイナス市長は優雅に一礼した。



 あたしたちはもう一度周りの風景を見て声を上げる。


 「うわぁぁぁっ! きれいっ!!」


 「す、すごいあんなに大きな木々が!」


 「これは圧巻ですな‥‥‥」


 「ここがエルフの村か‥‥‥」


 「わぁー、すごいすごい!!」


 大きな幹の木々が柱のように緑の屋根を抑えている。

 まるで縄文杉のように太くて大きな木々の枝や根元にはたくさんの木の家がある。

 所々木々の木漏れ日が光のスポットライトのように差し込み、優雅に飛ぶ鳥たち。

 澄んだ空気は肺を洗い流すかのように清々しく、少しひんやりとした空気は興奮した肌に気持ちいい。

 あたしは上を見る。


 遠く遠くまでこの大きな幹の木々が続いていて、その枝枝にはつり橋のような道が無数に張ってある。



 「すごいですわ!」



 思わず声が漏れる。


 「ふふふっ、すごいでしょう私たちの村は!」


 ソルミナ教授が腰に手を当てドヤ顔をする。


 「よく言う、ソルミナお前はほとんどこの村にいないじゃないか?」


 「ああ、兄さんそれは言わない約束じゃ‥‥‥」


 騒いでいる兄妹はほっといてファイナス市長はあたしたちを村の奥に案内する。

 通りをあたしたちが歩いていると住人のエルフたちが興味深そうにあたしたちを覗き込んでくる。


 ここにいるエルフはもちろん美男美女ばかり。


 しかも見た感じ一番年取っているのは二十歳くらいの人にしか見えない。

 ファイナス市長ですら二十歳ちょっとにしか見えない。


 

 これがエルフなんだ。



 あ、ソルミナ教授やソルガさんは人間の街に長いのでどちらかと言うと人間ぽいので除外ね。


 なんか動きも優雅でゆったりした感じの人たちばかりだ。

 ファイナス市長あたしたちを更に奥につれていきやがて金色に輝く大きな木のもとに連れてきた。


 そこには二十歳すぎくらいのエルフたちが七人扇のように座っていた。


 「皆さん、英雄ユカ・コバヤシとそのお連れを連れてきました」


 すると扇の真ん中に座っていた一番偉そうな胸の大きいエルフの女性が立ち上がり師匠を迎える。


 「英雄ユカ・コバヤシよ、よく参られた。五十数年ぶりか。我々はあなたを歓迎するぞ!」





 彼女はあたしたちを見て「にかっ!」と笑った。 

  

 

 

 

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